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【この世界の片隅に】すずさんは‘首をかしげる’から好きになれる

先日、れいわ最初の終戦記念日ということでAmazonプライムでアニメ映画「この世界の片隅に」を鑑賞しました。

この作品の予告編から漂う‘ほんわかした’雰囲気になんとなく忌避したい感情があったためか、公開されてから実際鑑賞するまで随分時間が経ってしまいましたが、もっと早くみておけばよかったと後悔しています。

今回、この映画を最も魅力的たらしめている主人公「すずさん」について個人的な視点から考察したいところがあったので記事にしました。

照れ隠しをするすずさん

広島市の実家から呉市の北條家の嫁にきたすずさんは、髪が一部禿げるほどのストレスに苛まれながらも負けじと生きていく姿が描かれます。

彼女の広島弁や時折見せる強い口調、それに柔らかな笑顔から彼女の可愛らしさや女性らしさを感じた観客は少なくないでしょう。

私にとって特に印象的だったすずさんは、照れ隠しをするときに目を細めながら恥ずかしそうに首をかしげる描写でした。

ストレスのある環境で頭を傾けていられない

すずさんの首を傾げる・頭を傾ける動作を見て、僕はある本のことを思い出した。それがこの本「FBI捜査官が教える『しぐさ』の心理学」である。(iPadのスクショ)

この本によれば「頭を傾ける」という行動には大きな意味がある。

人間、というか動物はストレスのある環境では不安定な体勢は忌避するように脳に組み込まれている。

たとえば、満員の電車やエレベーターで頭だけ傾けるのはすごく難しい。知らない人間の集まる場は大抵ストレスになるからだ。

脅威を前にして不安定な体勢を露呈することは野生では死を意味していた。人間も社会性と思考力は進化しても、本能的な部分は未だ変えられたわけではない。野生の本能として人間は環境に応じた行動をとってしまう。

すなわちストレス下において動物は両足をしっかり地面にくっつけ、体をなるべくストレスから遠ざけ、頭を傾けず、時には首や足を手でこすって心を落ち着かせようとするのだ。

では、頭を傾ける行動にはどんな意味があるのか?

それはストレスとは真逆の環境、つまり快適さを意味しているのである。リラックスしていると筋肉が緩み頭が横に傾いて最も危険に弱い首の部分があらわになる。

すずさんが頭を傾けて照れ臭そうに笑っていた動作には彼女の「安心感」が込められていた。

観客はすずさんの安心しきった表情としぐさにつられて心を休めることができた。そして表現者たちは知ってか知らずか、観客の感覚を誘導したのだ。

表現者の底知れぬ感性を思えば、この作品の魅力がまだまだ出てくるのかもしれない。

#この世界の片隅に #映画  #感想 #心理学 #FBI捜査官が教えるしぐさの心理学

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