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13.お義母さんのかぼちゃのスープ

〔これは全て私の過去の出来事です〕

「次の検査の結果次第では来週の頭には退院出来ますよ」

担当医の予告通り、私は(あっさり)退院する事ができた。

普通なら喜ばしい事なのだが、
家を空ける正式な理由が無くなってしまった私には、苦痛でしかない。


そして退院の日はやってきた。

家に戻ると、義母が私の大好きなかぼちゃのスープを作って待っていてくれた。

「おかえり。大変だったね。」

それ以上は何も言わず、ただ私の顔を見て優しく微笑んだ。

入院中私は、家を出る事を真剣に考えていた。


しかし、義母の優しい笑顔で、その考えは一掃された。

この人を悲しませてはいけない!

私の中の奇妙な責任感が顔を出した。



退院後ダブルワークを辞めざるを得なくなった私は、スピリチュアルな世界にのめり込んでいった。

家にいる時間のほとんどは、何かに取り憑かれたようにスピリチュアル系のyoutubeを見て過ごした。

なけなしのお金で高額鑑定も受けた。運気上昇のグッズも買い集めた。


しかし肝心の夫との関係は修復されるどころか、どんどん悪化していった。
会話も殆ど無くなり
夫と話す事が怖くなっていた。

また傷つく事を言われるのではないかと毎日不安でビクビクして過ごした。




やがて身体に異変が現れ始める。

最初は味覚障害だった。
酸味以外の味覚が鈍化した。

そして、突発性難聴、顔面麻痺と続いた。
(顔面麻痺の後遺症は5年以上経った現在も残っている。)

それでもメインの仕事は続けていた。

娘の卒業までは、あと2年あるし、仕事を辞めるわけにはいかなかった。



出勤日は朝からソワソワした。


自営業の夫は、一日中家に居るので、一刻も早くこの場所から離れたかった。

そして誰よりも早く職場に到着した。

仕事中だけが、唯一安心できる時間だったのだ。

しかし、幸せな時間は長くは続かない。

勤務時間が終わりに近づくと毎回きりきりと胃が痛み出す。


帰りたくない。

帰りたくない。

帰りたくない。


勤務を終え、重い足取りで車に乗り込み、車を発進させる。

そして家を通り過ぎ、狭い町内を何周もして、やっとのことで家路につく日々が続いた。

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