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図書館のアホ(2005年07月06日)

2005年07月06日 記

 地元の図書館でネット予約ができるようになった。8月から。驚愕である。なぜならつい昨年まで蔵書検索すら「パソ通」だったのである。パソ通だよ、パソ通。しかも導入されたのが平成9年。インターネットの普及に目もくれず、パソ通を“あえて”導入したわけである。すごい時代感覚。それがようやくネットで検索できるようになったのが昨年(!)の10月。すごいでしょ。ふんふん(って自慢してどうする)。だからネットで予約なんて、夢のまた夢だと思っていた。すごい進化である。新着図書はネット上で公開されているから、気になる新刊はどんどん予約することができる(5冊が上限だけど)。こりゃべんり。

 さらにさらに、である。ネット予約と同時に、公民館などの公共施設での受け取り・返却も可能となる。つまり一度も図書館に足を運ぶことなく、近所で本が借りられるのである。僕の場合、車を持っていないのでいつも図書館までは自転車で走る。図書館は自宅から4kほど先、しかも坂の頂上にある。仕事柄、週に何度も通うこともしばしばだが、やはり時間がもったいないと感じることもあった。だから今回のネット予約と近隣施設での授受は願ったり叶ったりである。今から8月が楽しみだ。

 しかし一方で、あまりに至れり尽くせり過ぎるのでは? という気がしないでもない。ネットを使いこなすスキルがあって、車を持っていない僕などにはすこぶる重宝である。しかしそんな利用者は少数派だろう。だが運用には当然のことながらコストがかかる。サーバーの維持管理費用もバカにはならないだろうし、各公共施設に本を届けるのにもお金がかかるはずだ。その元は税金である。はたしてペイできるのか? 「願ったり叶ったり」などとアホみたいに喜んでいる僕などが言う資格などさらさらない。それは承知している。

 だがあえて言わせてもらえれば、そもそも図書館の立地そのものが、あまりにひどかったと言わざるを得ない。駅からは遠いし、バスも1時間に1本程度。しかも急坂の頂上にある。これはなにもわが町の図書館にかぎったことではない。隣の市町村も同様である(もしかして法律や条例で定められているとか?)。とにかく場所が最悪。自動車でしか行けない。だが平日の図書館利用者は、ほとんどが高齢者や主婦、子供である。こうした「社会的弱者(あまり好きな言葉ではない)」が一番の利用者であるにもかかわらず、現実の図書館は彼らを拒むような場所に建っている。それでいて利用者が少ないと悩んでいたわけだから、アホだ。

 今回の新サービスもなんだかその「アホ」の延長でしかないような気がするわけである。ネット利用者が増えれば、予約数も激増するに違いない。ネットを利用するとは思えない高齢者には、明らかにこのサービスは不要だろう。「デジタルデバイド」という新手まで加われば、ますます社会的弱者には利用しづらくなる。読みたい本がなかなか読めない、という状況に拍車をかけることは目に見えている。結果、ベストセラーばかり購入するという悪循環にはまらないとも限らない。サービスの導入自体が悪いと言いたいのではない。図書館の場当たり的で、戦略や理念のまったく見えない姿勢に異議を唱えたいのである。

2024年03月25日 付記

 これを書いてから二十年あまりが過ぎた。ネット予約が始まってすごい進化だと感激してたら、数年前に駅チカに新しい図書館までできてしまった。本好きの身としては、感謝しかない。ありがたく(まるで自分の書庫であるかのように)頻繁に使わせてもらっている。「図書館の充実」というのはわが町に限ったことではなく、近年のトレンドでもある。やたら駅チカに図書館ができたり、新しくリニューアルしたという話をよく聞く。その一方で、司書の待遇改善も注目を集めるようになった。こちらも喫緊の課題だと思う。

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