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【編集先記】進化した福井県立恐竜博物館がとんでもなかったので聞いてほしい vol.1

ご無沙汰しております、編集長です。

光陰矢の如しという言葉がことさらに染みる11月半ば。皆様いかがお過ごしでしょうか。
春から続いた某化石案内本の取材(詳しくはこちら)もラストスパート。

今回はついにッ!
あの恐竜王国の館へッ!
行ってまいりましたッッ!!

福井県立恐竜博物館!!!

シンボルの卵ドーム(本館)の横に新たなドーム(新館)が誕生!

「恐竜」を冠した国内最大級の地質・古生物博物館として、2000年にオープンした福井県立恐竜博物館。2023年夏、開館以来初となる本格的な改修を経て、リニューアルオープンしました。

パワーアップした館内の様子を、本の刊行より一足早く、編集者目線でレポートします。

案内してくださったのは、湯川弘一先生です。
お世話になります、よろしくお願いします! 


***

取材日はあいにくの雨でしたが、中に入ってしまえば関係ない!
というわけで早速、卵ドームの心臓部へ。
実は入り口は地上3階に位置するため、まずは長ーいエスカレーターで階下まで一気に降りますよ。

福井恐竜博名物、長ーいエスカレーター

そしてたどり着いたのは……

本館1階展示室

なんということでしょう。
これぞまさに、恐竜王国!

仕切りのない広い空間に恐竜たちが生き生きと並ぶここは、博物館というよりどこかテーマパーク的なワクワクがあります。

ちなみに仕切りがない、というのは正確ではなく、必要に応じてルーバー壁が配置されていました。

ルーバー

このルーバー、視界を邪魔しないので開放感を保ちつつも、向こう側のライティングが目に入らないよう幅が絶妙に設計された特注品。
匠の技が光ります。


ほぼ生きてる


さて。
ここに足を踏み入れるからには、やっぱりこの方にご挨拶しないわけにはまいりません。

ティラノサウルスロボット

リニューアル前からの人気展示

リニューアルに伴い、もちろん、進化しています。

ひとつは口。
最新の研究を反映し、口を閉じた時に歯が見えない仕様になりました。

そして動き。
行動パターンを追加して、連続動作も滑らかに。

さらに目線。
なんだかすごく、目が合います。上に向かって吠えるような大袈裟な演出が減った一方、こちらに顔を寄せてじっと見つめてくるような、別の緊迫感が……!

見てる…!

これはロボットというか、もはや生きて…る…?
と錯覚を起こすほどに生物味が増していました。
それもそのはず、姿勢や瞬きの回数に至るまで、研究者たちがこだわりにこだわって、研究に忠実に再現したとのこと。

「その分、以前よりも迫力はなくなったかもしれませんが……」とは湯川先生。

いいえ、生物味が増したティラノサウルスは、しっかり、ちゃんと、怖いです。

ちなみに、背後に回り込んだ時のこと。設計上絶対に当たらないはずなのに、ふいに体の向きを変えたティラノの尾が私の頭を直撃するのではないかと思い、反射的に身を屈めてしまったのはここだけの話。


研究者がこだわるということ


福井県立恐竜博物館の大きな考え方の一つに、「アジアの恐竜を中心とした研究を進める」というものがあります。

それを示しているのが、ティラノロボの両サイドを固めるタルボサウルスサウロロフス
いずれもアジアを代表する恐竜です。

ティラノロボの向かって左側にはタルボサウルス
ティラノロボの向かって右側にはサウロロフス

今にも走り出しそうな姿勢のこのタルボサウルス、向こう側にいるサウロロフスに襲いかかろうとしているという設定があるとか。

そのこだわりが足元に表現されていました。

カギ爪の跡

わかりますか?
走り出した時に後ろ足のカギ爪が地面につける、引っ掻き跡です。
遊び心でサッとつけたものかと思ったら、この足跡にもしっかり監修が入っているとのこと。

さすがは福井恐竜博、遊び心にも妥協なしです!

遊び心に妥協がないといえば、こんなお話も。
このフロアの後方にジオラマがあるのですが、
「敷き詰められた落ち葉の中に本物の枯れ葉も混ざっているんですよー」とか、

どれが本物でどれがレプリカなのか

「葉っぱは裏側の胞子まで再現してますよー」とか、

この1枚じゃないからね……

「大きな木の目視できないほど上の方に松ぼっくりがあるんですよー」とか、

まったく確認できませんでした

なんだか途方もないことをさらっと説明されまして。驚きや感心を超えて、もはや困惑。

ひとつ確かなのは、福井恐竜博、恐竜以外もガチです!

このジオラマはリニューアル前からある展示で、今回の長期休館中にすべてきれいに埃を払われ、すべてきれいに元に戻されたそうです(もちろん、本物の枯れ葉も)。
上方の松ぼっくりはこの掃除の際に見つかったそうで、現役の研究者たちも先達の細かすぎるこだわりにはさぞ驚いたことでしょう。


美しい横顔


ここは本当に、展示の一つ一つに抜かりがないのですが、例えば全身骨格を横一列に並べただけに見えるこんな展示にも、心憎い演出がされています。

並ぶ装盾類

ここは装盾類のエリア。
(写真だとちょっとわかりづらいのですが)横から見た時に1体たりとも頭の高さが被らず、みんなの顔がよく見えるのです。
もちろん偶然ではなく、「ものすごくこだわって位置を調整しました」と、湯川先生がこっそり教えてくださいました。
これ、気付けると感動しますよね。

博物館では、展示物そのものを観察するのはもちろん、こんな研究者たちの細かなこだわりも探して全体を眺めてみると、それまで気づけなかった色々な発見や感動があるかもしれませんよ。

さーて。
このフロアには、他にも絶対に見逃してはいけないヤバイ恐竜化石があるそうで……。
福井恐竜博レポート、まだまだ続きます!

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