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Labの男64

 Labの男64

アンタの時代はよかった。
男がバカでいられて
馬鹿のままでもよかった。
大らかに誰もが後ろ指をささない
誰かのせいのままでよかった。
賢くなくてもナニもなくても何とかなった。
飛ぶ鳥あとを濁しても後は野となり山となった。
昔が恋しいわけじゃない。
ただ着火させたいのさ。
漠然と爆発させたいのさ。

 謝肉祭またはカーニバル

謝肉祭とは
ルーツは遡ることゲルマン民族
春の到来を祝う祭りだという説がある。
七日間
教会の内外で羽目を外し
らんちき騒ぎを繰り返し
最後に自分たちの狼藉ぶりの責任を
転嫁した大きな藁人形を火あぶりにする。
ウィッカーマンや
現代ではフェスのバーニングマンなど名残を残す
原初的なカタチであったという。
都市部の謝肉祭における
仮面舞踏会のような乱痴気騒ぎは
正常な社会生活に対する社会的役割を
転倒させたパフォーマンスであるとし
俗から聖への移行を
象徴的に表現したものと考えた。
要は、憂さ晴らしだ。

薬品会社が違法に精製していた薬品
「怒れるパープル」はアクシデントで大量流出
ガスマスクを装着した社の者たちは
蜘蛛の子を散らせたように対応に追われている。
貯水槽に秘密裏に精製された神経ガス兵器。
世に知られてはいけない薬品だが
国は黙認の薬品、だって発注先は国だからね。
ことを荒立てたくない国と製薬会社は
薬品回収を最優先。本宮町を隔離閉鎖
薬品の吸入者の救出は2の次3の次だ。
ビジネス街は「狂乱の謝肉祭」
カーニバルの真っ最中。
どのカタチであれ
鬱屈した世の中には風通しが必要だ。

死に至る可能性を秘めたカーニバル
なのに荒くれボーイズandガールズ達は
どことなく機嫌が良さそうに見える。
間違った行いには変わりがないが……
神経ガスから逃れジェイソン楠木を尾行
追跡時には分からなかったが、
大半がビジネスマン
暴徒たちの秘めた想いを解放できてるのか
凶暴ながら晴々とした表情
清々しさまで感じる万次郎。
それは明智も同じく感じている。
万次郎との違いは
アイアン来栖、譲りの不機嫌な唇
半笑いの口元が明智に張りついているところ。
やはりエージェントはcrazyじゃないと
やってけないのがよく分かってきた。

明智
「よくもまあ〜この緊急時に
 会社訪問ってどうかしてるぜ
 やっこさん
 狂気を感じるよ」

「それにしても
 景気よく破壊されてるねぇ〜
 それにみんなどこかハツラツとしている」

 「そうですよねぇ〜ボクもそう思います。
  やっぱり人には祭りが必要なのかも
  しれませんね」

「そうだな、特に日本人はガス抜きが
 下手くそなんだろうな。
 もっと殺伐としたマッドマックスな展開
 無法地帯を想像してたんだけど
 日本人ってちゃんとしてるんだな。
 バイオレンスもちょっと上品な気がする」

「死人が少なすぎるよ。
 この規模のバイオハザードだと」

本宮町のビジネス街だけが
警察担当の封鎖区域となっている。
ジェイソン楠木は臨時終点
ひと駅前から横道にそれ
最短距離をズンズン裏道を駆使して進んでゆく。
ひょいひょいと封鎖バリケードを
チラッとだけ見て別のルートでかいくぐる。
相当辺りを熟知しているのだろう。
近隣住民も通らないような路地を行き
あっという間に本町町入り。
続いて潜入した明智and万次郎、
ひと通り周辺を見回して
明智はクンクン鼻をこらしている。
大衆を暴徒と化す「怒れるパープル」には
独特の甘い香りがあり
明智は念のため
能力を発動して嗅ぎ分けている。
ジェイソン楠木はそんなの関係なく
ズンズン歩みを止めないが
目安にはならないだろう。
能力者の可能性がある。

