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【瀬戸の招き猫】1000年超の陶都は猫の町?(愛知県瀬戸市)
日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2022年2月号より)
「瀬戸は招き猫のふるさとのような場所なんです」。そう教えてくれたのは陶磁器メーカー「中外陶園」の井上美香さん。聞けば、明治30年代*に日本で最初に招き猫の量産を始めたのが瀬戸だという。それを可能にしたのは、ヨーロッパの鋳込み製法をいち早く取り入れていたから。その頃、京都の伏見稲荷大社の参道で、土産として招き猫の人気が高まり、そのニーズに応えたのが始まりだった。
*1897年〜1906年
石膏型に泥状の粘土を流し込み成型する
作業に集中する絵付師。定められたデザインに合わせてムラなく仕上げるのは、熟練者でも難しいという
1952年(昭和27年)創業の中外陶園では明治時代の技法をもとにオールドスタイルの「瀬戸まねき猫」シリーズ(下の写真)を生産している。さっそくご対面願うとすらりとした姿でお目見え。シンプルモダンな印象だ。
やきものの里へ、いらっしゃい! 町の中心を流れる瀬戸川の前で。瀬戸川の橋は、やきもので飾られた欄干も見どころ
現在全国に流通する招き猫で最もポピュラーなものは愛知県の常滑産で、その見慣れたずんぐりした招き猫とはずいぶん違う。招く手の位置が低いのも当時からの特徴のひとつ。「もっとも、瀬戸の招き猫は昔から自由な発想でつくられていて、バリエーションが豊富なのも瀬戸ならではです」
中外陶園 体つきがまあるく福々しいレトロな雰囲気の招き猫も手がける
穴山大輔さん・文香さんご夫妻が2013年(平成25年)に開いた「翠窯」では、そんな言葉を裏付ける招き猫に出会えた。白地に藍色の繊細な染付の磁器で、絵付には文香さんのセンスが色濃く反映されている。全身に細かく施された文様や50体近く描かれた妖怪たち。愛らしさのなかにもパンクなテイストが漂い、男性ファンが多いというのも頷ける。
大きい猫は1尺(約30センチ)、小さい猫は3寸(約9センチ)
穴山さんご夫妻は、やきものの町として長い歴史を持つ瀬戸に魅力を感じて移住を決めたという。「やきものに必要なモノ、ヒト、ワザ。何でも揃うから、瀬戸では何でもできちゃうんですよ」と大輔さん。その懐の深さが自由・進取の気風につながり、招き猫づくりにも生かされているに違いない。
穴山大輔さんと文香さん。「瀬戸を代表する窯元になるのが目標です」
縁起よし、インテリアによし。わが家をぱあっと明るくしてくれそうな瀬戸の招き猫たち。さてと……どの子を連れて帰ろうか。
文=神田綾子 写真=阿部吉泰
ご当地INFORMATION
●瀬戸市のプロフィール
陶磁器の一大産地で、「窯垣の小径」をはじめ、やきものの町ならではの観光スポットが点在する。日本最大の招き猫専門の博物館「招き猫ミュージアム」はおよそ5,000点のコレクションを誇り、全国の招き猫ファンが訪れる。9月下旬には「来る福招き猫まつり in 瀬戸」で町全体が盛り上がる。
●問い合わせ先
中外陶園
☎0561-82-2354
http://www.chugaitoen.co.jp/
翠窯
☎070-8328-0684
https://www.suiyou-seto.com/
出典:ひととき2022年2月号
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