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カープ選手のFA流出を広島県の人口流出問題と一緒に考えてみた

魅力のない土地だとは考えた事もなかった。

広島県は住み着く人よりも出て行く人が多く、流出数は2023年、1万1409人と全国でぶっちぎりのワースト1位。
しかも20代が半数以上を占め、重く見た県は対策プロジェクトチームを作ったそうだ。
これは広島を地元とする球団、広島東洋カープも人ごとではない。
選手も広島県民の1人である。

カープはこれまでにFA移籍で10人を流出させている。
これまでに20人を流出させた埼玉西武ライオンズよりかはマシだが、12球団でワースト3位。現在、海外に行く選手も多く転入が多いのはジャイアンツ、阪神、ソフトバンクの3球団しかないが、それらの球団の地元は図らずも全国で人が増えている東京都、大阪府、福岡県である(ライオンズだけは埼玉県と一致しておらず、他に原因がありそうだ‥)。

昨年は挑戦の門出とは言え西川龍馬が旅立ったばかり、床田宏樹、島内颯太郎、坂倉省吾がこのまま行くと3年以内に権利取得を控えている。
居住地区、広島に理由があるとすれば早期に解決しなければならない。
カープは市民球団として生まれ、広島のソウルと言っても過言ではない。いにしえの時代には市民の「樽募金」で支えられて来た、つまり市民も出資しているのだ。
運命共同体、広島とカープのFA移籍による流出問題を、広島出身のカープファンが考えてみようと思う。

どうして広島を出て行くか。
広島のローカル番組で若者が口にしていたのが、「娯楽が少ない」だ。
広島県は中四国地方では一番の規模を誇り広島市を中心に発展している。
しかし、USJやディズニーランドのようなテーマパークはない。そこは仕方がないが、商業施設も百貨店から大型ショッピングモール、アウトレットまでとりあえずはある。だが、野球場やサッカースタジアム、アリーナはあっても使用制限があり、大きなライブは広島を素通り、大阪から飛ばして福岡に行ってしまう。
何でも「ひとつ」はあるので、それなりに楽しめる。しかし、大都市のように新宿、渋谷、銀座かの選択肢はなく、広島市の「一択」しかない。

カープの選手にとって、一択は致命的である。
有名人、特に広島ではカープ選手の人気は絶大で、レギュラークラスならどこに行ってもファンに見つかってしまう。
筆者が若い頃の話だが、旧広島市民球場に行けば、「来とったんじゃね(来ていたんだね)?」と近所のおばさんと会い、本通り(広島で一番の商店街)でデートをしようものなら、翌日に学校中に知れ渡っていた。
カープの選手ともなると想像を絶する。
何年か前にカープを出てジャイアンツに行った選手の記事で読んだ事がある。「子供を公園で遊ばせる事ができない」と言っていたそうだが、出て行ったことは別として、気持ちはよく解る。

それならば開発をすれば良いと思うだろう。
しかし、広島県は8割が山で海沿いの少ない平地「広島市」に、人口の4割以上が住んでいる。県庁所在地であるが前を瀬戸内海、背は山々に囲まれ市街地を広げること難しい。山を切り開こうにも、地盤が弱く開発しづらいのもある。
限られた土地に新しい施設を作るには、現在あるモノを壊すことになるが、慎重かつ時間がとてつまなくかかる。マツダスタジアムは屋根のあるなしを含め、ずったもんだで15年もの時間を費やした。今年2月に開業したサッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」も20年近くと、赤子が成人するレベルだ。
土地が少ないと言う事は企業誘致もままならならず職の拡大も難しい。そもそもマイホームを建てる場所もない。
生活するのに土地的限界があるのである。

これはカープの財政事情にも似ている。市民球団が由来の球団で特定の企業から支援を受けていないため、球団収入は球場観戦、テレビの版権、グッズ販売で、球場のキャパは広げられないので増収に限界がある。
地元密着はファンの拡大の限界にもつながっている。
かつての暗黒時代、年俸が上がってしまった有力選手はFA移籍で出すしかなかった。

新井貴浩現監督の号泣FA会見を覚えているだろうか。
「痺れるような熱い場面で野球がしたい」。
そんなカッコいい事を言っていたが、年俸の事情もあったと言われている。
2007年、カープ選手は63人で年俸の総額はおおよそ15億7690万円(選手会調査)。そのうちFAで海外に移籍した黒田博樹現球団アドバイザーが3億、新井監督が1億2300万で約4分の1が彼らの給料だった。
当時は老朽化した旧市民球場、勝てない暗黒時代で収益は頭打ち、出て行くことが球団、後輩のためになる背景があった。

娯楽がなく、土地が狭く職(金銭)がない。
追い打ちをかけるのが、「瀬戸内気質」だ。
大正から昭和にかけて、広島は移民が多かった。海外移住者の広島出身者は11万人で全国1位。隣の山口県も3位で6万人だ。北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」がある北広島市は広島からの移民が多い故の地名である。

瀬戸内海の温和な気候、穏やかな海は人を「陽気で楽天的」にさせ、夢を抱かせやすいと言うのだ。
カープの若手が過ごす大野寮と練習場は宮島の向かいで、瀬戸内海に面している。毎日、美しい海に浮かぶ島々を眺め、暖かな気候で練習、瀬戸内の恵みを食べて過ごした、黒田博樹、前田健太、鈴木誠也が海外を目指したのは自然の流れであろう。
2029年末予定で、大野寮と練習場は500メートル山側、「ちゅーピープール」の跡地に移転予定なので、海から少し離れるのは防災の面も加えて効果があると期待している。

夢を持って出ていく事は素晴らしい事に思えて来た。
ならば考え方を変え、どうやったら広島に来てくれるか、を考えたい。
これまでにない大物の移籍「秋山翔吾」が一番参考になる。
秋山の広島入りの理由のひとつが同じ1988年生まれ、侍ジャパンで一緒だったの會澤翼の存在だった。「野球観があうアツ(會澤)がいたから」と様々な媒体で語っているが、同じく菊池涼介の存在も大きい。
彼らに共通しているのが、會澤は茨城、菊池は東京と秋山の出身地神奈川と同じく関東生まれなのである。これは関東都県人会が働いたと言っても過言ではない。積極的にロビー活動を行い、仲間を呼んでくれたのだ。
在広島の方々に各県人会の結び付きを強くして頂き、積極的に移民、移籍をオススメして頂くのが一番効果は絶大だ。

マツダスタジアムが真っ赤に染まるのを見た事がある方も多いだろう。
そんな中で外野のごく一部、狭く閉じ込められた場所しか与えられないビジター席を、テレビの向こうの他県民はどう感じているだろう。広島が排他的に見えるに違いない。

ビジター席を拡大、青く染まる3塁側を他県民に見せる事で大きなアピールとなるのではないだろうか。
地元のトモダチを呼べますプロジェクトだ。
冒頭にも述べたが、カープは広島のソウル、だからこそカープから歩み寄れば移住、移籍も増えるにちがいない。
出て行った広島人に対してはどうするか。
新井監督が「戻って来んさい広島」のイメージキャラクターに就任すれば、イチコロだろう。
「きっかけ」だけがない人も沢山いる。

あれやこれや言ったが、結局は「カープ優勝」だ。
2018年の優勝時に広島市に与えた経済効果は356億円。
日本一になったら更に球場動員は増え、グッズも飛ぶ売れもっと跳ね上がるだろう。カンフル剤だが、経済が動き雇用も生まれる。

ただ、一番難しい。



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