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常盤貴子さんと桜色の京歩き|「そうだ 京都、行こう。」の30年

JR東海の京都キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」が、昨年秋に30周年を迎えました。数多くのポスターやTVCMなどで、多彩な京都の魅力を日本中に伝えてきました。そこで今回は、これからの時代の「新しい京都」の魅力を、京都通として知られる常盤貴子さんと探しにゆきます。(ひととき2024年3月号特集「『そうだ 京都、行こう。』とわたしたちの30年」より)

 京都を舞台とする数々の作品出演はじめ、昨今は京都府文化観光大使としても、古都の魅力発信に貢献する俳優の常盤貴子さん。京都好きは10代の頃からで、デビュー以来、わずかな時間を見つけては新幹線に飛び乗っていた、という筋金入り。

「冬の京都の、キーンと冴えた空気感も好きですが、ふらっと来たくなるのは、やっぱり春かな。あのCMの名コピーに何度、誘われて来たことか(笑)。ね? お誘いいただいているのならば……って、気分になるでしょ?」

【ポスター’10 春】

「花の雲」と詠われた御室桜の林。江戸時代から庶民の桜として親しまれてきた〈仁和寺〉

 そんな常盤さんと、この春のとっておきの桜を見つけに京歩き。まずは、これまで「そうだ 京都、行こう。」春のキャンペーンにも度々登場している京都屈指の桜名所、仁和寺にんなじへ。こちらは886(仁和2)年の光孝天皇の勅願により建立された大寺院で、明治期まで、代々、皇族ゆかりの宮門跡みやもんぜきが法統を継いだことから「御室おむろ御所」とも呼ばれたところ。そうした典雅な由緒のお寺でありながら、ここの桜、じつは京都一の愛嬌モノでもありまして。

 わたしゃ おたふく 御室の桜
 鼻(花)は低ても 人が好く

と唄にもあるように、背丈の低い八重咲きの桜がなんとも愛らしく、満開の頃は桜花の雲に包まれるようなお花見が楽しめる。「御室の桜で見納め」と、桜めぐりのフィナーレにお決まりの名所だったが、このところ4月初旬に開花と聞けばのんびり構えてはいられない。

世界遺産でアフタヌーンティー

 そして近年、仁和寺の新しい楽しみ方として話題となっているのが、お寺のプライベートツアー。世界遺産・仁和寺の一夜を独占するようなドラマチックな宿泊体験が噂に高いが、趣向はそれだけにあらず。お昼の数時間、僧侶の案内で寺院やお茶室を拝見したり、寺侍てらざむらいの旧家を移築、改修した宿坊「松林庵しょうりんあん」を貸し切っての和菓子作り、アフタヌーンティーなど、プチ贅沢と文化の香りが相まった、心惹かれるプランも数々あるのだ。

優雅な佇まいの仁和寺御殿。牟田僧正の案内で御殿回廊から北庭の景色を楽しむ常盤さん

 今回、常盤さんには「松林庵」でのひとときと、宸殿しんでん、書院などの御殿見学、そして食堂じきどうでのオリジナル・アフタヌーンティーを。案内には仁和寺執行の牟田むた清樹せいじゅ僧正が付いてくださった。実は牟田僧正、「そうだ 京都、行こう。」で仁和寺が初めて紹介された1994(平成6)年のCMにも登場しておられるのだそう!

「あの日は思いのほか、冷えこんで……」と、撮影の思い出話も交えつつ、宿坊の設え、御殿の襖絵、庭園のつくり、茶室の由緒など、興味深い解説が、調度を、景色を、俄然がぜんくっきり印象深く見せてくれる。

艶のある綸子地に、肩から胸元には咲き誇る桜花、裾には舞い散る花びらを描いたあでやかな訪問着姿の常盤さん。仁和寺宸殿上段の間、爛漫の桜の襖絵(禁中絵師の原在泉筆)に、思わず足を止める

「滝の向こうに見えるのは、光格天皇お好みの茶室で、躙口にじりぐちではなく、お立ちのまま入れる貴人口がついています。天皇さんが茶室へ向かわれる時、庭の滝の飛沫が御衣の袖を濡らしたことから、飛濤亭の名がついたともいわれていて──」。

 いかにも、天皇家ゆかりの寺院であった昔日を思わせる逸話など、格好の土産話にもなりそうだ。

数寄屋造の粋を凝らした、境内の宿坊「松林庵」。2階の階段脇に設えられた、アールが美しい太鼓橋を渡ると奥に茶室が[上下写真]

 さて、見学のあとのお楽しみは、食堂でいただくオリジナルのアフタヌーンティー。その内容は、季節や折々の趣向によっても変わるが、この日は、今、京都でじわじわと存在感を増す新鋭「御室和菓子いと達」の上生菓子に、京都産の茶葉にこだわった和紅茶の取り合わせ。

 桜をテーマに、らんまんの春を頬張るような、とりどりのお誂え菓子が並ぶお盆を前に、常盤さんもテンション高め。このアフタヌーンティーでは、前もって好みなどを伝えておけば、それに沿ったアレンジの相談にも乗ってもらえるそう。こんなところにも、お誂えの町、京都ならではの楽しみが潜んでいる。

旅人=常盤貴子 文=安藤寿和子 写真=伊藤 信

──この続きは、本誌でお読みになれます。「若いころとは京都の景色の見え方が違う」と語る常盤さんによる、春を見つける京の旅をお楽しみください。また、本誌では「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンのTVCMやポスターとともにこの30年を振り返ります。美しいビジュアル、コピーとともにお楽しみください。

▼ひととき2024年3月号をお求めの方はこちら

<目次>
●第一部 春めく町へ、ご一緒に
 常盤貴子さんと行く 桜いろに染まる京歩き(常盤貴子=旅人)
●第二部 いつだって京都はそこにある
 観光都市「京都」の今昔(中井治郎=談) 
●TVCMコピー&ポスターギャラリー
●エピローグ モラトリアムの街
●インタビュー 京都と僕(柄本 佑=談)

出典:ひととき2024年3月号

■JR東海の京都キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」の30周年を記念して、テレビCMやポスターから79点厳選し、1冊の写真集にまとめたこちらもぜひご一読ください。

▼御朱印帳BOOK[春夏版]も大変好評です!
「そうだ 京都、行こう。」春夏ポスターを集めたミニ写真集(地図付き)とオリジナル御朱印帳がセットになった一冊です。ぜひお楽しみください。

仁和寺
☎075-461-1155 
[所]京都市右京区御室大内33 
[時]9~17時(12~2月は16時30分まで)、受付は入山終了30分前まで 
[交]京都駅から市バス26号系統で「御室仁和寺」下車すぐ 
[料]大人800円(御所庭園)、高校生以下無料 
*3~6月の「御室花まつり」期間は特別入山料あり
*春以降のプライベートツアーは、仁和寺のホームページなどでご確認ください
https://ninnaji.jp/

常盤貴子(ときわ・たかこ)
俳優。神奈川県生まれ。1991年のデビュー以来、数多くのドラマ、映画で主演を務める。2014年、「野のなななのか」、2017年「花筐 HANAGATAMI」と立て続けに大林宣彦監督の映画に出演、大林組には欠かせない存在となった。TV番組「京都画報」(KBS京都ほか)の出演は2年半になる

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