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「変化を嫌う人」を動かす|新しいことを確実に成功させるために知っておきたい人間の本質【新書】【書評】


今日取り上げる書籍は『「変化を嫌う人」を動かす』です。

「説得不要で人を望み通りに動かすコツ」を学べます。 

この書籍の知識を生かせば、上司や顧客といった、あなたの願い通りに動いて欲しい人たちを、もっと簡単に動かせるようになるでしょう。

今回のポイントは、次の3つです。

1 今すぐやめるべき「燃料思考」
2 魅力的な提案を拒否する4つの原因
3 人を動かす3つの方法

最後まで、お付き合いください。 

1今すぐやめるべき「燃料思考」

燃料思考とは、燃料が足りないから相手が動いてくれないんだ、と誤解することです。

相手に足りていないと誤解しがちな燃料とは、主に次の2つです。

1メリットに関する情報
2デメリットに関する情報

本書では1のメリットに関する情報を、促進型燃料
2のデメリットに関する情報を、回避性燃料と呼んでいます。

促進型燃料とは、商品やサービスの魅力や、それを手に入れることで得られるメリットを伝える情報です。

マーケティングの権威であるフィリップ・コトラーが広めた「4P」によるアプローチが促進型燃料に当たります。

なお4Pとは、
プロダクト:製品
プレイス:商品がメーカーから消費者へと流通する経路(流通チャネル)
プライス:価格
プロモーション:販売促進
の頭文字をとった造語です。

最近ではさらに3つのPを加えた7Pも登場しています。

いずれも、相手にポジティブな感情を起こさせるためのプロセスです。

これに対して回避性燃料とは、懸念や不安といったネガティブな感情を起こさせる情報です。

具体的には
フィアー:恐怖心
ロス:喪失感
リスク
リグレット:後悔
インペイシャント:苛立
といったものが回避性燃料です。

このサービスや商品を手にしないと、自分はネガティブな状況に追い込まれてしまうと思わせるのが回避性燃料の役割です。

現代のマーケティングでは、促進型燃料と回避性燃料の2つのバランスをとりながら、ユーザーを動かすのが定石と考えられています。

つまりユーザーが動かない場合は、十分にメリットが伝わっていない
もしくは入手しないことによるリスクが伝わっていないからだと考えて、
畳み掛けるようにメリットをアピールしたり、リスクを強調したりします。

しかし本書においては、燃料に頼るやり方は誤りです。

なぜならほとんどの場合、ユーザーはメリットもリスクも理解しているからです。
燃料が足りないから動かないのではありません。

ではなぜユーザーは動かないのでしょうか?

それは、本能に基づく強い抵抗が働いているからです。

抵抗を理解するために、高校の物理の授業で習ったニュートンの第一法則まで時間を巻き戻しましょう。
ニュートンの第一法則では、静止している物体は静止し続けるとしています。

静止している物体に対しては、押す力と押される力の均衡が取れています。つまり、物体を動かすためには、押し返す力よりも強い力で押さなければなりません。

ところが人間には恒常性という本能が備わっています。
恒常性とは、つまり現状維持したい欲求です。

変化はチャンスをもたらします。しかし同時に危険をもたらす可能性がある事は否めません。

自分自身の存続を最優先事項とする人間の脳にとって、存続を脅かす可能性は排除する必要があります。

たとえどんなに大きなメリットもしくはデメリットがあると分かっていても、それと引き換えに今もっている資産などが減少するという変化を恐れます。

未来に期待できる変化よりも、今、目の前の変化の方が人間の脳にとって一大事です。
今の均衡を脅かそうと働きかけるものは、人間の脳にとっては危機でしかありません。

ありとあらゆる言い訳を持ち出して、自分を動かそうと、働きかける力を押し返すべく抵抗します。

こんなにすごいメリットがあるんです。
こんなに素晴らしい商品なんです。
これを手にしておかないと、将来こんなデメリットがあります。

しかしそれらは全て架空の未来の話です。
今が一番大切な人間の脳には理解が及びません。
今を変えようとすれば、働きかけた分と、同じだけの力で押し返され、拒絶されます。

ここでは
足りていないのは燃料ではない。
あなたが相手に働きかけることによって、変わることを強いられた相手は強烈な不安を覚えている。
だから必死に抵抗してあなたの言葉を拒絶しているのだ、ということを覚えておいてください。

