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読書日記〜生き様は死に様で決まった〜

 『小さなお人形の物語』にはデア・ライトが幼少期に見た夢が反映されている。
 デア・ライトの写真絵本が今も私たちの心を打つのは、彼女自身の叶わなかった夢があまりにも甘美に描かれているせいなのかもしれない。
 きっともう、寂しくはない。
     寂しがりやの人形絵本作家 デア・ライト

 「私を止めないでください。できるのなら、一人にしておいてください。できないのなら、消えさせてください」
   消えたフォーク・シンガー コニー・コンバース

 自然を愛する穏やかなカレンは、同時に野獣のような激しい気性の持ち主でもあった(中略)その純粋さはやがてカレンのキャリアを滅ぼすことになる。
 路上で死んだフォーク・シンガー カレン・グルトン

 これだけ好きに生きることが出来たら、たとえ悲劇的な最期となっても本望なのではないだろうか。だから、どの女性の人生も不幸だとは思わない。
「真似のできない女たち 21人の最低で最高の人生」
 山崎まどか著



 昨今『多様性』という単語をよく耳にします。
 ジェンダー、働き方。『みんな違ってみんな良い』と様々な場所で目に耳にしますが、まだまだ私たちの中には『人はこういう生き方をしなければならない』といった枠があるような気がします。

 他人に迷惑をかけないように。
 親や友人に心配をかけないように。
 職場の負担にならないように。
 周りから浮かないように。
 
 この本『真似のできない女たち 21人の最低で最高の人生』の中で紹介されている女性たちは、前述した『こうあらねば』の生き方をあざ笑うかのように生きて死んでいきました。 

 作家やピアニスト、ダンサーに修道女など様々な職種の女性が出て来ますが、誰の人生も『真似のできない』『最低で最高』なものです。
 紹介されている人物の中にはまだ日本では知られていない人も多く、中には長い間歴史に埋もれていた女性もいます。
 近年のフェミニズム運動や人種差別に対する意識の改革で、その功績を再評価されるようになった女性もいます。
 
 本書の中で著者は『これが男性の場合、世に出なかった天才というような言われ方をするけれど、これが女性の場合、奇人や変人といった評価になってしまう』といったようなニュアンスの文章を書いています。
 
 私も『なぜ〈少年のような男性〉は許されて〈少女のような女性〉は痛々しい目で見られるのだろう』、どうして女性は『自由で』『自分を貫く』生き方をしてはいけないのだろう。
 そんな事を考えています。

 自分を貫き通して生きる。
 言葉にすれば簡単だけれど、現代ではたったこれだけの事が女性にとっても男性にとっても最早『夢』のようになりつつあるのかもしれない。
 今よりもずっと人種差別や女性蔑視、理不尽な因習や慣習が人々を縛っていた時代に、型破りな人生を送った女性たち。
 
 目には見えない『何か』に縛られて生きる私には、彼女たちの生き様と死に様は深く胸を打って来る。

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