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さみしくなるから、ここでバイバイ

4月。
新学期が始まった。
今朝は黄色いカバーのついたランドセルを背負った女の子が歩いていくのを見た。
ピカピカの1年生。
高学年のお姉さんと共に。

春だなーと思う。
新生活が始まった人々が各地にたくさんいるのだろう。
黄色いランドセルのあの子だってそう。
なんだか少し緊張しているようにも見えた。
お昼には「楽しかったー!」って帰ってこられるといいなあ。

わたしには子供が2人いる。
今年それぞれ小学校3年生と6年生になった。

今朝は6年生の長男が久々にランドセルを背負ったらかなり上にあがってしまっていた。
上部が首まで来ている。
ベルトを伸ばさなければ。

背が伸びた。
わたしの鼻の位置まできたと思っていたら、いつの間にか眉毛まできていた。
抜かれるのも時間の問題。

11歳。
でも感覚的には少し前まで幼児だったような気がする。

彼は4歳の4月、幼稚園に入った。
7年前の春のことはとてもよく覚えている。

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わたしは緊張していた。
新しい生活、新しい環境、新しい人間関係。
息子もわたしもちゃんとやっていけるのだろうか。
漠然とした不安があった。

入園式は無事に終わり、幼稚園生活が始まった。

登園時は子供達を下駄箱まで送り届けてください。
慣れたら園の入り口までで大丈夫です、と先生が言う。

初日、下駄箱まで長男を送っていくと決して少なくはない子供達がお母さんにしがみついて泣いていた。
そりゃ今までずっと一緒にいたのだからさみしくて不安だろう。
わあーわあーと響く泣き声。
先生に抱えられて中に入っていく子供達を横目に、長男はそっと靴を脱ぎ小さく手を振って中に入っていった。
ほっとしたと同時に少しさみしさも感じた。
平気なんだなー、と頼もしくも感じた。

翌日。
手を繋いで幼稚園まで歩いた。
すると長男は入口の門の前で
「お母さん、ここでいいよ。」
と言った。
まだ2日目やし、下駄箱まで行くよと言ったのだが長男は首を横に振った。
「それやとさみしくなるから。ここでバイバイする。」

長男は先生のいるところまで、一度も振り返らずに走っていった。
下駄箱のまえにたどり着く。
待っていた先生がぎゅっとしてくれる。
そこでやっとこちらを見た。
彼は先生とともに、両手で大きく手を振ってくれた。

幼稚園へ送り届けた帰り道、わたしは1人で少し泣いた。

彼は決して平気なわけではなかった。
彼なりに考えて、さみしくならないように早くバイバイする。
そのけなげさ。
そしてこれから彼の世界はどんどん広がっていく、その入口にきたということ。
両親、祖父母以外の頼れる大人が増えたということ。
うれしいようなさみしいような様々な気持ちが重なって涙が出た。
なにより登園早々、誰よりも早く1人で走っていける長男を誇らしく感じた。
そんな春だった。

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4月。
新生活が始まり、あちこちで様々なドラマがうまれているのかもしれないなあ。
強風に大きく揺れる、若葉のついた庭の木を眺めながら思いをめぐらせる午後。

長男のランドセル、調節しよっと。




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