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親玉菓舗の碌寳焼(福井県福井市)|柳家喬太郎の旅メシ道中記

当代一の落語家・柳家喬太郎師匠。お声がかかれば全国あちこち、笑いを届けに出かけます。旅の合間の楽しみは、こころに沁みる土地の味。大好きなあのメシ、もう一度食べたいあのメシ、今日もどこかで旅のメシ──。この連載「旅メシ道中記」では、喬太郎師匠の旅メシをご紹介します。

 埼玉の「じゅうまんごくまんじゅう」に山梨の「信玄餅」、名古屋の「青柳ういろう」。九州なら福岡の「博多通りもん」は定番だけど「ロイヤルのスイートポテト」も好き。うーん、熊本の「ほまれの陣太鼓」に鹿児島の「かるかん」も外せないなぁ。あんなしの方ね。あと、長崎の「はなかご」ってフィナンシェもんまいですねぇ、って話してるだけで血糖値が上がってきますなっ!! あ、ぼくが好きな各地の“甘いモン”の話です。

 福井市にある親玉おやだま菓舗って和菓子屋の「碌寳焼ろっぽうやき」もそのひとつ。3センチくらいの立方体の焼き菓子で、中にほどよい甘さのこし餡が詰まってる。これが、小麦粉とタマゴと砂糖で作った素朴な風味の生地にじつによく合うんですわ。生地は少し厚めで、一面ずつ鉄板で焼いてるから外側はサックリ、んでもって中はもっちり。クッキーというかパンっぽさがあるからかな、濃いお茶やコーヒーでもいいんだけど、牛乳と一緒に食べるのも好きですねぇ。

 じつはご当主の西川敏弘さんは、福井での落語会の主催者なんです。だから義理で紹介しているみたいだけど、そんなんじゃあなくて、心からおすすめしたいお菓子。もっとも、いろんな落語家の会をなさってるから、ぼく以外にも「碌寳焼」ファンの芸人は多いんです。

 何よりね、地元の方にとっても愛されてるのがいいじゃないですか。その証拠に夕方前には売り切れ御免という人気者。西川さんとお母様、奥様の3人で一個一個手作りされてるから数に限りありです。日に700個ほど、多い時で1000個は作るそうですが、お客さんにできるだけ作りたてを食べてほしいという思いから作り置きはせず、都度250個くらい仕込む。だから仕込み中で品切れのときもあるようですが、どうか西川さんを責めないでください!

 あと、残念ながら地方発送はしてません。福井駅でも買えませんから、親玉菓舗の店舗までお出かけください。福井駅から徒歩15分ですけど、売り切れていてもどうか西川さんを怒らないでください! 日々お菓子を作り、定休日には落語会を開催する。地元の人に喜んでもらうために、西川さんはいつもがんばっておられるのです! つか、予約がおすすめです! 

【親玉菓舗の碌寳焼】
京都の「親玉」という菓子店で修業をした初代が、1885(明治18)年に福井で創業。看板商品の「碌寳焼」と同様の菓子は「六方(宝)焼」という表記で各地にあるが、他店とは違う特別な菓子にしたいという思いから、2代目がこの漢字を当てたという。

談=柳家喬太郎 絵=大崎𠮷之

親玉菓舗
☎0776-23-6353
[所]福井市順化2-20-15
[時]9時~18時30分
[休]火曜、最終週の月曜

柳家喬太郎(やなぎや・きょうたろう)
落語家。1963年、東京都世田谷区生まれ。大学卒業後、書店勤務を経て89年に柳家さん喬に入門。2000年真打昇進。落語協会常任理事。好きな福井めしはヨーロッパ軒のソースカツ丼。エビフライ入りのミックス丼も好き。

出典:ひととき2023年9月号

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