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夫は天然ボケ
私の夫の話をしたい。彼は私が今まで出会った誰よりも「天然ボケ」だ。そして色々と「もっている」男でもある。
例えば焼きたてクロワッサンが有名なお店で「これは今日焼いたものですか。」と聞いたりする。
「もちろん!」と答えた店主らしき男性の目があきらかに何ゆうてんねん、当たり前やろと怒っていた。
しかし夫はいたって真面目なのだ。大真面目に、そのクロワッサンが今日焼かれたものなのかどうか聞きたかったのだ。
すごいぞ夫!
外食のメニューによくあるシステム。例えばランチはご飯無料とか、メインはこの中から選ぶとか、麺は半量にも増量もできるよとか。
そういうのを理解できない。あるいは理解しようとさえしていないのかもしれない。私が必ず説明する事になる。
「そうゆう事かぁー。分かりづらいなぁー。」
とおっとりした声で言う。
半袖Tシャツに下はパンツだけという格好で「さむーっ」と言いながらストーブの前に座ったりする。
夫は憎めないやつなのだ。
更に色々と「もっている」男でもある。そのエピソードを書き出してみよう。
・ご飯を食べてて石を噛むのは必ず夫。
・ガリガリくん二回連続当たり。
・ハート型が入ってたらラッキーというふりかけ。私と子供達がずっと食べてても出た事なかったのに、夫が初めて食べたふりかけの小袋にハート2つ入ってた。
・親類の告別式で、夫が木魚の横を通ったら木魚を叩く棒(正式名称が分からない)が落下、注目される。
・無料のお茶が出てくる機械のお茶が止まらなくなる。
・車のボンネットに財布を置いたまま忘れて走り出し、奇跡的に家に着いても財布乗ってた。
・旅先でレンタサイクルに乗ってて、かごに入れてたお土産がカラスに持っていかれる。その後行ったビーチにそのお土産が落ちてた。紙袋はビリビリ、中身は無事。
・うなぎの骨がのどに刺さる。
うなぎの骨って、あのふわっとした柔らかい小骨の事なんやけど、あれ刺さるん?うなぎの骨刺さった人を初めて見た。
うなぎの骨が刺さった日は日曜日。心配性の義母が休日診療に電話したらと言ったので夫は電話をかけていた。
ニヤニヤしながら電話を切ったので内容を聞いたら、だいたいこんなやり取りだったらしい。
夫「すみません、うなぎの骨がのどに刺さったんですけど。」
相手「うなぎ…ですか…。その方はおいくつですか?」
夫「私…なんですけど。43歳です。」
相手「はぁ……(半笑い)。痛みはありますか?」
夫「ないです。」
相手「…では、今日は我慢されて…(ちょっと笑ってる)明日病院へ行かれてはどうですか?」
夫「そうですよね。ありがとうございます。」
ごもっとも!休日診療、ごもっともです!
子供か高齢者かと思ったら、43歳!しかもうなぎ!と思ったやろな。
夫はやっぱり憎めないやつだ。
夫は第一印象がとても良い。
初対面の人にはほぼ「旦那さん優しそうやなー。」と言われる。確かに優しい。物腰が柔らかいし、その辺りはとても尊敬している。
そんな「優しい人」が私と結婚を決めたのはもう11年前。私はその頃、社会の荒波に揉まれすぎて性格がねじ曲がってしまっていた。
そんな性格の悪い女を救いだしてくれたのに、それさえも「私は選ばれた。彼は見る目がある。」くらいの自意識過剰さでいた。
でも今なら分かる、やっぱり夫は「天然ボケ」だったんだ。だから私との結婚を決めたんだ。
おかげで私は人生の軌道修正ができた。幸運だ、ラッキーすぎる。あれ?ひょっとしたら私も「もっている」女なんじゃない?
夫に感謝している。感謝してもしきれない。
メニューの説明くらい何回でもしようじゃないか。
でもうなぎの骨には気をつけよう!!
特に土日は。病院休みやからね。
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