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生きてるキムチのかち

その日のイオンモールは
とてつもなく、いい匂いがした。

こういう場合 匂いの正体は1階のあの辺り、たぶんシュークリーム屋か饅頭を蒸している店だろう。けれど、その日は違った。
普段は広い踊り場となっている吹き抜けのスペースに、屋台形式でいくつもの「出張店」が並んでいる。

クリーム大福、団子、人形焼き、小さなたい焼き…
さらに餃子屋やコロッケなどの惣菜も軒を連ねていた。
なかなかの賑わいである。何の催しかも分からぬまま、なんとなく見渡してみたが、ピンとくるものも特になくそのまま通り過ぎようと駆け足になった。

『奥さん、うちのキムチはねぇ、生きてんだよ』

奥さんって私のことか、と考えている間に、思わず突き出されたビラを受け取ってしまった。
渡された紙には、キムチ専門店の文字。

細身で白髪まじりの中年男性は、随分と行動範囲を広げているらしい。数メートル離れたところにある「キムチ」と「佃煮」が並んだ区画には、殆ど人がいなかった。よく見ると、若くてガタイのいい兄ちゃんが手早くひたすらキムチを包んでいる姿が見える。

小さく会釈をしてとりあえずその場を去った。
改めてビラをみる。
白菜・大根・胡瓜・たこ・チャンジャ…
綺麗に漬け込まれた食材の写真が美しく並ぶ。

生きている、というのは発酵のことをさしていて、こだわりの製法と食べるタイミングによって変化する味など詳細が書かれていた。

長いも ¥380-

ふと、目に止まったのは、長芋。
我が家はキムチを常備しているが、市販で十分と思っていたところ。いつか焼肉屋で食べた長芋のキムチが美味しかったなぁ〜と思い出す。
長芋だけのキムチはなかなか買えない。たこやチャンジャに比べて安価だし。なんといっても「生きてるキムチ」だ。吸い寄せられるように、人がいない区画へと舞い戻った。

私がくるのを分かっていたみたいに、ビラのおじさんが迎えてくれる。誰でも彼でも配っていると思ったけどそうでもないらしい。さては、ベテランだな?

「長芋キムチってもらえます?」

「はい!ありがとうございます!長芋ねぇ、一番人気ですよ〜!こちらにどうぞ!!!はい!長芋ね〜」

ガタイのいい兄ちゃんの前に案内された。

「300・500・1キロ・3キロありますけど、どうします?!」

元気よく聞かれた。3キロとか買う人いるのか!
と驚きながらも、「300gで。あ、1袋でいいです。」
と返す。
兄ちゃんが手に取った300gの袋はベテランおじさんに渡され、そのまま会計コーナーへ進んだ。「今日、まず一回食べてみてね。一番美味しい状態だから。」そんなことを言っている。適当な相槌を打ちながら、ふとレジ表記をみて私は息を飲んだ。

会計 1325円

え。嘘でしょ。( ˙-˙ )
380円では。

いや、頭ではすぐ理解できた。
300g分の小さなビニール袋が
計りにちょこんと座っている。
これ、100g=380円だ

や、、やられた…( ˙-˙ )唖然。

ビラには100gあたりなんて書かれていない。
袋のシールには書いてある。
いやそうか、考えれば分かることだ。
300・500・1キロ・3キロありますけど
この時点で気づくべきだった。

市販の500g 298円のパックキムチしか買っていない私は、相場を完全に勘違いしている。
300gのキムチに1325円支払うなんて…。
普段の私なら絶対にしない買い物だった。

やっぱりいいです、なんて言う勇気はなく、さも当然の値段だという顔を作って支払いをした。
その日は日用品をメインにいろいろ購入したのだが、このキムチが一番高い買い物となったのである。

これだけで550円くらい。笑

なかなか美しく写真が撮れた。笑
味は、おいしい!
程よい辛さで、コクがあって、やみつきになる感じ。
ついつい箸をすすめてパクパクといってしまいそうになるが、慌てて手を止めた。なんといっても1300円。大切に食べなければ。

夫も美味しいじゃん。と言っていたが、「1300円もしたの…」と経緯を話すと大笑い。さすがに1300円払ってもう一回買おう…とはならないよね。(^◇^;)

数日かけて食べ終わると、キムチのタレか汁のようなものがタッパーに残った。市販のならなんの躊躇いもなく棄てている…。でも、これは1300円のキムチ。
一滴も無駄にしたくはない。

いろいろ調べた結果、
キムチチャーハンを作ることにした。

うまくできた(●´ω`●)

最後まで使い切って達成感!
チーズをのせて炙ってみたらちょっと特別感も出た。

思いがけず手に入れたお高いキムチ。
美味しかったから味は勝ち。
1300円の価値を見出せたのかは謎である。

でも機会があればまた食べたい。
そんな、キムチのおはなし。

(読んでいただきありがとうございました!!)

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