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おすすめの書籍

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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#奈良

天竺に向かう途上で命を落とした真如親王の夢──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

斉衡2年(855)5月23日、東大寺の大仏の頭が落ちた。相次いだ地震のためと思われる。大仏復興は真如親王が担当することになった。 真如親王は平城天皇の第3皇子で、出家する前は高丘親王といった。 平城天皇が譲位し、弟の嵯峨天皇が即位すると、11歳で皇太子になった。しかし平城上皇が都を京都から奈良に戻そうとして騒動(「薬子の変」)が起きると、皇太子をやめさせられてしまう。 24歳で出家。東大寺に住み、道詮に師事して三論宗を学んだ。さらに空海の弟子にもなった。 大仏の復興に

唐招提寺の鑑真和上像に込められた弟子たちの想い──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

唐招提寺の忍基は、講堂の梁が折れる夢を見た。 眼が覚めた忍基は、これは鑑真和上が亡くなる知らせに違いないと考えた。 いやだ。師がいない世界で生きるのは耐えがたい。鑑真和上は、ほかのどこにもいない、最高の師だった。 弟子たちは、師が生きておられるうちに、肖像を造ることにした。師の姿をこの世に留めるために。 まず、土で師の姿を造る。その上に麻布を漆で何枚も貼り重ねていく。一番上には、師の衣をいただいて着せた。それが終わると、背中に窓を開け、中の土を取り出す。 麻布の上に

命とは、不思議なものだ。──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

今からおよそ2500年前の2月15日の夜、お釈迦さまはインドのクシナガラで亡くなった。見上げれば、天には満月が美しく輝いていた。 それから1500年ほどが過ぎて、平安時代の終わりに西行はこんな歌を詠んだ。  願はくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ 如月の望月とは2月15日の満月のこと。お釈迦さまが亡くなった日に死にたい。 西行は文治6年(1190)2月16日に亡くなった。この年の2月は、16日が満月だったそうで、この上ない最高の亡くなり方だった。 旧暦の2月

お地蔵さまは地獄まで救いに来てくださる──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

お地蔵さま(地蔵菩薩)はもっとも身近な仏さまだ。 奈良時代には虚空蔵菩薩とセットで造られていた。虚空蔵菩薩は虚空、つまり天を蔵にしており、地蔵菩薩は大地を蔵にしている。そして平安時代には「抜苦与楽」の仏として信仰されるようになる。苦を抜き、楽を与えてくれる仏さま。 やがて、地獄に堕ちた衆生でも救ってくれるという信仰が強くなっていく。 私たちは、生前にどのようなおこないをしたかにより、6つの世界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)のどれかに生まれ変わるとされる。 前半の

奈良が紡いできた物語に触れ、仏教を身近に感じる3冊

古都の情緒あふれる奈良は、日本人はもちろん海外から訪れる人々にも人気の土地。そんな奈良は仏教を育んだ地ともされ、今現在およそ70もの国宝仏を有し日本で一番です。そうした奈良の文化や歴史の魅力を伝える活動を幅広く重なっているのが、奈良国立博物館の名誉館員であり、半蔵門ミュージアム館長でもある西山厚さん。ラジオやテレビ等のメディアにも多く出演し、時にはお笑い芸人と絡んだりも。西山さんの著書は仏教史を交え、篤い専門知識に裏打ちされながらも、わかりやすく優しく、仏教に興味ある無しの枠

祈る人の心を汲んで、あったかい気持ちにさせてくださるのが仏像だと思うんです(俳優・紺野美沙子)

俳優の紺野美沙子さんが、弊社刊行の西山厚さんのご著書『仏像に会う―53の仏像の写真と物語』の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。 『仏像に会う』、西山厚先生の最新刊が出ましたね。仏像が好きなので、楽しみにページを繰ってみたら、私にとって思い出深い仏像がいくつも掲載されていました。  まず鑑真和上坐像です。このお顔のアップの写真、とても印象的でしょう? 『仏像に会う―53の仏像の写真と物語』より  私と著者の西山先生との最初のご縁は、神戸で行われた「唐招提

これ以上、仏像が好きになってしまったらどうしましょう?(モデル・はな)

モデルのはなさんが、弊社刊行の西山厚さんのご著書『仏像に会う―53の仏像の写真と物語』の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。  気がつけば、仏像の世界に足を踏み入れてから30年ほど経ちます。  大学時代は、教室のプロジェクターに映し出される仏像のスライド写真を見ながら勉強し、卒業してからは、生の仏像を追っかけるようになりました。当時はモデルの仕事で京都に行くことが多かったので、その前後の時間を利用して、近くのお寺に足を運ぶ程度の「やんわり」とした追っかけでし

さだまさし「小さな人生を懸命に生きる人へのエール」――『日本人よ、かくあれ』

歌手のさだまさしさんが、弊社の新刊書籍『日本人よ、かくあれ――大和の森から贈る48の幸せの見つけ方』(岡本彰夫 著、保山耕一 写真)の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。 『上へ上へではなく、奥へ奥へと進みなさい』  僕は岡本彰夫先生に10年以上に亘って深いお付き合いをお許しいただいていますが、岡本先生の言葉は、たとえ厳しくとも常に「情」と「心の奥行き」に満ちています。 「情」とは人間同士の心にとって、最も温かな潤滑油であり「心の奥行き」は、他も我も共