2魅力的な提案を拒否する4つの原因

地球上の全てが、押す力と押される力のバランスの中で存在しています。
これは、人間の心理面でも同様です。
相手を動かそうと働きかければ、それに対して抵抗する力が働きます。

本書では、人間の中には次の、4つの抵抗があるとしています。

1惰性
2労力
3感情
4心理的反発

それぞれについて簡単にご説明します。

1惰性

人は変化を好みません。
はじめて出会うものも嫌いです。

人間が好きなのは変わらないこと。
そして、既に知っているものです。

なぜならいつも同じことを繰り返しているのが最も安全で、
既に知っているものなら、想定外のリスクに見舞われる危険性が少ないためです。

たとえそれが未来にどれほどメリットをもたらす変化であったとしても、なじみがないものであれば拒絶します。

例えば、スーパーに買い物に行ったとき
いつも買っている商品と同じ値段の新商品が陳列されていたとしましょう。
この時ほとんどの人がいつも買っている商品を自動的に選びます。

新商品が手に取られるためには、何度も繰り返し買い手の目に触れて、既知の情報に変わらなければなりません。

その意味で、営業回りをする人が、特別要件はなくても、何度も顧客の元を訪れるのは理にかなっています。もし対面できなくても、訪れたことをメモや名刺等で残せば、まったくの知らない営業マンから、いつも来てくれるあの人にかわるでしょう。ビジネスチャンスはぐんと広がります。

2労力

2つ目の抵抗は労力です。

人間の脳はデフォルトで怠惰です。
少しでも体力を温存し、少しでも無駄に労力を費やさない方法を好みます。

物理的な肉体に支配されている人間には、限界があります。
そのため最小限の労力で最大の成果を出すことが、人間の脳にとっての理想です。

この理想を実現するために、様々な技術が発展し、効率化が進められてきました。
労力を惜しむ本能のエネルギーは絶大です。

例えば、アンケートに回答してほしいとき、まっさらな紙を渡して、自由に記入するよう求めても、ほとんど回答は得られません。

しかし、選択肢をいくつか設けて〇をつけるだけにすれば、回答率はぐんと上がります。

この場合アンケートに回答しない理由は、自分で答えを考えて、労力を費やすことを嫌うためです。

ウェブサイトを作る場合なども、訪れたユーザーが、自然な目の動きで情報を終えるようにデザインします。
どれほど有益な情報が書かれていても、あちこちに情報が散乱して、情報を探すのに、労力を必要とするサイトでは、せっかく訪れたユーザーも、続々と離脱するでしょう。

3感情

先に人間は努力を惜しむ傾向があるとお伝えしました。
しかしそれと同時に、労力をかけなすぎることを嫌うことがあります。

何故でしょうか?
答えは、感情が抵抗として働くためです。

例えば、ホットケーキミックスがはじめて売り出されたとき、面倒な家事の手間を省いて、簡単に完成度の高い料理を作れる商品であるにもかかわらず、全く売れなかったそうです。
なぜだかわかりますか?

その理由は簡単すぎて、家事をサボっているように思われたくないという感情が働いたためだと、本書では説明しています。

家事の手間を軽減して、時短で料理が作れるというメリットよりも、まるで、自分が家事をサボっているかのように思われたくないという心理の方が、強い抵抗として出現したのです。

楽をしたいけれど、楽をしていると人から思われたくない。
社会性を持つ、人間らしい反応といえます。

4心理的反発

自由でありたい。
自由を奪われたくないという思いは、人間の本能に根ざします。

そのため変化させられると察知すると猛烈な抵抗が生じます。
これが心理的反発です。

人は変わりたくありません。
また誰かから変えられたいとも思いません。
自分は、自分のまま
ありのままの自分で
自分の思うように生きていきたいのです

誰もが、自分という生命を生き抜くために、生命活動をおこなっています。

あなたは間違っている。
もっとこうすべきだ。

真っ向否定されれば、人は猛烈に抵抗します。
説得に対しても同様です。
たとえ、それが自分の利益につながるとしても、人は猛烈に抵抗します。

あなたの為を思って言っているのよ。
という親や先生の言葉にうんざりし
感謝の念があるにもかかわらず、素直に耳を傾けることができなかった経験は、誰にでもあるでしょう。
これが心理的反発です。

