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【読書感想】「職員室のモノ、1t捨てたら残業へりました!」

存じ上げなかったため急いでネットで購入。現職の整理収納アドバイザーさんが、職場である学校から不要なものを捨てていく経過と、その結果をご報告くださっています。

冒頭、とても印象的な文章が書かれています。

職員室ではいつまでも昭和のモノを使いまわしているし、変な校則もそのまま残っている。業務量が多い多いと言いつつもなかなか減らそうとしない。(中略)この問題についてずーっと考えていたんですけど、この前分かったんです。

「減らしたことがないから」

これだけです。

これにつきる…!

同じように学校の改革をしたという例では、「学校の『当り前』をやめた」という本も愛読していますが

こちらが、工藤校長の素晴らしいリーダーシップ(…だと勘違いされがちだけれど、職員みなさんが団結して頑張っているというのはとても分かりやすく記されています)だとすれば、
「職員室のモノ~」の方は、丸山先生というひとりの教師が下から学校全体を動かした話、と取れなくもない、気がします。(※こちらももちろん丸山先生一人の頑張りではなく全職員が協力してくださったことは明記されてます)

どちらも共通しているのは、別に「一人だけで頑張った」わけではなく、「理解を得るために色んな所に働きかけ、対話を重ねた結果、大きな成果が出せた」というところなのですが、
「当たり前をやめた」の方では、校長先生という立場の方が書かれているだけで「偉そう」とか「受け付けない」、とかいう人も多くいらっしゃるようだったので(レビューを読んでいるとそんな的外れなご意見もチラホラ…)。

もしそういう方がいらっしゃって、なおかつ学校を改革したいというのであれば、こちらの整理の本などお読みになってはいかがでしょうか。

■「捨てる」ことへの拒否反応の正体

「捨てたことがない」という冒頭の文章を読んで考えさせられるのは、日本人の事なかれ主義だとか、「捨ててしまったせいで何かあった時に責任を取らされるのではないか」という強迫観念みたいなものが刷り込まれているんだろうな、ということ。その結果、「臭いものには蓋をする」の文化が生まれ、「多少の苦しさは自分だけが我慢すればいい」となっている。でも実はみんな口に出さないだけで相当苦しんでいる。結果、「みんな苦しんでるのに誰も口に出さない」今の日本が出来上がったんだろうな、と。
たった一つの石ころが全体に及ぼす影響なんか考えずに、今日もみんな口に出さずに「我慢我慢」と念じながら日々を送る。全体がどれほどの不利益を被っているか、真面目に考えようとしない。
こちらの本で描かれている学校には、昭和時代の謎の物体が多数あったのだそう。しかも使われてもいなかった。それなのに、誰もそれを捨てようとはしなかったのだそう。無駄ですよね。
ただ…
他人のそういう素振りには簡単にヤジを飛ばしますが、では自分の職場や生活で無駄なモノはないのか? と振り返ると、自分自身に対しては甘くなっていることにも気づくでしょう。
「私にはそんな暇はないし」「これはいつか必要になるかもしれないから…」などなど。結局のところ、言い訳ばかりで誰も行動を起こそうとはしないものなのです。
だからこそ、他人の無駄なモノのために行動しようとしたこの先生はすごいな、と思います。

■「捨てる」ことで生まれるメリット

この本では「捨てる」ことでどのようなメリットが生じるかを細かに書いてくれています。
例えば、
「動線を塞ぐ形で置かれていた棚を捨てる」
→「通りやすくなる」
→「そこに本来必要だと思われていた机を設置することができる」
→「みんなが作業がしやすくなる」
→「快適になる」
→「全員の作業効率が上がる」
→「残業が減る」

言われてみればその通り、という程度のことなのですが、最初の「棚を捨てる(移動する)」ということをしなかったばかりに、全員に不都合が生じていたにもかかわらず、誰もその事実と向き合おうとしなかった。
こうした「捨てることで生まれるメリット」を順を追って説明してくれてるので、ぜひ職場の環境改善とか考えられている方々はご一読を。

■片付けの手法としては普通ですが

こちらは目新しい片付け方法を学べるという本ではないと思います。
ということは逆に、「片付けの方法など、普遍的なたったひとつしかない」ということ。それはモノと向き合うこと。
片付けというのはなんとも理解されがたい仕事のようで、「ただの捨てたがり」だと誤解されることもしばしば。ですが、モノと向き合うことで「なぜその物体がここにあるのか」「なぜ私はこれを所有していたのか」と深く掘り下げることで、判断力や決断力も養われます。

ですので、「読んだ瞬間に魔法のように片付く」というわけではない。――というのは全ての片付けの本に共通することですけどね。

職場という、他の人との対話が必要な環境で、不要なモノを処分していくための心づもりが学べる本とでも言いましょうか。
ましてそれが効率主義の民間企業ならまだしも、学校という(偏見かもしれませんが)古い価値観が蔓延っている場所では、周囲の人にどうやって「片付け」に共感してもらうか、が何より大事。

「上司や誰かに言われたから仕方なく片付ける」という程度ではこの境地には達しませんので、気の持ちようだけは変えていただきたいし、そこを間違ってお読みになると「期待外れ」とかいう的外れな感想を抱かれると思います。

何度も言いますが、
自宅の自分の部屋のように、何を捨てたって誰からも文句を言われない環境なら、片づけは簡単なんです。
職場という場で、周囲の人に共感と協力をしてもらって片づけを一緒に行うというのは、かなりの高度なテクニック。その点でこの本は読むに値する本となっています。ぜひぜひ、自宅待機を余儀なくされ、家中の片付けに悩んでいる人がいたら、いったん立ち止まって深呼吸して、この本をどうぞ。

あと、その過程を画像入りで詳しく書いてくれていたのも分かりやすかったですね。文字だけだと「こんなにスッキリしました!」といわれてもなかなか伝わらないものですが、画像で見ると一目瞭然。

※ステマではありませんw

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