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辞書にない「怖い」の新しい用法について

別にここ最近の流行語でもなく何十年も前から使われているであろう「怖い」の辞書にない用法がかなり広く使われています。

まず大辞林を見ると

〔「強(こわ)い」と同源〕
① 危害を加えられそうで逃げ出したい感じだ。自分に危険なことが起こりそうで身がすくむ思いだ。「―・いもの見たさ」「―・い顔」「雷が―・い」
② 悪い結果が予想されて不安だ。先行きが心配で避けたい。「相場は―・いから手を出さない」「今はいいが,あとが―・い」
③ 軽視できない。予想以上に大した力をもっている。「やはり専門家は―・い」「一念というのは―・いもので,とうとうやりとげた」〔「こわい」という語は「おそろしい」に似ているが,それより主観性が強く,また口語的である。「おっかない」はさらに口語的で東日本で用いられる〕

いずれも自分に危害が加えられる懸念があったり恐れている際に使われます。しかしTwitterで検索してみると「自分には理解できない」という意味で用いている例がたくさん出てきます。ひらがなとか含めればもっとあるかも知れません。なお、ここに引用したTweetはこれを書いている時点で検索して上から拾ったものです。

原神バグった…なにこれ怖っ…砂嵐?

おそらく意味は「何が起きたか理解できない」でしょう。

ガチ絵師怖っ!??

おそらく「ガチ絵師の力量は底知れない」と言った意味でしょう。

首都高このタクシーしか走ってないくらい車走ってない!なんか怖っ!

おそらく「首都高にタクシーしか走っていないのは不可解である」でしょう。

「怖い」=「自分の理解を超えている」について

3つほど例をあまり恣意的にならないようにTweetを検索して該当するものを上から取ってみました。他にも「えっえっ、なにこれ、怖い怖い」みたいに怖いを連呼しているけど恐れてはいない例もあります。

個人的にはこの手の用法の「怖い」は用いないので違和感がありますが、理解はできます。地域的な方言なのか、それともバイト敬語のようなある種の人達の間で使われる方言なのか気になるところです。辞書に載っていないということは標準語としては定着していないのでしょうか。

Tweetを色々見ている中で、中間的な意味の「怖い」もありました。

ここで使わえる「怖い」は本当に呪いなどを恐れている「怖い」と、あれが何であるか理解を超えている意味での「怖い」の中間的な用法のように思います。これはなかなか興味深いですね。

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ドラえもん のび太の魔界大冒険

出来杉君の説明は実に見事ですね。人気のゆっくりボイス系YouTuberを見ているかのようです。のび太の「魔法はあるか」というジャイアンやしずかちゃんにすらバカにされた問に「べつにわらわないよ」と真摯に向き合っています。その後に理路整然と歴史的な観点から自然現象に対する人々の畏怖や錬金術の発展を短く説明した上で「つまり・・・魔法はもうないの?」「ない」と明確な回答を与えています。

現代の人であれば雷は自然現象で原理もおおよそわかっていますが、昔の人にとっては神の怒りだったり菅原道真の祟りだったりと恐れられていました。原因がわかりませんからね。原因がわからない故に怖いというのは流れとしては自然で、おそらく辞書に載っていない「怖い」の用法もここ最近生まれたものではなく、言語学に詳しい人から見れば「それは1000年前から使われているよ」みたいなことを言うかも知れません。しらんけど。

残る疑問はどうしてこのように広く使われている「怖い」の用法を大辞林では説明していないのでしょうか。

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