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風呂屋ネコ、小政。

以前住んでいた街の、とある古い銭湯のお話です。
そこには一匹のネコがいました。
小太りのサバ白(オス・年齢不詳)で、名前は小政(こまさ)。
まるで江戸っ子の様ないきな名前が私は好きでした。

彼の定位置は玄関ホールの足拭きマットの上。
外からも見える位置なので、銭湯を利用しない人でも彼の事を知っていました。

彼の身体の模様と足拭きマットがそっくりなものですから、私が初めてその銭湯に行った時に危うく彼を踏みそうになった事が彼との最初の出会いでした。
番頭さんに聞くと、実際に踏まれた事もあるそうです。そりゃそうでしょう、砂地の上のカレイさながらの擬態っぷりでしたから。

それにしても、私は別にネコは嫌いではないですけれども、風呂に入って全身キレイにして、最後にネコの毛を足裏に付けて帰るってどうなのよと思いますが、彼を見ていると思わずふふっ🤭と許せてしまうのでした。

そんな小政がふと、マットの上から姿を消す時がありまして、どこに行ったかと思えば、誰かがマッサージ機を利用している時はその人の膝の上にいました。人の温もりと振動とが至福だったのでしょう。私も乗られた事がありますが、当然毛だらけになりまた入り直しです。

銭湯という商売が回転を上げたいのか、滞在時間を長引かせたいのかどちらかが良いのかは分かりませんが、間違いなくその銭湯の滞在時間は、伸び伸びでした。

いま、その銭湯のあった場所にはマンションが建っている様です。
小政がどこへ行ったのか、今も元気でいるのか、気になる所です。




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