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【東京ステーションギャラリー】「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展

東京駅丸の内北口に直結する東京ステーションギャラリーでは、イギリス・デザイン界の巨匠、サー・テレンス・コンラン(1931-2020)の、日本で初めての展覧会となる「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が開催中(~2025年1月5日まで)です。

サー・テレンス・コンランは(以下、コンラン卿)、第2次世界大戦後まもなく、テキスタイルや食器などのパターン・デザインから活動を始め、次第に個人の生活空間から都市、そして社会へと、デザインを通じてイギリスのみならず世界の生活文化に大きな影響を与えました。

コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」(1952年、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵)Photo ©Estate of Raymond Williams

デザイナー、実業家、ホテル経営、小売、出版業、レストラン経営、デザイン・ミュージアムの設立、とボーダーレスに、かつ実に多様に、そして規模の大きな業績を残しました。

――「デザインが暮らしを豊かにすること、いつでもこれが私にとって一番大事なことだった」(テレンス・コンラン『マイ・ライフ・イン・デザイン』より)

と著書で述べているように、コンラン卿の存在を際立たせているのは、単に優れたデザインのテキスタイル、食器や家具をプロデュースしたばかりでなく、デザインを通じて、多くの人々が「こんな暮らしがしたい」と思うようなライフ・スタイルの提案をしたことでした。

著書『The House Book』(ミッチェル・ビーズリー刊、1974年)
コンランの初期の仕事である、テキスタイルやグラフィック・デザイン、家具が並ぶ(東京ステーションギャラリー3階展示より)
パターン・デザインによるディナープレート「チェッカーズ」(1957年)

いまでこそ、一般に“セレクト・ショップ”と呼ばれる、あるテーマに沿った商品を扱う店舗がありますが、コンラン卿はまさしくそうした優れたデザイン、コンラン卿の審美眼で商品を選んで人々に提案する先駆け的存在でした。

けれどもそれらのデザインは、豪華で高級なもの、というわけではありませんでした。

――「いいデザインとは、98パーセントの常識と2パーセントの美学から生まれる」「Plain, Simple, Useful(無駄なくシンプルで機能的)なものが好きだ」

という言葉に現れているように、日々の暮らしに寄りそい、彩りを添えるようなものばかりでした。

会場は、同時進行で複層的に活躍したコンラン卿の業績が、8つのカテゴリーに分けて紹介する展示構成になっています。各カテゴリーで上映されている関連する人々のインタビュー映像を見ながら巡っていくことで、鑑賞者それぞれがコンラン卿の人物像に迫っていけるような工夫がなされています。

東京ステーションギャラリーと言えば、東京駅創建当時の建造が随所に見られる空間として知られています。

2階と3階の、それぞれ雰囲気の異なる建築空間を活かした展示空間が広がります。

展示は3階から始まりますが、3階は壁と天井が白く明るい雰囲気で、プロダクト作品や家具などが並び、住空間にあるような雰囲気を演出しています。

さまざまな生活用品を扱う小売店「ハビタ(Habitat)」の商品陳列のインパクトの再現を試みた展示。当時「ハビタ」では、商品在庫をすべて店頭に陳列して高く積み上げ、デザインの豊富さをアピールしたという。現在ではよく見る商品陳列方法も1960年代当時はとても斬新なものだった(東京ステーションギャラリー3階展示より)
「ハビタ」とは異なる価格帯と職人の仕事(商品)を取り扱う店として、1973年に誕生したのが「ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP)」。展示会場には著名なデザインの椅子などが並ぶ(東京ステーションギャラリー3階展示より)

一方、2階は赤茶色のレンガの壁に黒い天井という、対照的な雰囲気です。構造レンガがむき出しの展示室の壁は、コンラン卿が1971年に購入して終生の住まいとした邸宅、バートン・コートを彷彿とさせます。

バートン・コート自邸(2004年撮影、Photo:David Garcia)

2004年に自身のオフィスをこの自邸内に移していますが、今回の展示ではその一部が大きな写真パネルで紹介され、コンラン卿が自らディスプレイしたという愛蔵品が、かつてオフィス内にあったのと同じように再現展示されています。

オフィス内のディスプレイの再現展示(東京ステーションギャラリー2階展示より)
ベンチマーク家具のためのスケッチ(書籍からの複写)のパネルを背景に、写真右は「mc2 コーヒー・テーブル」、左は「ジンクを使った家具のマケット」。ジンクは亜鉛、マケットは製品を作成するための模型のこと(東京ステーションギャラリー2階展示より)

コンラン卿は、日本にも大きな関心を寄せ、1994年の「ザ・コンランショップ」日本初出店以降、数多くのプロジェクトを手がけました。

――「他の文化がどのようにふるまい、何をしているのかは、いつでも私に大きな影響を与えてきた」
と述べているように、世界の優れた文化に大きな関心を寄せ続けました。

また今回の展覧会では、一般的な展示作品を順に収録するといった図録ではなく “副読本”が刊行されています。本展覧会に出品されていない作品やイギリス内外での活動を含む、コンラン卿の人生と作品が多数の写真とともに年表形式で収録されていますので、本書もご覧になってはいかがでしょうか。

副読本『 Who is Terence Conran ? 』

デザインというもの、それを活かした暮らしがもたらす楽しさや喜びを分かち合いたい、という気持ちを随所に感じる本展に、ぜひお出かけください。

写真提供=Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.

文・展示風景写真=根岸あかね

【開催概要】
会期:2024年10月12日(土)〜2025年1月5日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
開館時間:午前10時~午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし10月14日、11月4日、12月23日は開館)、
10月15日(火)、11月5日(火)、12月29日(日)~2025年1月1日(水)
入館料:一般1,500円/高校・大学生1,300円/中学生以下無料
*障がい者手帳等持参の方は200円引き(介添者1名は無料)
詳細はHPをご参照ください。
問合せ:☎03-3212-2485

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