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【すずひめ号】世界遺産・丹生都比売神社のご神犬(和歌山県かつらぎ町)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2018年7月号より)

 丹生都比売(にうつひめ)神社にご神犬が奉献されたというニュースを耳にしたのは、今年のはじめ。ご神犬って何? どんなことをするんだろう? 確かめたくて、和歌山へ。

 紀伊山地の北西に位置する伊都郡かつらぎ町上天野。白洲正子が著書『かくれ里』で高天原(たかまがはら)にたとえた標高450メートルの天空の里で、1700年以上前から信仰を集めてきたのが丹生都比売神社だ。

 鮮やかな朱の鳥居の前ですらりとした前脚を行儀よく揃えて座っているのは、6月に1歳5カ月を迎えた紀州犬「すずひめ号」。気品ある純白の毛並みにつぶらな瞳、動くたびに首元の鈴がちりちりと鳴るさまも愛くるしい。

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丹生都比売神社に奉献されたすずひめ号

 丹生都比売大神を祀る当社は高野山と縁が深く、神仏融合を象徴する神社として世界文化遺産に登録されている。高野山の縁起によれば、丹生都比売大神の御子、高野御子大神が、白黒2頭の犬を連れた狩人に化身し空海を高野山にみちびいたという。宮司の丹生晃市さんは「すずひめ号が、祈りの場に人々をみちびくシンボルになってくれたら」と願っている。

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月次祭の日より数量限定で頒布される、空海が日本に伝えたといわれる手すき和紙、高野細川紙の御朱印

 すずひめ号は、毎月16日の月次祭(つきなみさい)の日の午前10時から11時半、午後1時から2時半の2回、参拝者に公開される。1月から毎月訪れる人もいるほどの人気ぶりだ。

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 すずひめ号を奉献した地元の愛犬家豊岡由行さんは、「神さまとのご縁をつなぐ大切な役割をいただき、飼い主冥利に尽きます」と微笑む。1200年前からのご神犬伝承により、この地に伝わる紀州犬を知ってもらうことは、紀州という地への関心にもつながるだろう。すずひめ号は、地域の大切な宝でもあるのだ。

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豊岡由行さんと参拝するすずひめ号

 豊岡さんのもとで健やかに育つすずひめ号が、訪れる人々に愛され、聖地へのみちびき犬として末長く活躍することを願わずにはいられない。

文=宮下由美 写真=阿部吉泰

ーー追記(2020年6月15日)ーー
2019年9月9日、すずひめ号が仔犬3頭を出産し、そのうちの1頭、黒のオス・大輝号が2020年2月より2頭目のご神犬となり、高野山の縁起のように白と黒のご神犬が揃ったそうです。毎月16日の月次祭では、2頭揃って公開される予定です。

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2頭目のご神犬となった大輝号


ご当地◉INFORMATION
●かつらぎ町のプロフィール
和歌山県の北東部、紀の川流域にある伊都郡西部の町。紀伊山地と和泉山脈に挟まれた盆地には、穏やかな里山の風景が広がっている。
寒暖差を生かし四季を通してさまざまな果物が栽培され、旬のフルーツ狩りが人気を集めている。なかでも柿は全国有数の産地。あんぽ柿や柿酢、ジャムなどをお土産にしたい。
●かつらぎ町・丹生都比売神社へのアクセス
笠田駅からかつらぎ町コミュニティバスで丹生都比売神社まで約30分 
●問い合わせ先
丹生都比売神社 ☎0736-26-0102 
https://niutsuhime.or.jp/

出典:ひととき2018年7月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。



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