仏像にも「位」があるって知ってますか?|仏像のキホン講座#1
こんにちは、仏像イラストレーターの田中ひろみです。
私の新刊『仏像イラストレーターがつくった 仏像ハンドブック』から、仏像鑑賞のツボを皆さんにお伝えします。奥深い仏像の世界ですが、ちょっと知識があるだけで、より楽しめるようになるんですよ。
「仏像」と一括りにいっても、種類があるってご存知でしたか? たとえば、「阿弥陀如来」「薬師如来」「釈迦如来」とは言っても、「阿弥陀菩薩」「薬師菩薩」とか「釈迦菩薩」とは言わないんです。それは、如来と菩薩は違うカテゴリーだから。「阿弥陀」「薬師」「釈迦」は如来という存在なのです。
仏像は、大きく四つに分かれます。
位順序でいうと、「如来」「菩薩」「明王」「天」。
以下のような区分けとなります。
◉「如来」「菩薩」「明王」「天」の違い
なぜ位があるのかというと、仏教では、「悟り」を開いて真理に触れることが、とても大切なこととされています。その悟りを開いた姿が「如来」であり、最高位なのです。
◉如来の種類と特徴
*釈迦如来:釈迦(ゴータマ・シッダールタ)が悟りを得た姿を表しており、象に乗った普賢菩薩と獅子に乗った文殊菩薩を従えています。手の形(印相〔いんそう〕)は、「怖れなくていいよ」という意味の、施無畏印(せむいいん)・与願印(よがんいん)です。
*薬師如来:「東方浄瑠璃浄土」という世界の仏で、現世の苦しみに救いの手を差し伸べてくれるのです。この世すべての人に心身安穏の功徳があり、病気をも癒してくれることから、現世利益の仏として崇拝されてきました。日光、月光菩薩を従えます。平安時代以降の薬師如来は、万病を癒す薬壷(やっこ)を持っています。
*阿弥陀如来:「西方極楽浄土」の教主。衆生救済のための修行を経た報身仏です。「無量光仏」とも呼ばれ、量ることができないほどの光を持つ仏、の意味を持ちます。勢至菩薩と観音菩薩を従えます。指を輪の形にするのが定印(じょういん)です。
◉菩薩の特徴
菩薩は出家前の王子だった釈迦の姿を模しているので、冠やアクセサリーをつけた煌びやかな姿をしています。「菩薩」とは悟りを得るべき修行を続けている人を指します。
観音菩薩のほかにも、菩薩にはいくつかの種類があります。たとえば、
*普賢菩薩:女性やあらゆるものを救済してくれる。白い象に乗る
*文殊菩薩:知恵の仏様。獅子に乗っている
*地蔵菩薩:子供を守り、地獄に堕ちた人も救ってくれる
*弥勒菩薩:「兜率天(とそつてん)」という天界にいて、釈迦が亡くなった56億7千万年後に下界に降りて衆生を救う
*虚空蔵菩薩:宇宙のように無限の知恵と慈悲を持つ菩薩
*日光菩薩・月光菩薩:薬師如来の左右に従う菩薩
◉明王の特徴
密教で生まれた仏の種類で、大日如来の化身とされています。大日如来のいうことを聞かない、生きとし生ける者すべてを仏教の道に導こうとしているため、牙をむき、目を吊り上げた怒った顔で表現されているのです。
◎不動明王の姿を見てみよう
明王には、「愛染明王」「孔雀明王」「軍荼利明王」などの種類があるが、その中でもよく知られる不動明王の姿が、明王の特徴をよく表しています。
◆不動明王の図
◉天の特徴
「天(てん)」という言葉は、サンスクリットの「デーヴァ(Deva)」から来ていて、「神」を意味している。女性や動物の姿をしたものもあるし、四天王、金剛力士、十二神将(じゅうにしんしょう)など、仏教を守るガードマンのような役割のものもあります。たとえば…
▷貴紳形
身分の高い貴紳。梵天や帝釈天。
▷武人
武装した男性。四天王や十二神将など。
▷動物形
迦楼羅天は顔が動物で、体が人間。
▷女神
吉祥天(きっしょうてん)は美と幸福の女神。ほかに弁財天も女神であり、中国の貴族風の姿をしています。
いかがでしたか?
仏様の種類や位を知ると、お寺に祀られた仏像がどんな意味合いをもった存在なのかがわかってくると思います。
仏像って、最初はみな同じ姿に見えるのですが、種類や特徴を知ると違いがわかり、仏像との出会いがより楽しくなりますよ。
次回は、仏像が手にもつ「持物(じぶつ)」と呼ばれる持ち物のいろいろを解説します。
文=田中ひろみ
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