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新しい得意先「商売を始めた頃」その1

久しぶりの商売を始めた頃の話。

卸業の商売というのは基本的に知り合いから始まりますし、得意先も以前のお客さんの所から始まります。
信用の問題もあって新しいお客さんより既存のお客さんから声を掛ける方が売上の目処も立ちやすいし回収の見込みも高いので当然です。

とはいえ、既存の得意先と言っても独立前の会社もそこに行っている訳で、パイの取り合いには変わりありません。売上といっても多い訳ではないのだ。

そんな訳で新規の取引先の話になります。

得意先の開拓

これについては正確には半分新規で半分既存からといった方が正しい表現だと思いますが、これには理由があります。

社長が元いた会社では卸業がメインとはいえ、表の企業や裏の企業もあったりさまざまなお客さんがいます。
表の企業とは百貨店や路面店に商品を買ってもらったり、引き合いがあったら商品を委託販売してもらう為に貸したりするお店の事です。

反対に、裏の企業というのは今でいうと反社会的な感じの会社です。

社長がまだ元いた会社で大阪支店長だった頃のお客さんは少し勢いが落ち始めた会社だったけど、普通の表企業より商品も買ってくれるし支払いも現金一括で支払いサイクルも早かった。

ボクがまだ会社に入って数ヶ月の頃に始めて連れて行ってもらいましたが、初めはどこも何の仕事をしているか分からない状態。そんな時に古い雑居ビルの中にあるその会社についていきました。

すぐに部屋に案内してもらうといわゆる気質ではないオジサンとミニスカートを履いた夜のお店の女性のような出で立ちの事務員さんが現れた。
どうやらオジサンはその会社の社長らしい。

異質な空気

一瞬通常の卸業の会社とは異質の空気があった。社長と事務員はどう見ても夜の人間。そして、会社中には20代くらいの若い男女が入れ替わり立ち替わり。格好もホストやホステスと言った感じ。

社長は帰ったらどんな会社か教えてあげるよ。と含みを持たせて言ったけど、ボクには状況が全然掴めませんでした。

社長同士が話をしている隣でボクも紹介されて挨拶を済ませ、仕事の話に。
自分の会社の商品を広げてみてもらい、オススメの商品を見せていきます。
それについて、相手の社長ではなく派手な事務員さんに「〇〇ちゃん、どう思う?」なんて聞いています。

事務員さんは「まぁ、これはいけそうですけどこれはないですね。これもいけます。」とか言いながら良さそうな商品をケースから抜き出していきます。

普通だとここから商品についてあれこれケチを付けられて値段交渉の道具に使われる所ですが、ここでは抜き出した商品は全て買ってくれます。
もちろん、値引き交渉を行って折り合いが付けば買ってくれます。しかも即金で。

普通のお店だとケチをつける為にルーペで商品をくまなく見て、ダイヤがどうだとか枠が華奢だとか、作りがどうだとか色々言われるのですが、ここではそんな事は一切ありませんでした。ルーペすら持っていません。

途中、社員なのか店員さんなのか若いお兄ちゃんがケースを見て「これいいですね。なんぼですか?」と聞いてきます。

色んな人がいるな。とか思っていたら商売終了し帰り支度。

結局見ただけでは何の商売をしているか分かりませんでした。ただ、いつもと雰囲気が違うという事だけです。

そして、帰りのエレベーターの中で何の仕事をしているのかを社長が教えてくれました。

キャッチセールス

社長は「キャッチセールスって知ってる?」とボクに聞きました。

そう、裏の企業の仕事は街中で人に声をかけ高価な商品をローンで売りつけるアレです。今でもそんな企業は形を変えて存在していますが、うちもそういった企業と取引をしていたのです。ちなみに今はもう取引はないどころか、会社も存在していません。

物の値段は店頭表示価格があるけど、お店側はその価格で仕入れて売っている訳ではありません。その価格の何分の1とかで仕入れて店頭表示価格になります。

その値段の付け方は千差万別で一定ではありません。高く付けた方が儲かりますが、高いと売れないかも知れません。安いと売れるけどあまり儲からない。

ここが肝で自信のないお店は低くつけますし、価格競争にも巻き込まれます。もちろん、景気にも左右される事もあります。

うちの商品は百貨店や路面店で通常想定される価格の数倍を付けられていました。
当時の価格を参考にすると例えば10万円の商品は百貨店だと40万円程度になりそこから20%くらいの値引きを行い、実際の販売価格は30万円前後となりますね。

しかし、先のキャッチセールスの会社はそれの上をかなり越した価格を販売価格としていました。しかも、値引きなし。。。なんでこんな値段で売れるの?恐ろしい。。。

新規取引先を取ろうと思ったきっかけは、その社長の努めていた元の会社が今も取引があるという事。そして、その中の上から3本に入るセールスが辞めていたという事で、パイが小さいのに取り合いになっていたからです。売上も尻すぼみになっていたらしい。

新規取引先の信用調査

だから、社長はさっき書いた上位のセールスがどうしているかの調査を始めました。 元いた会社の営業を街で捕まえ(会社が近くで毎日会うからすぐに見つかる。)、いつもの喫茶店に連れていき世間話から今の状況や通常卸の話を混ぜながら、最後に目的の話に持っていくのです。もちろん、情報料はコーヒー(^^)

その話によると、独立していて近くに会社があるらしい事。そして、その会社も新しい仕入先を考えているという事。決まった。これで新規得意先候補は絞られた事になる。

電話番号も聞き出し、元トップセールスの社長に電話。当然ながらビックリしていましたどが、一度会おうと言う話にまとまりました。向こうの調査は済ませてあったからここまでは想定内。

そして、その新規に数日後に伺う事になります。
ちょっと、長くなったから続きは次の話。。。

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