では、本能的に生じるこれら4つの反発をどうすれば克服して、こちらが伝えたいメッセージを相手に受け取ってもらうことができるのでしょうか。

次の章で詳しくご説明します。

ここでは
人間には惰性・労力・感情・心理的反発と、
4つの抵抗が本能的に備わっていることを覚えておいてください。

3人を動かす3つの方法

自分を動かそうとして、何かが働きかけてくると、それに対して猛烈な抵抗力が動き始める。
それが人間の本能です。

しかし、こういった人間の本能をうまく活用すれば、相手との軋轢を生むことなく動かすことができます。

この時にポイントとなるのが自己説得です。
自己説得とは相手が自分で自分を説得するのを助けることを意味します。

自己説得はこちらから働きかけて相手を動かそうとする説得ではありません。

人間の脳は、1万年前から変わっていないと言われます。
変化は、すぐには訪れません。

時間をかけて相手の考え方自体が変わるのを待ちます。

自己説得を実現する際のポイントは次の3つです。

1待つ
2YESを引き出す問いかけ
3ユーザー自身が参加する

例えばあなたはアパレルショップの店員だとイメージしてください。
店頭商品に惹かれて、お客が入ってきて商品を手に取りました。
鏡の前に立って、着丈やシルエットを確認しています。

このとき「待ってました!」とばかりに近づいて「お似合いですよ!」「こちらは今日入荷されたばかりの新作なんです。」「今シーズンの流行りのシルエットで着心地も最高ですよ!」と畳み掛けるようにメリットを説明したとします。

これではお客は、そそくさと洋服をハンガーに戻して、店を出て行くでしょう。

このお客は、商品を手に取って似合うかどうか鏡の前で合わせるほど、その商品を気にいっていました。
しかし、どんどん燃料を注ぎ込まれた顧客は、消化不良と説得される恐怖によって激しい抵抗を感じて逃げ出します。

燃料を注ぎ込んで、すべてを焼き払ったのと同じです。

ではこの時、どうすれば自己説得できたのでしょうか。

正解は、付かず離れずの距離で待つことです。

「サイズやお色もございます。着丈のお直しもできますので、何かあればお声がけください。」
これで十分です。

あとはお客が声をかけたいときにいつでも声をかけられる位置で待つだけ。

この商品が自分に必要か否かは顧客自身が決めます。

「ほかの色があるなら見てみようかな」
「少し丈が長いから詰めてもらおうか」
あなたの提案を元に、顧客が判断するでしょう。
しかしあなたは提供可能なサービスを提案しただけ。
判断したのはお客自身。

このスタンスが自己説得です。

自分で判断する余地を得られた顧客は、気分よく買い物を進めるでしょう。
これが購買につながるプロセスです。

自己説得は相手のタイミングを待ちます。

人それぞれ、異なる時間感覚と異なる背景の中で生きています。
こちらの都合で早く結論を出すように迫ってはいけません。

意図的に焦らせているわけではなくても
畳み掛けるように問いかけるだけで相手は急かされていると認識し、抵抗を示すので注意が必要です。

また相手が興味を示した時は、「YES」と答えられるような質問を投げかけて相手の心にポジティブな感情の種を植え付けます。

そして可能な限り、ユーザー自身に行動させることも大切です。

面倒ではない程度に、書類に記入してもらう
面倒ではない程度に、アイディアを出してもらう

ユーザー自身にも参加してもらい一緒に行動することで、自分の意思で決定したのだという確信が強まります。

自分の力で歩くことを覚えた小さな子供を見守る時の心理と同じです。

安全のためにと制限しすぎたり、あれこれ指示をだし過ぎれば、子供は自分の思った通りにやってみたいと泣き出すでしょう。

人間は誰でも、自分の思った通りに振る舞いたい、そして自分で決めたのだと思いたいのです。

こういった人間の本能的欲求を満たせば、相手は自然と動きます。
それはまるで、童話の北風と太陽です。

強引に働きかけてはいけません。
環境を整え、ただ待つのみです。

人間が自然界の一部であるように、人の心にも物理法則が当てはまります。

強く押すほど強く抵抗します。
種を撒いても、条件が揃わなければ芽は出ません。

こちらの思うようにコントロールしようとすれば、相手は敏感に察知します。

相手を尊重し、忍耐強く時を待てる人にだけ、望んだ結果が訪れる可能性が広がることを覚えておいてください。

さいごに

今日は「『「変化を嫌う人」を動かす』」から得られる学びをシェアしました。

「周りの人を動かせなければビジネスは前進しません。
人間の本能を理解して、人を動かすスキルを身につけ」ましょう。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
情報も学びも、行動してはじめて意味を持ちます。
本書との出会いを、新しい一歩の原動力にしてください。


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