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名勝アルバム

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「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝… もっと読む
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【旧古河庭園】日英の名匠が生んだ近代庭園の傑作(東京都北区)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年7月号「名勝アルバム」より)  武蔵野台地の斜面と低地を生かし、小高い丘に洋館、斜面に洋風庭園、低地に日本庭園を配する旧古河(ふるかわ)庭園。もとは明治の元勲・陸奥宗光(むつむねみつ)の邸宅だったが、次男潤吉が古河家の養子に入り、当家所有となった。現

【恵林寺庭園】夢窓国師が“無為自然の境地”を表現した名園(山梨県甲州市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年4月号「名勝アルバム」より)  恵林寺(えりんじ)は禅僧・夢窓国師(むそうこくし)が1330年(元徳2年)に開創。武田信玄の菩提寺としても知られる。本堂裏に広がる恵林寺庭園は、上段に枯山水、下段に心字池(しんじいけ)*を配した池泉庭園で、池には笛吹川

【木曽川堤(サクラ)】全長47キロの大堤防沿いの桜並木で古木と若木が競演(愛知県一宮市・江南市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年4月号「名勝アルバム」より)  江戸時代、徳川家康の命により、木曽川左岸に全長約47キロの大堤防が造られた。1884年(明治17年)、洪水で堤防の一部が決壊すると、翌年、再建に際してエドヒガン、シダレザクラ、ヤマザクラの3種の桜が植樹されたという。お

【光前寺庭園】境内の桜が薄桃色に染まる束の間の春(長野県駒ヶ根市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年3月号「名勝アルバム」より)  光前寺(こうぜんじ)庭園は、長野県内で庭園として最初に名勝指定された。指定区域は境内全域に及ぶ。清い若葉の杉並木や寺域を囲む樹林の紅葉など、長野県下随一ともいわれる静寂な環境と情緒を求めて、年間を通じて人が集う。  

【霞間ヶ渓】災害との闘いが育んだ桜の名所(岐阜県揖斐郡池田町)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年4月号「名勝アルバム」より)  霞間ヶ渓(かまがたに)を目指し宿を出たのは、朝まだきのこと。ようやく空が白み始めると、小さな山の斜面と谷川の堤に咲く桜花が、霞のごとく浮かびあがる。やわらかな春の陽射しが届く頃には、一帯が薄桃色に包まれた。  この地

【楽寿園】富士山の溶岩流が生み出した 類い稀なる景観(静岡県三島市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年3月号「名勝アルバム」より)  東海道新幹線三島(みしま)駅南口から徒歩約3分。鬱蒼とした林のなかの園路を進むと、至るところに大小さまざまな溶岩が露出している。  およそ一万年前の富士山の噴火による「三島溶岩流」の末端の上に生育した自然林に囲まれた

【海地獄】地球の息吹を感じる コバルトブルーの熱泉(大分県別府市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年1月号「名勝アルバム」より)  南国の海かと見紛うほどのコバルトブルー。だが、濛々(もうもう)と立ち上る湯気が物語るように、海は海でもここは海地獄。摂氏約98度の熱湯の噴出口だ。約1200年前の鶴見岳噴火によってできた熱泉のひとつで、湯に溶解した硫酸

【白沙村荘庭園】異才の日本画家・橋本関雪が大地に描いた“文人の理想郷”(京都市左京区)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年3月号「名勝アルバム」より)  大正から昭和期の京都画壇において、「和魂漢才」の日本画家としてひと際異彩を放った橋本関雪(かんせつ)。1914年(大正3年)、彼は居住を兼ねた工房として白沙村荘(はくさそんそう)の造営を始める。1万平方メートルの敷地に

【仙巌園】桜島に錦江湾…薩摩の宝を取り入れた大名庭園(鹿児島県鹿児島市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年2月号「名勝アルバム」より)  仙巌園(せんがんえん)に来るのはこの日で2度目だ。それなのに、雄大にそびえる桜島と青く煌めく錦江湾(きんこうわん)を借景としたこの庭園は、初めて来た時と同じような感動を与えてくれる――。  島津家の別邸として1658

渓谷に咲き乱れる梅の競演(奈良市月ヶ瀬尾山)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年2月号「名勝アルバム」より)  五月川(さつきがわ)の渓谷が一望できる「一目八景」に立つと、眼下に紅白の梅が咲き乱れていた。谷の先に目を移せば、無数の梅樹が両岸に立ち並ぶ。優美で壮大な景色を前に、夢見心地のまま時を忘れて立ち尽くした。  江戸時代、

【無鄰菴庭園】山縣有朋と稀代の庭師が築いた名庭(京都市左京区)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年1月号「名勝アルバム」より)  明治から大正にかけて活躍した政治家、山縣有朋(やまがたありとも)。無鄰菴(むりんあん)は1896年(明治29年)に造営された山縣の別荘で、母屋・洋館・茶室と庭園によって構成されている。作庭は “近代日本庭園の先駆者”と

南方熊楠が愛した自然豊かな九龍島(和歌山県串本町ほか)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年1月号「名勝アルバム」より)  古座(こざ)川上流から運ばれてくる寒気が暖かな熊野灘に流れ込み、海霧が生まれる。立ち込める靄(もや)のなか次第に輪郭を顕した九龍島(くろしま)(左)と鯛島の間を、朝日が昇っていく。  九龍島は古座川河口の沖合に浮かぶ

【養翠園庭園】千本の松が見守る 徳川ゆかりの汐入の池(和歌山県和歌山市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年12月号「名勝アルバム」より)  四季を通じて青々とした葉をつける松は常磐木(ときわぎ)と呼ばれ、古来吉祥のシンボルとされてきた。その松を主体に植栽し、紀州藩第10代藩主の徳川治宝(はるとみ)が8年もの歳月をかけて造営したのが「養翠園(ようすいえん)

【琴弾公園】歴史ある銭形砂絵のパワースポット(香川県観音寺市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年12月号「名勝アルバム」より)  ふいに懐かしのテレビ時代劇「銭形平次」のタイトルバックに使用されていた銭形の砂絵を見てみたいと思い立ち、氷雨ふる年の暮れ、人けのない琴弾(ことひき)公園を訪れた。  まず海岸を歩き、銭形砂絵に向かう。実際に目にした