Book|教室が、ひとりになるまで
◆本の感想vol.1
教室が、ひとりになるまで
浅倉 秋成
KADOKAWA(2021.01.22発売)
Kindle Unlimitedにて22.02.20読了
ー最低の動機。でも、泣きたいほど分かる。〈帯〉
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北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ショックから不登校の幼馴染みの自宅を訪れた垣内は、彼女から「三人とも自殺なんかじゃない。みんな殺された」と告げられ、真相究明に挑むが……。
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●ファンタジー×青春×殺人=??
新感覚の特殊設定ミステリー
久しく小説読書から離れていたのですが、Kindle購入を機に再開!
リハビリも込めて勢いよく読めるミステリにしよう。と思い選びました。
本当は話題の『六人の嘘つきな大学生』が読みたかったのですが、サブスク対象外で💦同じ作者のをまず読んでみよう!となったワケですが…。
六人の〜、課金してでも読みたくなりました。めちゃくちゃ面白かったです。
いろいろなミステリーを読んできましたが、「特殊能力による殺人」…とくにこの手のタイプは初めてで。
非現実的な設定でも"なんでもアリ"では決してなく、理に適っていて伏線回収も素晴らしかったです。
例えば、特殊能力にきちんとルールがあることや、そのルーツを辿ることでそれぞれの力の由来もハッキリするところ。主人公が推理力をもった探偵ではないけれど、図書館で調べたり周りと協力し考えることで真相にたどり着くところ。
そして、重要となってくる殺害動機。
「誰もが認める超仲良しなクラス」なんて胡散くさ過ぎて、最初から「そんなわけない」「おそらくそれが原因で殺人が起こってる」…という予想は立てられるんですよね。でも、具体的に何が起こっていて、誰が本当はどう思っているか、は読み進むにつれて紐解かれていく感じが面白くて。中盤からは一気に読み進めてしまいました。
●タイトルの意味が分かると…
「そして、誰もいなくなった」が作中に出てくることもあって、どんどん生徒が死んでしまうのでは…、いつまで続くの…?と思いながら読んでしまって。
教室がひとりになっていた、と主人公が気がついたとき、遺書の文言の意味と犯人の動機にすごく腑に落ちてしまった自分がいます。
そんなことで?いや、そうよね、分かるよ。
登場人物たちに何度思わず駆け寄ってしまいたくなったことか…!
「一人になりたい、なりたくない」
っていうまさにアンビバレントな感情を、教室という舞台で巧みに操って出来た物語だと思いました。
人は、一人では生きていけない
そんなありきたりなことを熱心に語るしかない、悟るしかない、やるせなさ。あんなに一人になりたかったのに、いざそうなるかと思うと、さみしい、だなんて。なんとも言えない葛藤が痛いほど伝わってくるし、高校生だからこその感性や感覚も痺れるものがありました。
人が殺されているわけだから、犯人がいて、動機があって、解決編があるわけだけど、別のベクトルであった青っぽい人間関係云々をぐるぐると事件に絡ませてるのがなんとも秀逸だなぁ…と思ってしまいます。
事件の真相を追っていた主人公が、誰よりも犯人の気持ちを理解できる存在だったのがまた展開に功を奏したのか…。初めて主人公が感情を爆発させるところは真に迫るものがあって、間違っても「若いからだよ〜」なんて茶化せない!
木10くらいの連ドラでやってほしいなぁ〜
コロナで学校行事もやってない世代だから刺さらないかな。テンポもいいし謎解きポイントもたくさんあるからヒットしそうだけど…。
●個人の尊重とかいうけれど
陽キャとか陰キャとか、今の高校生も使うんですかね?
スクールカーストとかはあるのかな…。
価値観が全く同じ人が同じコミュニティに集まることなんて、殆どないですよね…。
学校でも会社でもきっとそう。
声の大きい人が一般的に正しいことを言っていたら、その他大勢も飲み込まれてしまう。それでいて個人の尊重なんてあるの?でも、いちいち全員を尊重なんてそもそもできっこないし。何に、誰に、どこに、落とし込めばいいの?っていうモヤモヤ感はすごく理解できました。
この物語にそって具体的にいうならば、「みんなで最高のクラスにしよう!」「絆を深めよう!」「全員仲良くなろう!」ってすごく良いことで。だけど、その「みんな」の中にいる一人で静かに本を読みたいあの子は一体どこに居場所があるんだろう。というジレンマ。
どんどん歳を重ねると、適度に距離をとったり折り合いをつけたりするんでしょうね。
それができない、させてもらえないのが学校っていう特殊なコミュニティなのかもしれないです。
もちろん、場所や人によるけど!!
…とまぁ、凄くいろんなことを考えさせられました。
強制はしないけど共感してほしい、
共感まではしないけど共有したい、
いつもは一緒がいいけど、今は一人にしてほしい、
そういう絶妙な感情の揺れ幅を、察知できる人になりたいです。
そして欲を言えば、それで相手に寄り添いたい。と。
(読んでいただきありがとうございました!!)
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