見出し画像

【旧諸戸氏庭園<六華苑>】洋と和の粋が融合した麗しき邸宅と庭園(三重県桑名市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年6月号「名勝アルバム」より)

 旧諸戸(もろと)氏庭園<六華苑(ろっかえん)>は、桑名の山林王として知られた実業家・二代目諸戸清六の邸宅と庭園。約一万八千平方メートルもの敷地に、日本近代建築の父、ジョサイア・コンドルが設計した洋館、棟梁・伊藤末次郎による和館、蔵などの建物群と、池泉回遊式庭園が見事な調和を見せる。若干の改築を経ているが、関東圏以外で唯一現存するコンドルの貴重な住宅作品である。

 洋館と和館は壁を突き合わせるように一体化して建てられており、一階、二階とも内部を行き来できる(和館二階は非公開)。洋館東端の塔は、設計当初は三層だったが、揖斐川・長良川を見晴るかすために四層に変更。清六は客を招いて塔からの眺望を楽しんだという。

 苑長の中澤勇次さんは「邸内から庭を眺めると、窓枠と松で縁どられた一幅の絵のようで見とれてしまいます」とその魅力を語る。

 今にも往時の人々が現れそうな、気品に満ちた庭園をいつまでも見ていたくなった。

1906_名勝D01**

森 武史=写真

◉名勝指定:平成13年(2001)8月13日
☎0594-24-4466
三重県桑名市大字桑名663番地5
明治44年(1911)着工、大正2年(1913)に竣工した洋館・和館からなる邸宅は、創建当時の姿をほぼそのままにとどめて六華苑として一般公開されている、日本近代建築史においても貴重な遺構。洋館と和館は平成9年に国指定重要文化財に、また苑内の6棟の建築物が三重県指定有形文化財、離れ屋が桑名市指定有形文化財となっている。

出典:ひととき2019年6月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


よろしければサポートをお願いします。今後のコンテンツ作りに使わせていただきます。