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Labの男45

 Labの男45

玄白は考える。
それは随分と昔から疑問に思っていた事だ。
まぁ〜何かしら思っているのは
絶えずなんだけど…

胡散臭く言えばアップデート
肉体は絶えず代謝を繰り返し更新されている。
身体の部品が知らず知らずに入れ代わり
勝手にメンテナンスされている。
生命力はロウソクと同じで
生きることとは燃えることで
熱をうむことが出来なくなると死が訪れる。
元から与えられた固形燃料を燃焼し
主軸のエネルギーとして生きている。
それとは別に薪をくべるのが食べる行為。
体力があるタイプ、頭が回るタイプ
と様々だが
事の他、生命力ってのは個体差が著しい。
DNAにあらかじめ刻まれた
命のロウソクにあたるモノがあり
それをやりくりして生命を維持している。
生命を燃やせば
そのロウソクはもちろん短くなる。
ヒトにより長さが異なり
長生きかそうでないかはすでに決定されていて
心臓の拍動回数の限界のように
あらかじめ細胞が入れ替われる回数が
決まっていると言われている。
細胞はダビングのダビングを繰り返し
解像度がどんどん荒くなって
バグっていく。
あとから補うのが食べるというエネルギー補充。
脳だけは別モノで生命のロウソクと同じで
一方通行に死んでいくだけで消費される。
一説には使い切れるには至っていないそうだ。

そこで疑問が生まれる。
どこからが身体でどこからが自分でないか?
代謝を繰り返す過程で髪が伸びたり爪が伸びたり
皮膚下から迫り上がって新しい肌が生まれ変わる
ように臓器も代謝を繰り返している。
そこで、抜け落ちた髪は、切った爪、皮膚から
こぼれ落ちた垢は、切り離された腕は
もう自分ではないのか?
破片のパーツが本体よりも小さければ
それは身体から離れた時点で
欠片は物質扱いとなる印象だ。
例えば、プロ野球チームに言い換えると
絶えずチームメイトは入れ代わる。
なんだったらチームの頭とされる監督でさえ
パフォーマンスが悪ければ代謝させられる。
恐らくファンはチームメイトが総入れ替えしても
ファンを続けるだろう。
果たして総入れ替えしても
それは元の同じチームと言えるのだろうか?
それを補うと思っているのがスピリット
意識なのか魂なのか精神なのかの見えない存在だ。
チームオーナーが存在する限り
チームスピリットは存続している事になっている。
チームメイトたちが臓器としての器
統率をとるブレーンの監督
魂としてのオーナー。
じゃぁ〜話は肉体に戻って
魂の場所はどこよってなる。心と精神の在処は?

ナゼにそんな事を今、思うのかというと…


クリスタルマンを8階の最重要Laboまで運び終えて
ユンボロボを操縦して戻ってくるマコと玄白
下の階へ降りようとBIGエレベーターを前に、
待っていると
一緒についてくるツリーマンのウッディー
 ドィン ドィン
「あれ?ウッディーはLaboに行かなくていいの?」

  「oh!そうなんですけど、どうもボクはもう
   お払い箱のバコみたいなんです」

マイッチing  マコ
 「なんでよ!ウッディーが1番クリスタルマンの
  交渉人じゃなかったの?仲良かったでしょ?」

  「どうもボクは上層部には都合が悪い
   みたいなんダスよ。
   クリスタルマンの良き理解者では
   あるんダスですが、偉いさんには
   あまり都合が良くないみたいなんダス」

メガネをロボアームで上げる玄白
 「なるほどね〜。クリスタルマンをヒト扱いして
  欲しくないんでしょうね。
  あくまで実験材料として
  ウッディーには程よくクリスタルマンを
  丸め込んで扱いやすく
  してほしかったんだろうな。
  猛獣使いとしてね。
  で、もしかして、ウッディー
  うちのLabの職員になっちゃったの?」

  「どうも明智Labの研究員預かりに
   なるみたいなんダスだなぁ。困りました。
   それで、ボク以外にも
   もう1人研究員が増えますダスヨ」

マイチingマコ
 「えっ〜ウッディー!ウチ預かりになるの?
  なんか悪いことしたの?
  アタシ的には超〜歓迎なんだけどさぁ〜
  こんな吹き溜まりの明智Laboに
  くる理由があるぅ?
  私見立てでも相当出来る研究員だよ!」

マコちゃんをロボアームで肩を叩き玄白
 「結構込み入った話になりそうだから
  エレベーターに乗ってからでいいんじゃない?
  ここじゃ〜話しづらい事もあるだろうからね」

