見出し画像

『絶滅の人類史』の読みやすさから、進化の果ての我々を考える。

古の人類史にはまってしまったので、『絶滅の人類史』を手に取りました。

この本は、タイトルとおり、類人猿から分かれた広義の人類の歴史について書かれています。
科学も歴史も日進月歩なので、「最古の人類って、アウストラロピテクスだよね?」っていう昭和の人間からしてみると、知らない親戚が増殖しているし、こんなことまでわかってるの? という驚きもあり、なかなか面白かったです。
人間、死ぬまで勉強だよって、本当にそうですね。
学校で学んだことなんて、簡単にアップデートされちゃいますもん。

ということで、この本は、面白い上に読みやすかったですよ~!
前回読んだ『銃・病原菌・鉄』㊤巻も、決して読みにくい本ではなかったけど、この本はとにかく読みやすかったです!
なんだか、中学高校の授業を受けてるみたいな感じ。
例を挙げる時も、現代の若者にわかりやすそうな、日常から引っ張ってこられてるし。
著者の更科功先生のお人柄なんですかね、わかりやすくて面白い生物の先生っていう感じの文章なんですね。さくさく楽しく読めました。
あれ? この本、学生さん向けでした?

授業のよう、と思った理由の一つが、思考の仕方が説明されているからです。
仮説はスジが通っているだけではダメ、と。
それを学生にもわかりやすく、「池袋から渋谷まで来た友人は、どのルートを通ってきたか」という、生物とは全く関係ない例題で、伝えようとされています。
池袋から渋谷までの一般的なルートは、山手線ですから、多くの人が山手線で友人は来たと思ってしまう。しかし、実は副都心線でも行ける。一般的なのは山手線だけど、副都心線かもしれない。誰もが正しいと思う仮説が、絶対正解とは言えない。

また、人類がたどってきた進化を、なぜ他の生物は選択しなかったのか、進化のデメリットも提示されています。
我々は、直立二足歩行に進歩的な感覚を持っていますけど、でも四足歩行より走るの遅いよね。立ち上がると、肉食獣に見つかりやすいよね。見つかっても走って逃げられなかったら、簡単に食べられちゃうよね。まあ、普通の動物は、そんなリスクは取らないよね、というふうに。
実際、初期の人類は、肉食獣にいっぱい食べられたようです。
食べられたけど、それ以上たくさん産んで、みんなで子育てして、子孫を残していった、と。
なんか、わざわざリスクの高い方へ行ってません?

この「自分が正しいと思ったことを疑う」「それをなぜ他者はやらないのかを考える」。これらを、考え方の基礎として、学生さんに伝えたいのかなあと思いましたね。
学問をやるためだけじゃなくて、就職しても、人として生きる上でも、必要なことなので。

そんなふうに考えながら読んでいると、ネアンデルタール人とホモサピエンスが共存するには、地域が狭すぎた……なんてくだりがでてきて、かなりどきっとしました。
ネアンデルタール人とホモサピエンスが、近い地域で生活していたら、獲物の捕り合いにもなったろう。
サピエンスが狩りに成功したら、ネアンデルタール人は獲物を得られない。
我々に追い出されるように、北の寒い地域へ行き、寒さと食糧難とで、数を減らしていってしまう。
あれ? ちょっと他人事じゃあない気がしません?

ネアンデルタール人の絶滅から約3万年後の、今の地球。
我々が生きていくには、狭すぎるんじゃありませんかね。
食糧難、温暖化、水不足、水没……。状況は、ネアンデルタール人が絶滅したころと、大差なくないですかね。
人類社会が100年後も存在しているなんて、そんな保証どこにもないんですよね。
我々だけが滅亡から免れるなんて、決まってるわけじゃないですよね。

この本は『絶滅の人類史』なので、取り上げているのはネアンデルタール人までです。
ホモサピエンスと絶滅した彼らとの違いは書かれていても、我々は今のところ絶滅していないので。絶滅後に、研究本が出るとも思えませんが。

ネアンデルタール人も昔のホモサピエンスも、今の我々より脳が大きかった。脳が大きくなることが進化の証ならば、我々は下り坂に来ているのかもしれない。
それでも、我々は他者と協力することができる、と著者の更科功先生は締めくくられています。
我々はひとりでは何もできない。誰かの手を借りなければ、生きていけない。100%自給自足なんてサバイバル生活は、絶対無理。
だから、本来そうであったように、協力して生きていくしかないんですよね。

というふうに、きれいにまとまってしまったところで、人類最後の一種である我々は、今日を懸命に生きていくことしかできないのでした。
ここまでお読みくださった方に、幸多からんことを願いつつ。


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,501件

よろしければサポートをお願いします。いただきましたサポートは、私と二人の家族の活動費用にあてさせていただきます。