『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』を読んだ

読んだ。

『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』は、冬木糸一のSF小説紹介本である。著者は、SFマガジンや家電批評に連載を持っており、俺は彼の書評ブログ「基本読書」を参考にして本を買うことが多い。そんな著者がSF小説を紹介する本を出したのだから、読むしかないと考えた。

本書は、ノンフィクションばかり読んでいる俺のような人にSFの良さを教えてくれる本である。読書をする目的を「娯楽」と「実用」の2つに分けた場合、俺は「娯楽」としても読むが「実用」の比重も大きい。だから読む本はノンフィクションが多くなる。そんな俺みたいな人に対し、本書は現実の技術や出来事といった「実用」を餌に、SFという「娯楽」の沼に引きずり込んでくれる。

面白いのは著者は逆で、歴史小説やミステリー小説を読んでいたところからSF小説に手を出し、SFからノンフィクションに興味を持つようになったという。自分の経験とは逆の本を出したというわけだ。

この本を読んで、SFの本質は未来予測ではなく思考実験であると感じた。SFはある条件が変わった場合に、世界がどう変わるのかを考える。未来予測との違いは、その「条件」が現実となるかどうかは別の話ということだ。未来予測となりうるのは「条件」が現実となる可能性が高い場合のみだろう。ゆえに宣伝文に使われている「10年後の現実」というのは違う。SFをドラえもんの道具に例えるならば「タイムテレビ」ではなく「もしもボックス」だ。「訪れるかもしれない世界」と書いた方が適切だろう。

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