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4.笑わない花嫁

[これは全て私の過去の出来事です。]


[婚約破棄の申し出] 
を、破棄してから、

私は自分を責めるようになっていた。

「彼に何をされたというの?」

「自分の我儘で彼にあんな悲しい思いをさせて、
何様のつもり?」

自分の中の自分が責め立てる。

そして、

彼以上に結婚にふさわしい男性なんて、きっともう見つからない!

頑張って幸せにならなくちゃ!!

と、

モヤモヤを感じないよう必死に感情の上書きをしていった。





「23年間お世話になりました」

結婚式前夜、

父母に挨拶をし、自分の部屋に戻った。


明日から誰も使うことのないこの部屋にはベッド以外の物はもう何もない。

「空っぽになっちゃったな・・・」


そんなことを思いながら眠りについた。



そしてついに当日の朝が来た。


私の心を代弁するかのように、

どしゃ降りの雨の日だった。

結婚式は、彼が生まれ育った小さな田舎町で行われた。


田舎の結婚式は盛大で、披露宴は大勢の参列者で賑わった。

そのほとんどは新郎側の参列者だ。


幸せにならなくちゃ


幸せにならなくちゃ

あれから毎日呪文のように唱えていた。

当日も、

もう戻る事はできない!

と、

焦る気持ちを打ち消すように、


幸せにならなくちゃ


幸せにならなくちゃ



幸せにならなくちゃ!


と、
何度も何度も唱えた。

そして、

披露宴会場で大勢の参列者を眺めながら、自分が主役のはずなのに、どこか他人ごとのような感じがしていた。

と言うか、この時の記憶がほとんど無い。

緊張と不安と大勢の参列者に酔いそうになりながら、必死にこの時間が過ぎる事だけを考えていた。


親友に後から聞いた話だが、この日の私は、全く笑っていないように見えたそうだ。

彼女には私の心の奥が見えていたのかもしれない。






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