 プシュー ゴン グィーン グィーン

 「おソレ入りまァ〜すゥ。それでもう1人は
  鉄の意志イワノフが来まァ〜すゥよ。
  彼もちょっと特殊なんダスけど」

 「うっそお!明智になんて言おうか?
  因縁がバリバリじゃん!どぉすっかねぇ?」

エレベーター内
3人は上の点滅する数字を眺めながら話してる。

「マコ的には、大丈夫だと思うけどなぁ〜」

 「吹っ切れてるのはフッ切れてるだろうけど
  直接手を下した訳ではないだろうけど
  イワノフもその要因だからね。
  感情が揺らながない方がおかしいよ。
  明智は、ああ見えて繊細なんだよ」

エレベーターは、地下に到着。
 プシュー ガッコン プシュー ガッチャンコ

エレベーターのドアが開く前から
 ミーッ ミーッ ミーッ ミーッ
パトランプが点灯、音が鳴り響いている。
玄白が、周りを見渡している。
すでに回ってるオレンジのランプに
気がつくとマコ
「誰かいるみたいね。
 もしかしてイワノフかしら?」

 「物騒な展開じゃなけりゃ〜いいんだけどね」

「ダァ〜いじょ〜ぶデェ〜す。この波長ォ〜は
 イワノフだと思いますだァ」

 「でも、ちょっとボクの知ってる
  ヒトの波長とは、違うんだけどな」

3人は先に立っている人影に向かって歩いてく。
 ドィン ドィン ドィン
確かにヒトらしきモノが立っているには
立っている。しかし違和感がある。
メカの壁を背に
しっかりとしたたたずまいのスーツ姿、
革靴を履き、ワイシャツにネクタイを
しているにはしているが襟から上
あるはずの頭が無い。

 「うわぁ〜っ、やだ!何コレ!」

ユンボロボから飛び降りて
ウッディーの背後に隠れるマコ。

 「なんなのよ!生きてるのコレ!」

ウッディーの腰から横に顔を出し
恐る恐る、何度眺めても首が無い胴体。

察しがついた指パッチン玄白
 「そっか!今はイワノフの頭単体が
  クリスタルマンの対話役をやってるのかい?
  こいつはひどいことになってるね」

言っている事とはうらはら、
玄白は半笑いになっている表情に
気づいていない。

頭の枝葉をボリボリかきむしりウッディー
 「そうなんダスヨ〜。ホルマリン漬けみたいな
  入れ物に頭だけのイワノフが
  クリスタル中継ポイントになってま〜すゥ」

「頭の彼には意識はあるの?」

 「時折り記憶の混濁は有り〜まぁすゥけれどもぉ
  今では比較的エビス薬品には協力的ダスよ」

ムネを押さえてマコ
「我ながら恐ろしくなってきたわエビス薬品!
 しがむだけしがんで
 味が無くなったら研究材料扱いね!
 明日は我が身よねぇ〜玄白ぅ」

 「で、ウッディー!身体の方は自発行動は
  出来るの?意思があるのかどぉ?」

「頭とは繋がっているみたいダスけど
 頭と身体の意思は別みたいですダスよ。
 各自、分かれて行動してる感じダスなぁ」

 「っていうことはしゃべれるようにしたら
  話せるのかな?少なくとも
  意思疎通は出来そうだね」

「どういう仕組みかは分からねえダスけど
 独立した意思がどっちにも
 あるみたいでごぜぇますダァ」

 「なるほどね。
  頭と体が離れても鉄の意志は健在ってわけね。
  しばらくはクリスタルマンは帰って来なさそう
  だからウッディーとカラダだけのイワノフ
  研究になりそうだね」

 「でも、ウッディーはこの場所からでも
  クリスタルマンと対話出来るんでしょ?」

「どこからでもアクセスできますよ〜ダス」

 「アレだろうね。上層部の命令をきく
  コントロール下の
  クリスタルマンに調整したいんだろうね。
  あの手この手でイワノフヘッドも使って
  なんとかしようって根端だろうね」

立ち尽くしているイワノフを何とも言えない
表情で見るマコ
 「アタシ気味悪いから頭作っていいかしら?
  ちゃんと喋れるようにしてさ」

「助かるよマコちゃん
 意外とマコちゃんって人道的なんだね。
 もうちょっとはじけた人格なのかと
 思っていたよ」

 「いいカラダがあるんだから
  イケメンヘッドを付けたくなっただけよ」

「あぁ、そういうのだったら納得だね」

エグ味のある受け入れ方は本来のカタチ、
やはり女性は恐ろしい生命体だと実感する
玄白であった。

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