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186 リスクの勘違い

サプリメントと病気

 健康になりたい、という人は多い。その元になっているのは、健康診断である。たとえば、私は以前にも書いたけど、歯の状態は良くない。不健康そのものである。

 ところが、先日、その歯医者は「これからこうした紙を患者さんに渡すことになったのですが、毎回、いりますか?」と聞いてきた。小さな紙に私の名があって「良好」と記されていた。もちろん、いらない。それに、私の歯のどこが良好なのか。良好じゃないので通っているのに。
 これに似たことが内科でも起きる。毎年の健康診断である。「中性脂肪が」とか「コレステロールが」と言われる、あれだ。
 もし自分が病気なら、きっと健康になりたくて、そのためにはどんなことでもしたいと思うだろう。だけど、病気ではないけれど、健康診断で「この数値が気になる」と言われたら、どうすればいいのか?
 私はいわゆるメタボ予備群と呼ばれる一群に入れられて久しい。ずーっとそうなのだ。社会人になってプールに通い、食事を制限して痩せたことは一度ある。だからといって大してモテなかったのでやめたけど。週に数回バーに寄るようになって、あとはなにをしたって体重はそう簡単に減らなくなった。腹の周りに分厚い脂肪がある。そりゃ、こんなものなければいいとは思う。ただ、そのためになにをしてもいい、とは思わない。
 サプリメントは多くの人がそれぞれの目的のために用いているので、私はそれをすべてダメだなんてことは言わない。プラシーボ効果だってバカにならないし。実際、少しよくなっている気がするなら、それはそれでけっこうなことだ。
 とはいえ、サプリメントは病気による症状を改善する薬ではない。そもそも不健康な生活をしていることは、必ずしも病気なわけではない。その状態で、いったい、なにを改善しようというのだろう。

小さなリスクを解消するための代償

 私たちはときどき勘違いをしてしまう。
 それは、目の前に提示されたリスクの評価を間違えることだ。リスクは薬のアナグラムだけど。
 小さなリスクがある。それを解消するには、大きな代償を支払わなければならないとしたとき、それでも代償を払うかどうか、である。
 たとえは悪いけれど、「なにもしなくてもいまのままですけど、いいですか?」と言われて、どうするか。なにかをしないこともリスクだが、なにかをすることも当然、リスクである。では、私たちはそのリスクの大きさを正確に理解できるだろうか?
 毎月何千円も何万円もサプリメントを消費する一方で、毎日、不規則な生活をしながらストレスに耐えつつ、栄養価を無視した食事を採る、といったようなことをしていないだろうか?
 つまり、なにかをすることで、リスクを高めていないか、である。
 中性脂肪が多い。コレステロール値が高い。実は、こういうことは、大多数の人が言われていることだ。しかも、中性脂肪が少ない人、コレステロール値が低い人でも病気にはなるのである。必ずしも健康とは限らない。
 そういう場合に、「数値を下げる効果があるかも!」となにかに飛びつく必要があるだろうか?
 小さなリスクを解消するために、大きな代償を払ってしまうことは、それほど珍しいことではなく、いまも世界中で起きている。悪意で起きているのではなく「よかれ」と思われているのだ。
 じゃあ、「よかれと思ったんですよ」で納得できるだろうか?
 なにもしないリスクの方が小さいと判断したら、なにもしないことだ。だけど「よかれと思って」の提案や「損はないんじゃないかなー」ぐらいの提案でも、受けてしまうことがある。小さな話であるうちは、「効果がなければやめればいい」で済む。ところが、その提案に思わぬ高いリスクが含まれていたとしたら?
 これがすでに発症している、日常生活に支障が出ているといった症状に悩んでいるなら話は別だけど、もし、そうではないのだとすれば、なにもしないことも選択肢になると私は思う。専門家は「あとで、文句を言われたくない」から、なにかをする選択肢もひねり出すけれど、だったら「お前、先に飛んでみろ」と言いたい。最近のサプリメント、投資の話もそうだけど、安全な場所にいる人たちの言葉を鵜呑みにしていいのかどうかは、私の方で決めさせてもらいたいのである。

下書き的なもの


 
 

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