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片付けられず今も後悔が残る現場のこと

以前、大手で勤めていた時のこと。
異様に衣類の多い家にお伺いしていたことがあります。

■異様なほどに衣類が多い家

そのお客様、地元では有名なタワーマンションにお住まいで、週に2度、家事代行にお伺いしていたようなお宅です。ご夫婦ともに別個の会社経営をなさっていらっしゃいました。
そのご夫婦にはお子さんがいらっしゃいませんでした。ご病気でご主人様を亡くし、奥様は数年の間、遺品整理などもせずに思い出とともに暮らしていらっしゃったのです。

しかし、唐突に「主人のモノが多すぎて生活スペースを圧迫している」と仰り始めました。
たしかに、週に2度もお伺いしているのに全然「きれいになった」という手応えがない。つまり、掃除ではなく「片付け」が必要なお家だったのです。

そしてついに、クローゼット代わりに使っているお部屋を拝見しました。
(※それまでその部屋は「開かずの間」で、スタッフは入室禁止だったのです)

初めて入るその部屋で、驚いたのは、洋服の多さ。
おそらく1000着くらいはあったのではないかと。
洋服の管理のためだけに部屋が2つも潰されていて、さすがにこれでは生活できない、だから「主人の遺品を片付けてスッキリ暮らしたい」とご要望だったのです。

…が!

出てくる洋服はすべて女性もの
つまり、ご主人様の洋服などほとんどなくて、「多すぎて困っている」のは奥様ご自身の服なんですね。

ですが、奥様は頑なに「主人のモノが多くて」「主人の服を処分すれば家が快適になる」と仰る。

考えてみれば、数年前に亡くなっているご主人様の持ち物が増えるはずもなく
増え続けているのは奥様の洋服だけなんですよね…。

他家の中に踏み込んで仕事をするお片付け業の皆さんは、特に同じことを感じていると思います。
自分のモノがこんなにもあふれているというのに、それには目もくれず、他人のモノが邪魔だと認識してしまう。

お子さんもいないこの奥様が所有している1000着の洋服。毎日違う洋服を着たとしても365着しか必要ないのに、それでも毎週お伺いするたびに洋服が増えているのです。
なぜなら、(1000着もあるのに)モノが多すぎてどこに何があるのか分からない、だから必要なものはその都度買うしかないのです。靴下なんて、段ボールに3箱分も新品があるのに、いつも洗濯物ハンガーにかかっている靴下はボロボロ、そして毎週ダイソーで安い靴下を買ってきていらっしゃる。

あなたに足は何本あるんだ? と聞きたくなりました…。

■残念ながら片付けられなかった(後悔が今も残っています)

この案件は今も私の中に後悔として残っています。
私個人で仕事に当たっていたのなら良かったのですが、大手に勤めていた時でしたので、会社の方針もあり、お客様に「ご提案する」という立場になかったのです。
会社からは「あくまでもお客様の指示通りに従うように!」「差し出がましくお客様にアドバイスなどしてはならない」と言われていたのです…。
ましてこちらのお宅は留守宅で、作業時にお客様はご不在。「今日はこうしてほしい」という指示が紙に書かれて置いてあるので、その通りに作業をするだけなのです。

結果。

「安物の3段ボックスを10個買ってきているので、それを組み立てて洋服はそこに収納するように」とお客様から指示をいただき、その通りに作業。
…もちろん、3段ボックスの分だけ生活スペースが減ることになりますし、1000着もある衣類がたった10個のボックスの中に収まるはずもなく…。

その旨をお客様にお伝えすると、
「もっと広い場所に引っ越すことにしましたので、引っ越し作業をしてください」と…。
その日からはひたすらダンボールに衣類を詰め込む仕事になりました。

引っ越し先はさらに広いタワーマンションでしたが、そこでも2部屋を潰して衣類を収納。
「ここのマンション、家賃が2倍になって、月額◎◎万円なのよ~」とお聞きした時には、衣類を全部捨ててしまえば家賃半分以下で過ごせるのに…と頭を抱えたくなりました。
しかも、当然のことながら、それらの衣類が着られているような形跡もなく、ただただクローゼット代わりの部屋で押し込められているだけ。
そして奥様はいつもボロボロのお洋服を着ていらっしゃる…。

「片付ける」ということがどういうコトか分からないと、このように保管料ばかりかかっていくんですよね。それでいて生活が豊かになっているようにも見えない。
最終的には、その広いタワーマンションもさらに(衣類以外の)別のモノでも侵食されていき、大変なことになっていました。

お客様も「片付け」を間違えていらっしゃったし、弊社も「片付け」を知らなかったのです。だからこそ私はこの会社から独立を決心したのですが…。

今も悔やまれる現場です。
時おりそのタワーマンション(めっちゃ目を引く大きさなのです)を見ては「あのお客様、どうしてるかなぁ」と思い出してしまいます。

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