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『独裁体制から民主主義へ』を読んで考えたこと。

NHKの【100分de名著】で取り上げられていた『独裁体制から民主主義へ』を読んで考えたことを書きます。


あらまし

この本の要点は、以下のようなものかと思われます。

  • 武力を保持している独裁政権に、暴力で対抗しても勝てない。非暴力闘争の方が、望みがある。独裁政権に攻撃の口実を与えてはならない。

  • 独裁者の行動を、自分たちの希望的観測に乗せてはならない。常に最悪の場合も想定すべし。

  • 独裁政権は、それに従う者や支える者がいるから存在しうる。逆に言えば、人々の心が独裁政権から離れ、従わなくなれば、政権は打倒できる。が、それは簡単な道のりではない。

  • 非暴力闘争は危険が伴うし、心も折れそうになるし、時間もかかる。綿密な戦略計画を立て、常に状況を見極めつつ、対応していかなければならない。

というようなことですかね。
読んでいて、希望が持てたり、逆にどんよりと締め付けられそうになったり、非常に疲れました。

綿密な戦略計画を立てろとあるものの、具体例などはなく、当然、独裁政権の状況なども千差万別なので、それは自分で考えろということなんでしょうけど、いやはや普通の市民の手に負えるものなのか? と思ったり。
まあ、だから我が国では権威主義が横行してるんですけどね。

今、我々に必要なこと

独裁体制は独裁体制から生まれるとは限らず、民主主義の制度を通して生まれる……というのは、歴史が証明してますね。ヒトラーも選挙で選ばれて登場してるし。

で、今の我が国ですよ。
自民党の独裁体制はゆるぎなく、連立組んでるはずの公明党の意見はブレブレで、政治家の汚職は多くが罪に問われず、経済的にも先進国からどんどん転がり落ち、まあ国家としての末期症状を醸し出しています。

まずい、というのは、誰の目にもわかること。のはずなんですけど。
森友・加計・桜ときて、パー券裏金問題でしょ? 
リクルートよりも凄まじいはずなのに、政権が転覆していない。
いやいや、日本国民って権力者に甘すぎでは?
黙っておとなしくしていれば、自分だけは安泰とか思ってるんですかね。
政治って、天災じゃないんだけどなあ……。

この本を読んで感じたこと。
庶民ひとりひとりが民主主義について考える。その意識を持つ。そういう土壌がある社会なら、独裁政権は生まれにくいんじゃないか、ということです。
がっちり固まった独裁政権を倒すのは、至難の業。だから、独裁体制が生まれないようにした方が、絶対いい。
幸か不幸か、まだ我が国は民主主義を保っている。今なら。

できればこの『独裁体制と民主主義へ』は、中学の必修科目にしてほしいくらい。
それで高校生・大学生は、様々な状況に対応できるように考える訓練をしてほしい。

というのも。
世界の独裁者たちもこの本を読んで、対策を練っているようなので。
若者が遭遇する未来の独裁者は、もっと狡猾になっているはずだから。

対外戦略に使えるのか?

著者ジーン・シャープの言う非暴力闘争が、果たして対外戦略に使えるのか、そこは微妙だな……という気もします。
ロシアにしてもイスラエルにしても、相手(ウクライナ人やパレスチナ人)を殲滅する気なんじゃないか……という部分がありますからね。
ただ、ハマスが先制攻撃しなけりゃ……とは思います。報復攻撃の口実をつくってしまったので。おかげでイスラエル高官は、他人の言うことを聞きゃしない。

軍事力で弱い側は、軍事力で反撃しようとしてもダメ。それはそうなんですよね。太平洋戦争の教訓でもあります。軍事力はイコール経済力でもありますから、自国より勝る相手(アメリカ)に戦争を吹っかけた日本が愚か。
どんなに怖くても、こちらから手を出しては、絶対ダメ。

シャープの非暴力闘争の具体例としてあるのは、ボイコットとかデモとかなので、それを対外戦略に置き換えるとするなら、やっぱり外交かけひきになりますよね。
ただ単に単発のデモをするとかじゃなくて、あらゆる状況を想定して、外交努力をする。政治家や官僚だけでなく、民間人もできる手を打つ。
そのためには、普段から世界中の国の人々と仲良くする行動を取っていかなきゃいけないし、いろんな外国語を学んだり、世界の文学を読んだり映画を観たり、世界中に出かけて行ってコミュニティをつくったり、それらすべてが国防のための戦略の一部になるんですよね。

独裁政権を倒すのが簡単でないのと同様に、国防戦略も一朝一夕には達成できない。だから、平時の今からひとりひとりが行動していかなきゃ、日本みたいに小さな国はどうにもならないんですね。
何度も言ってますけど、輸入止められたら経済死ぬような国は、軍拡やったってムダなんですよ。いざって時に石油なくなったら終わるので。

つまり根本的な部分で、シャープの理論は対外戦略にも当てはまると、私は思います。暴力に頼ったら負けるよ、というのが。
で、日本人が怖がっているような周辺国のリーダーたちは、当然この理論なんて学習済みなので、攻めさせないためには、更にこちらも進化していかなきゃならない、といういたちごっこですな。永遠に。

自由はダダではない

自由はタダじゃない、というと、やれ納税の義務だのなんだのと日本では言われますが。
そうじゃないんですよね。
民主主義であり続けるためには、ひとりひとりが民主主義を支える自覚をもって、どうすれば民主主義を守っていけるか考えて行動する。それが、タダじゃないの中味。

うん。大変です。
でも、強制収容所に送られて、過酷な環境下で長時間労働した挙句、満足に食事もさせてもらえなくて衰弱死するよりは、全然ラク。

昨日と同じ明日が当たり前に来て、毎日平穏で、自分の身の回りのことだけ考えていればいいって、実は子どもの特権だったのでは?
大人って、もっと外に目を向けなきゃいけなかったのでは?

なんか無駄に人生過ごしてきちゃったかな~と反省しつつ、それでもできることをやりたいと決意を新たにしたのでした。

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