「万次郎っ もう大丈夫そうだ。
 密造ビルからは距離があるから
 影響は無さそうだ」

遠くから
ハイブリッドカーならではの控えめなエンジン音
ひっくり返った障害物だらけの道を
歩道、車路もおかまいなしに
ハンドルもおぼつかないふらふら運転
猛スピードで障害物もぶっ飛ばして
こちら目掛けてアクセルを踏んでいる。
明智は察知している
 「万次郎っ!来るぞっ」

あらかじめ侵入角度をを想定してるのか
明智は闘牛よろしくヒラリ身をかわし
轢き殺されそうになる経験は無い
万次郎は華麗にあたふたと逃げる。

ジェイソンはそんなこともお構いなしで
歩みを進めている。

どこかのビルに車をぶち当てるも
 プゥァーーーーーーッ
悔しそうにクラクションが鳴り
何事もなかったかの様に
 ガチャ
ゆっくりとドアからスラリと脚が伸び
車のドアを荒っぽく閉め
淑女が登場with鉄パイプ
風になびくワンピースはシックな黒
鉄パイプをブンブン回して
 「貴方!ワタクシの事、馬鹿にしたでしょ」
  だからアタクシの車にひかれたら
  良かっ

すぐに動く万次郎
サイドステップからの渾身の右、会話中断キック
淑女の嗜み、いい〜香りを残して
上品なワンピースをハラハラとなびかせ
 ぶっ飛んでいく。

明智
「ははははっ 躊躇ないねぇ〜万次郎」

万次郎は不思議そうに
 「だって正気じゃないんでしょ?」

「女であっても躊躇ない。
 い〜ぃ判断よ、万次郎っ」

 「ジェイソンを追いましょう」

明智のスマート手錠がブルってる。
右手を眺めて確認 んっ
踏み外しちゃってるの気づかない系男子
モフモフ玄白からの連絡だ。

 「はいハイ、目下 追跡中の明智and万次郎
  何か動きあった?」

「大変な事になっちゃってるねっ!そっち!
 万次郎は問題ないかい?活躍してる?」

 「いい動きしてるよ。
  1stミッションの割にはね。
  やっぱりアイツは
  ネジが2〜3個飛んでるねぇ!
  ちょっと驚いてるよ!
  それはそうと、どうしたの玄白?」

路地から急に出てきた男の攻撃を交わすと同時に
蹴りを入れる明智 ゴッハッ 腹ばいになる男
気にせず歩く明智 すぐさま新手が近づいてくる
のに合わせて 裏拳を入れてぶっ飛ばす ウガッ 起きあがって反撃を目論む新手に
万次郎が合わせてサッカーボールキック カハッ
間髪入れずサイドから忍び寄る不審者に
万次郎の流れるようなコンパクトな肘鉄 ウグゥッ
これは来栖、譲りの技だ。
周りに警戒を怠らず明智and万次郎

 「玄白っゴメンごめん!
  ちょっと立て込んでてねぇ。
  全然聞いてなかったのよ。
  なによ〜?」

  「こっちで分かったジェイソンの素性を
   教えておこうかと思ってね。
   彼は数年前に奥さん
   亡くしちゃったみたいだね。
   残念なことに
   子供には恵まれなかったみたい。
   そう彼は今、ひとり暮らしみたいなんだ」

右手に口を寄せ話してる明智を横目に
邪魔をするなと言わんばかりの
薙ぎ払うような万次郎の ト〜ン トン
サイドステップからの中段蹴り ゴハァァァ
さっきよりもスピードが乗ってきている。
明智は人差し指を立て
ジェイソンを尾行するように万次郎を促す。
 2本指を立て前方を指差す万次郎
ひときわ目を惹く外れにあるビル
ジェイソンはその高層ビルに入っていく。
エントランスも立派なものだ。
ビル内の人達は避難済みの様で静かなものだ。
入館証なしでも改札チックなゲートは
行き来が可能だ。改札機械が赤のランプを
点滅させ緊急事態だと告げてくれている。
我が道をいくジェイソン楠木
それを追いかける明智and万次郎

 またこのビルでもなにかハプニング
 しちゃうんだろうな。と覚悟を決める万次郎
明智
「さて今度はナニが巻き起こるかねぇ」

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