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『銃・病原菌・鉄』㊤を読んで。

今さらですが『銃・病原菌・鉄』㊤を読みました。

え? ㊤巻だけ? ㊦巻は? ですか?
㊤巻読むのにも、2週間かかったんですよ~。
ジャレド・ダイアモンド氏の力作で、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位ですからね。読みごたえあります。
ホントは出た当初(20年くらい前)に読みたかったんですけど、子育て真っ最中だったので、まあなかなか思うようにはいきませんわな。

ということで。

世界には、いわゆる富める国と貧しい国とがあり、格差存在する。
その格差は、なぜ今のかたちで存在するのか。
スペインはなぜインカ帝国を征服できたのか。
そのような問いに対して、いろいろな視点から考察をしていくのが、この本です。
アフリカで生まれた人類が、世界中にいつごろ到達したのか。
いつごろ各地で食糧生産を始めたのか。
各地域における食糧生産の差異は何か。
そういった事柄について論じられています。(㊤巻は)

アフリカに近いアジア南西部(メソポタミア地域)は、人類が移り住むのも早く、南北アメリカ大陸は遅い。
距離的に遠い上に、ベーリング海峡を渡るわけですからね。シベリアやアラスカといった極寒の地を進むのは、当時の人類には大変なことだったでしょう。
早くから人類が存在していれば、集落ができるのも、それが国家に成長するのも早く、後から形成してくるものに先んじることができる。
その国家となるためには、食糧生産することによる余剰品の備蓄が絶対条件で、余剰食糧があるからこそ、国家のリーダーや、役人、兵士、宗教家など、食糧生産しない層を養うことができる。

読んでいくと、何だか能力主義を見せつけられているようで、ちょっとぴりぴりします。
国家形成が早く、軍事国家として力を持っているからこそ、後進の国を滅ぼしてしまえる。そんなふうに書かれていると、やっぱり負けた側の肩を持ちたくなりますわな。
もちろん、本書の趣旨は「後進であることは、彼らのせいではない」なんですけど、持つものと持たざるものの差異を並べ立てられると、現実の厳しさに目を向けざるを得ず。
だったらこれから我々はどうすればいいんだろう……。

㊤巻の巻末に病原菌の話もありまして。
早くから家畜化に成功したからこそ、ユーラシア大陸の国々は、病原菌ともつき合わざるを得なかった。食糧生産の弊害ですね。
ただ、牧畜の遅れたアメリカ大陸には、ユーラシアにいた病原菌が存在しなかった。だから、ヨーロッパ人がやってきたとき、免疫を持たなかった彼らの末路は‥‥語るまでもないですよね。
ここでも持つものと持たざるものとの差が、最悪のかたちであらわれる。

この本を読んでいると、ヨーロッパの白人全肯定というか、さまざまな競争に勝った白人社会がある前提での論旨というか、そういうものを見せつけられている気がします。
アジア人とは違う目線で書かれていることに、はっとさせられます。
そういう視点を知るには、海外の方の文章を読まないと駄目なんですね。
日本人の文章ばかり読んでいては、日本人の目線が世界共通のように錯覚してしまうから。

この本の原書は、1997年刊行ですので、確かに古い部分はあります。
ネアンデルタール人とホモサピエンスが交配していたというのも、この本では否定されていますが、今では肯定されていますし。
研究は日進月歩なので、古い書物というのはそれだけで不利なんですけど、そこを自分でアップデートさせながら読むのが、大人ということで。
あれ? という疑問が生まれたなら、そこを自分で調べていけばいいわけで。それこそが、読書の醍醐味というやつで。

ただそれでも、我々も生物なので、環境に左右されるのはどうしようもないし、それは本人のせいではない。
この一点は、胸に刻むべき事実なんではないかと思いました。
変化し続けて生き残ることが勝ち。そんな自然の掟の前に、我々はとても無力。
という現実を突き付けられると、やっぱり、我々はこれからどう生きるべきかを、考えずにはいられません。
持続可能な世界を、これからの子どもたちに残していくことができるのか。

アメリカで牧畜が進まなかったのは、移住してきた人類が、大型哺乳類を捕りつくして絶滅させてしまい、家畜化できそうな哺乳類が存在しなかったから。
我々は、産業革命以後、どれだけの種を絶滅させてきたんでしょうね。
我々が滅ばない理由なんて、どこにもない。

そう考えていると、次は㊦巻ではなく、絶滅してしまった人類史について、読みたくなってしまうのでした。
ああ、こうして読みかけの本が増えていくのよ~。そして途中まで読んだ内容を忘れて、最初っから……ということを繰り返すのよ~。

とりあえず、省エネとごみ削減と、肉食から大豆製品食への緩やかな転換に励みつつ、読書を楽しんで生きます。




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