「いい汚部屋」と「悪い汚部屋」
昨日拝読したnote。この番組は残念なことに知らなくて、すごく見てみたかったなぁ~。
ちょうど昨日の現場で感じていたこととぴったし同じ内容だったので、今日は「いい汚部屋」と「悪い汚部屋」について、持論を少し書いてみたいなと思います。
「汚部屋で何が悪いのか!?」というのも片付けの現場でよく聞くセリフです。
というか身内からもしょっちゅう言われます。主に私の父親とか父親とか父親とか…(苦笑)「むしろこんなにモノの少ないお前の家の方が貧相で可哀想」とかも言われます。
「どういう状態だったら汚部屋というか?」の定義っておそらくただ一つで、
「その状態だと困る人がいる」という、それだけだと思うんですよね。
そしてその「困る人」というのは、他人だけではなく自分自身も含みます。
■汚部屋とは「あふれたモノのせいで誰かが困っている状態」のこと
「困る人」というのは、つまり「不利益を被る人」「何かの被害を受ける人」。
身近な例で言うと。
私の父親はこたつの回りに自分の荷物を円形に並べて置いているような人。曰く「手に届くところに何でもあって便利」とのこと。それで暮らしにくさも覚えていないのだし、何を言われる筋合いもない、と。
そこに「見た目が悪い」とか「掃除が行き届かない」などと他人が言うのはナンセンスで、価値観の押し付け合いでしかない。
その人がいいと言えばそれはOKなのです。片付けにおいて、これは絶対的真理であり、決して勘違いしてはならないことなのです。
その人の価値観は尊重すべきだし、自分の価値観は押し付けるものではない。だからいくらガラクタに見えても配偶者や子供のモノを勝手に捨ててはいけない。
…が!
父は弟家族と同居しており、そのこたつというのは家族共有の場所なのです。散らかされると、生まれたばかりの孫が口に入れて誤飲の可能性もある。片付いてないばかりに「困っている人」が確実に存在する。だから、片付けないといけません。
では、家族全員グータラで、どこが散らかっていても気にしなーい! という場合は?
もちろんそれでOKなのです。家族全員が許容しているのであれば、他人がとやかくいうコトじゃない。
でも、そのゴミが公道にまではみ出してご近所さんの通行を妨げるようになったら? これはもうNGですよね。
また、ゴミの種類にもよると思います。生ごみや有機系のごみは、匂いや腐敗を催し、周囲に飛散するため、おそらくそこに住んでいる人でさえ嫌になるはず。こうなるとNG。
■問題なのは「本人が不利益を被っていることに気付いていないケース」
最近問題になっているのは、
本人が気付かないところで不利益を被っている可能性もある、ということ。
たとえば渦高く積まれた荷物が落下してきて、時として生死にかかわる問題にも。これは防災の観点から片づけた方がいい、ということになります。
というと、「俺はいつ死んだって構わないんだから」とかいう人が出てくるんですが。ゴミ屋敷住人の多くがセルフネグレクトと呼ばれる状態にあることは、すでに社会問題にもなっているので知られていることですよね。
■一方、「素敵な汚部屋」とはどんなものか
と、こうやって書いていくと「やっぱり汚部屋はダメなんだな」という結論になりそうですが、昨日の現場で「まぁなんて素敵な汚部屋♡」と思えたことがあったので、それについて書いてみたいと思うのです。
何十年と書道を嗜んでいらっしゃるお客様のお家。
2階の一角が書道コーナーで、その部屋だけは床中に書き損じの書がたくさん散らばっています。漂ってくるのは墨の香り。
おそらく興味のない人にとっては「ただの汚部屋」でしょう。
ただ、偶然私も書道を子供の頃にやっていて、墨の匂いに馴染みがあり、更には素人目にも素晴らしい書の数々であったことが一見して分かりました。散らばった書は何度も鍛錬を繰り返した証であり、お客様のたゆまぬ努力でもある。その中から「これぞ」という一作を練り上げていって、それを完遂した後の残骸でした。
先にも述べた通り、他人から見ればただの汚部屋です。壁には墨が飛び散っているし床は半紙の山で足の踏み場もありません。
ですが、ここで「汚部屋の定義」に則って考えると、
▶お客様はお一人暮らしなので、他の誰にも迷惑をかけていない。
▶汚しているのは2階の一角だけで、生活スペースに支障はない。
▶有機系のゴミもなく、匂いも発していない。
▶仕上がった作品は他ときちんと区別されており、しかも額装までする丁寧さ。
▶むしろ鍛錬・修行の場という感じで、散らかっているのにいっそ清々しささえ感じる。
ここでポイントなのは、「お客様自身がこの部屋をどう思っているか」なのですが。
お客様は私を招き入れて「こんなに散らかっててごめんなさいね」「書いてる時は夢中になってるけれど、後片付けをするには体力的に辛いものがある(結構なご高齢)」とのことで、ご自分できちんと「散らかっている」ことを認識していらっしゃることがわかります。
そして、それができないから私を依頼してこられたと言うわけで、一緒にきれいに片付けて「次の創作活動に向かう準備もなさった」というわけ。
色んな汚部屋を片付けていますが、昨日の現場はなんだか「ずっとここに居たいなぁ」と思える汚部屋でした。
■自分のせいではなく汚部屋になってしまうケースも
汚部屋になる理由の一つに「高齢による体力の低下」「仕事や育児の忙しさによる時間不足」もあります。上述のお客様も膝が痛くて床に落とした半紙を拾えないというのが散らかりの原因だったりします。
もちろん自分で片づけられるのが一番いいのですが、「自分ではどうしようもない原因」によることもあります。
しかし部屋が散らかっていると人を呼んで片づけてもらうにも勇気が要ります。こうなる前に、気軽に他人に甘えられる関係を作っておく方がいい。
まして、片付けの専門業者がたくさんいるのが今の社会。気楽に利用できるようになるといいのですが。
■本日のまとめ
▶汚部屋にも「いい汚部屋」と「悪い汚部屋」の2種類ある
▶汚部屋の定義は「その状態だと(自分を含めた)誰かが困るかどうか」
▶自分のせいでなく汚部屋になる可能性は充分にあり、他人に頼るのも手です
以下、この話の続きです。良ければお付き合いください。
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