Laboの男31
Labの男31
明智のいい所はワル目立ちする部分を
魅力に変換できるところにある。
聡明な態度で場のトーンダウンを計ったり
過剰に演出、冗談まがいに戯れたり
はぐらかしたり
その場、その場でカタチを変える。
色男扱いを受ける事も逆に利用して
大衆に許してもらえるギリのラインを突いたり
他の追随を許さないほど
大きく格差を見せつけ有無を言わせないだとか
アドリブのクッション性の高さにある。
決して目立ちたいわけでもなく
本人の意図とは関係なく目についてしまうのは
仕方がないと思っている。
起こってしまった事態は、どおしようもなく
ヒトはできる事をただするのみだと思っている。
臨機応変にアクションし続けた経験の結果
明智に備わったモノである。
元からの素質の延長線上のポテンシャルではなく
トライandエラーを繰り返し
仕方なく流れ着いて習得したニンゲン性である。
そこにはこだわりがそれほどなく
効果が見込めるかどうか
収まりどころがしっくりくるか
上手く回す事を考えているだけである。
実のところ信念に基づいて行動しているよりかは
2手目をよく考えて行動に出る
先手必勝タイプではない。
反応者であり
美学重視の紛れもなくオスである。
スナックを早々に切り上げ
シルバーの異常に頑丈な作りの
バカでかいエレベーター内に独り
明智は下降していく。
ゴゴゴゴゴゴ ガシャーン ガチャコーン
地下最深部に到着したみたいだ。
ブーーン プシュー プシュー
分厚い扉が開くとパトランプが点灯する。
ミィーッ ミィーッ ミィーッ
誰かが侵入すると必ず鳴るようになっている。
オレンジの光が周りをなぞってゆくと共に
デンジャーな音声が鳴り響く。
まっすぐにクリスタルマンの方へ
コッコッコッコッ
薄明かりへと歩みを進めてゆく。
明智
「Laboの研究室にいなかったから
こっちかなって。みんな仕事熱心ね」
胡坐をかいた彫刻されたような人型
固い即身仏のような彼。
そこに苔が生えるようにクリスタルが輝いている。
クリスタルを耳かきのような棒で採掘していた
作業を止めて振り返る
玄白「盗聴音源を聴きに戻ると思ってたよ」
明智「あらっマコちゃんも居たのね。
乙女はもうこんな所に居ちゃ〜ダメな
時間帯じゃない?大丈夫なの?」
クリスタルマンの背後メカぎっしりの壁を
いじりつつタブレットを触れる手を止めて
マコ「全然思ってないでしょ〜もぉ〜」
明智「はい、これ」
ウイスキーボトルを手渡す。
ちょっと嬉しそうなマコ
「今からみんなで呑むの?」
明智「ちょいと引っかかる感じがして
スナックから拝借して来たんだけど
呑むのは、よした方がいいかもね」
マコ「え〜〜っなんで〜っ!
感謝の気持ちじゃないの?
労ってくれたんじゃ〜」
両ポケットからブラックの缶コーヒーを取り出し
「今日はコレで勘弁して」
それでもちょっと嬉しそうなマコ。
そのまま玄白にも手渡す明智
「ほいっ」
玄白「もしかしてナニか入ってる感じなの?」
「そうなのよ。やけにスナックの客連中が
この銘柄のウイスキーばっか呑んでたからね。
実際、味もちょっと違う気がしたからさ。
マグリットの女は、ちょいと怪しいね」
「玄白は、会話聴いてた?」
「マコちゃんの解説と共に聴いてたよ」
「絵が飾ってあるって言ってたでしょ。
そのくだり聴いてた?
あれ、ホンモノよ。どおなってるんだろうね。
目識【げんしき】がそう言うのよ。
とてつもなく、きな臭いね」
「なんで、ウイスキー調べてみてよ。
すぐ分かる?マコちゃん」
マコ「そういうのは専門外よ。
詳しいのは玄白の方じゃないの?
そういうとこよ。
明智は適当なんだからね」
明智「そっか、そっか。で、玄白どうよ?」
玄白「Laboに行ったらすぐよ。
そいじゃ〜みんな上に行こうか」
「ちょい待ち、玄白っ一服していかない?
マコちゃんもどう?」
玄白「来栖さんの灰皿取ってくるよ」
缶コーヒーをカポッ カポッと
明智は別のポッケから缶コーヒーを取り出し
カポッ
小さな灰皿に寄り添って煙を嗜む3人
「あれっマコちゃんタバコ吸うんだっけ?」
「別れた男の置き土産よ。
忘れてったタバコきっかけで吸うように」
「それは、フラれたっぽいエピソードだね。
野暮なことを聞くんじゃないよ玄白ぅ〜」
「なに言ってるんだよ明智が最初に聞いたんだよ
それにフラれたかどうか分かんないじゃないか
ねぇマコちゃん」
「フラれました〜よ」
「乙女心が,わからんヤロウだなぁ ねぇ〜」
「それはそうと、明智の細タバコ?何なのコレ?
前から気になってたんだけど〜さ〜
モテようとしてるの?しゃらくさいわ〜」
「バカっなんで分かんないんだ。
気品漂う香りがわかんないかねぇ」
「クセがある味よ」 「ボクは好きだけどなぁ」
「さすが玄白、違いの分かる男だね〜ぇ」
「マコちゃんは、ナニ吸ってるの?」
「えっ わかばよ」「激渋だよ〜マコちゃん!」
「じぃ〜さんしか吸ってないんじゃない?
そりゃ〜この細タバコだとニコチン タール
パンチが足りないだろ〜な」
「それまではゴールデンバット吸ってたんだけど
販売終了したのよね」
「それもシブ過ぎるぅ〜」
「それじゃ〜元彼はゴールデンバット吸ってた?
え〜っと、やっぱりじいさんだったの彼氏?」
「じいさんな訳ないじゃない!」
「じゃ〜いくつだったのよ?」
「え〜っと、50歳くらいだったのかな?
年齢教えてくれなかったの」
「限りなくじいさん寄り〜っ!
しかも訳アリっぽい〜っ!
えぇ〜ナニなに!元彼スパイなのスパイ?
マコちゃん
ストライクゾーン広すぎよ」
玄白
「万次郎にはシゲキが強すぎて引いてただろうな」
「じゃじゃ馬娘の暴れ馬ってのは何となく
知ってたけど。振り落とされるぜ。
クレイジーホースに気をつけな!」
だっはははははっ×2
「だっはははっじゃないわよ」
「こうなったら、タバコもう1本分くらい話
聞こうか?どうする?」
「……………
「あれは、風がなま暖かい日だったわ……」
「ちょっと!枕からシブ過ぎる導入だわ〜
興味そそるね〜」
突然の雨に降られて傘がないんで
シャッターの閉まった店先
独りボロテントの下で雨宿りしてたのよ。
すると彼が雨に濡れて入ってきたの。
「お嬢さんも大変ですね。
隣でタバコいいですか?」 「ええ」
と首を縦にふる今よりもウブなアタシ。
今でも忘れられないわ、あの時タバコの匂い。
明智は1発ケムリを吸い込んで話のコシを折るように
「それタバコ1本で尺たりる?」
意外と一生懸命に
聴いてる玄白に驚く明智なのだった。
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