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読書日記〜さあ、不道徳の時間です〜

 この世の中には「悔悟した青春」などというものはないのです。「自分はまちがっていた」などという青春はないのです。

 精神的に帰ってゆくところが一つもないのに、自分の女にだけ、故郷を、港を、根拠地を夢みようというのは、時代おくれのセンチメンタリズムにすぎません。

 これが私の教育勅語です。




 「不道徳教育講座」 三島由紀夫著


 自分が生まれる前に活躍していた作家の情報、それも「ファーストインプレッション」の種類は人によって異なるかと思います。
 私が三島由紀夫について最初に得た情報は「自衛隊を占拠して切腹した作家」という、何ともセンセーショナルなものでした(当時の私は確か小中学生くらい)。
 切腹って江戸時代じゃあるまいし…という謎の引き(?)に襲われた私は、この事件を理由に三島を避けて来ました。

 そんな私が本屋さんで出会って買ったファースト三島本が今回紹介する「不道徳教育講座」です。

 もともとは『週間明星』という女性誌に連載されていたエッセイだそうで、先述した「自決」の暗い奈落のイメージとは全く真逆の作風で私たちに「三島由紀夫ってお茶目!」という感覚を与えてくれる。
 何というか…「文豪」よりは「サブカル界の有名人」みたいな、とてもユーモアのある面白い人だったんじゃないかという感じ。

 「悪」として捉えられているものも、突き詰めていけばどこかの時点で「善」になる。その逆もまた然りで、行き過ぎた「正義」はどこかで「悪」へと変わっていく。
 まるでリバーシのごとく。
 「不道徳」を教えていくと真の「道徳」を説く事になるという逆説。
 これを読めば自分の「道徳」が試される事間違いなしです。

 しかし、こんなに面白い人でも死んでしまうのだものなあ…。
 「真理の扉を開いた人間は帰って来られない」法則に、この人も則ったのだろうか。
 だとしたら物凄く「道徳的」で…「不道徳」な人だ。

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