これ以上、仏像が好きになってしまったらどうしましょう?(モデル・はな)
モデルのはなさんが、弊社刊行の西山厚さんのご著書『仏像に会う―53の仏像の写真と物語』の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。
気がつけば、仏像の世界に足を踏み入れてから30年ほど経ちます。
大学時代は、教室のプロジェクターに映し出される仏像のスライド写真を見ながら勉強し、卒業してからは、生の仏像を追っかけるようになりました。当時はモデルの仕事で京都に行くことが多かったので、その前後の時間を利用して、近くのお寺に足を運ぶ程度の「やんわり」とした追っかけでしたが、写真で勉強した仏像が目の前に現れた時の感動は、自分が好きなアイドルに会えた時の熱量を上回るほどだったように思えます。
撮影禁止、(もちろん)握手禁止、会話はこちらから一方的に話しかけるくらいで、手を振っても相手はジッとしたままです。ふむ、人間のアイドルよりもガードが固いぞ。お会いした時の印象は心にしっかり刻んでいきましたが、手ぶらで帰るのもさみしいし、お会いした証に、せめてお土産品でも!と、この時期から収集し始めたのが、お寺の受付で販売していた仏像のブロマイド写真(ポストカード)でした。
仏像の姿を見たままに写したブロマイドが、また良くて。家に帰ってからも写真を片手に、旅と仏像の想い出に浸りながら、部屋で一人ニヤニヤしている時間が増えていきました。まだ実家に住んでいた頃で、確か、東寺の帝釈天さまを眺めながらニヤついていた時でした。部屋のドアの隙間からそっと、その光景を見ていた母の不安気な表情が、今でも鮮明に蘇ってきます。
良い年の娘が人間でもない、仏像の写真を見てニヤニヤしているのですから、心配になるのも無理ありません。それから何十年も経ちますが、大好きな帝釈天さまは「仏像界のダーリン」。公では「仏像界」を付けて、人間界と区別するようになりました。
果たして、仏像に対するあの思いは、恋だったのか?
西山さんの著書を読んでいるうちに、自分の仏像好きがエスカレートしていくのを感じました。飛鳥時代から鎌倉時代を代表する、仏像の豪華ラインアップ。私の好みが多く反映されていることに喜びを隠せず、久しぶりに、ニヤニヤが止まりません。しかも、あの時、私が手にしていた仏像のブロマイドを彷彿させる、写真。いや、それよりも上をいく、強気なアングルとライティングで撮影された写真が、こんなに数多く掲載されているなんて!
「この仏像はこの角度がいい」西山さんの目線で選んだ写真からも、仏像に対する愛情がひしひしと、伝わってきます。そして、写真に西山さんの熱い思いが刻まれた分、文章には仏像の特徴や歴史など、学術的な背景をやさしい言葉で綴り、まるで西山さんが隣で解説してくださっているようで、心地良い。
遡れば、1400年もの間、その時代の人々を支え、そして、人々から支えられきた、仏像。西山さんの本を片手に、同じ時代を生きる奇跡の仏像たちに、会いに行きたくなりました。でも、これ以上、仏像が好きになってしまったらどうしましょう、西山さん?
文=はな
はな
モデル。12月21日生まれ、神奈川県横浜市出身。2才から横浜のインターナショナルスクールに通い、17才からモデル活動を始める。上智大学に進学後も、学業と並行してモデル活動を続け、その後テレビやラジオ、ナレーター、エッセイの執筆など活動の範囲を広げる。現在もファッション誌で活躍するかたわら、FMヨコハマ「Lovely Day〜hana金〜」(毎週金曜)のナビゲーターや、日本テレビ「夢の通り道」(毎週日曜)のナレーションも務めている。英語・フランス語に堪能で、その語学力を活かした絵本も多数。趣味はお菓子作りや茶道、仏像鑑賞。2017年9月国宝応援大使、2019年4月奈良国立博物館評議員に就任。著書に、『はな、茶の湯に出会う』(淡交社)、『hana’s style book』(宝島社)、『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』(幻冬舎文庫)、『おくるおかし』(集英社)ほか多数。
Instagram:https://www.instagram.com/hanalovestaco/
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