見出し画像

24.7.17 ファーストラヴ

島本理生さんの「ファーストラヴ」を読んだ。

父親を刺殺した犯人は娘である女子大生。
彼女の育った環境、両親との関係性。
なぜ彼女は父親を殺してしまったのか。
事件の真相は?

この本を読んで性被害にも様々なパターンがあることを知った。
そしてそこには複雑な心理が隠れていた。

本当は嫌なのに無力さ(思い込みだったりする)から、自分の行動を正当化するために笑顔を作ってみせるということ。
傷つけられてはいないと、心を騙してやり過ごすこと。
それに慣れてしまうと自分の気持ちなど見えず、他者の期待に応え、他者の望む自分が本当の自分だと思い込んでしまうこと。

犯人である環奈は自分の気持ちを無視することに慣れすぎてしまって、どう思ったかどうしたいかなど考えられなくなっていた。

わたしは昔のことを思い出した。
幼い頃、気の強い友人がいた。
嫌なこともたくさんされたのだけれど、笑ってやり過ごしていた。
やめてと口に出したことはおそらくなかった。
嫌がらせなどされていないと、自分を守るためだったのだと思う。
プライドとも言える。
その後わたしは高学年で転校し、彼女とは疎遠になっていた。

ところが二十歳を過ぎた頃に偶然再開。
なぜかわたしは今度ご飯に行こうと誘っていた。
きっと子供の頃のことをなかったことにしたかったのだ。
彼女が強く、わたしが弱かったという構図を平等にしたかったのかもしれない。

いや、ばかすぎる!
今ならはっきり分かる。
めちゃくちゃ嫌いだった。
ずーっと昔のことだけれど、わたしは嫌なことをたくさんされたし傷つけられた。
もう二度と会いたくない!!
たとえ大人になった彼女が優しくて良い人になっていたとしても。

心の声に耳を傾け、傷ついた幼い頃のわたしを認め、嫌だったし彼女のことが嫌いだったことも認めてはじめて過去のわたしを慰めることができる。
そしてそれを丸ごと受け入れてくれる誰かがいることでやっと痛みから徐々に開放される。

この物語が伝えたいのもそういうことなのではないだろうか。

犯人の環奈も自分の心を、幼くて未熟ながらも守り続けてきたのだろうと思うと胸が締め付けられる思いがした。

ファーストラヴ、一気読みでした!
久々に読書に没頭できました。







この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?