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トイレの神様の正体

朝、星占いをみる習慣がある。
若い頃からのルーティンだ。

単純なもので、1位だったらなんとなく1日平和に過ごせそうな気がするし、11位12位だったら少しがっかりする。
ざっと内容は読むものの、文よりも数字のインパクトの方が強く、「今日は○位」ということだけが頭の片隅に残る。
そして大抵午後には忘れている。

近頃は「良いことがある」よりも「悪いことが起こらない」といいなあと思う。

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毎日トイレ掃除を始めたのは昨秋のこと。
きっかけはインスタグラムで偶然出会った一つの投稿。

トイレを赤ちゃん用の流せるおしり拭きで掃除するというもので、トイレ掃除用の流せるシートよりも枚数が多く、コストパフォーマンスが良いそうだ。

今までトイレは1週間に2回ほど掃除していた。
それで十分だと思っていたし、トイレ掃除用のシートに対して不満があったわけでもない。
それなのに、なぜかその投稿を見た瞬間、これやってみよう!と思った。
「インスピレーション」と言うと聞こえがいいが、つまり「なんとなく」。
なんとなーく毎日トイレ掃除してみよ、と。
これならできるかも、と思ったのだ。

洗面台は先に掃除の習慣ができていた。
毎日洗濯前のタオルで拭き上げている。
隅に水垢がつかなくなったし、蛇口などステンレスの部分がピカピカになる様を見るのはとても清々しく気分がいい。

この作業のあと、洗面台を拭いたタオルを持って移動しトイレ掃除開始。
ペーパーホルダーやタンク周り、トイレのフタ等のホコリを拭き取り、便器の中に泡のスプレーをシューッと吹きかけておく。
そしてタオルは洗濯機に入れる。

ここで赤ちゃん用おしり拭きの登場。
床やスリッパ、便座おもてうらなど汚れのあるところを拭く。
最後にスプレーの泡とともにこのシートも一緒にジャーッと流してしまう。
そしてトイレの入口に立ち、ピカピカになった空間を眺める。
ひかりかがやく便器、キラキラ流れる水、ホコリも髪の毛も落ちていない床。
きもちがいい。
あらゆる気持ち良さの中でもかなり上の方の「きもちがいい」だ。

たとえば、昔行った上高地。
明神池の前に立った時の神聖な空気。
静かな山、どこまでも透明な池はさやさやと静かに波打つ。
あまりの美しさに言葉をうしなった。
あの時感じた「きもちがいい」が、おぼえているかぎりの最上級だとしても、トイレ掃除のあとの気持ち良さは日常で味わえるその次の次くらいのポジションだと思う。
どことなくあの明神池を思い出させる。
そして、大自然上高地とは違い、トイレの清々しい空間はわたしが手を動かせばつくり出せるのだ。


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星占いが最下位の日も、わたしは手を動かす。

毎日してるとものの5分で終わるトイレ掃除。
さやさやと流れる水とピカピカ光る便座、少し開けた窓からは冷たくて新しい空気が入ってくる。
入口に立ち、眺める。
よくやったぞ、きもちがいい。

それからトイレのフタを閉め、ドアをそっと閉め、次の家事に取りかかる。

占いが最下位でもそこまで悪いことは起こらないだろうなとその頃には思っている。
日々、わたしはトイレ掃除で心のおまもりを手に入れる。

トイレの神様ってきっとそういうことなんじゃないかなあ、なんて感じている今日この頃です。


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