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なぜ肉なのか?〜周りの肉好きに聞いてみた

大人になると、いわゆる飲み会や●●会と称した集まりが増える。

新年会で始まって、花見やら納涼会やら時々ある歓送迎会と打ち上げ、そして忘年会。そんな風に年中どこかしらで催されている飲み会で、最もよく出てくる食事ジャンルが「肉」である。(筆者統計)

飲み会前になると流される日程調整のメッセージには「お店に希望がなければお肉になります♡」とPSが付けられ、めでたく肉に決まり迎えた飲み会当日では「今日は肉じゃ!祭りじゃ!」と騒ぎ立てる…。(日刊かきあつめの忘年会はその限りではなかった)

なぜみんな、そんなに肉が好きなのか?

正直、肉より魚が好きなわたしには簡単には頷き難いものがある。しかも悲しいかな大抵において飲み会で「魚の店」はチョイスされない。それ故の肉に対する僻みもないとは言えないが、それを差し置いても肉ばかりそんな風にもてはやされるとケッと思うわけである。

そんな肉への偏見を原動力に、(なぜか多い)周囲の肉を愛する人々へ聞き取り調査を敢行した。


■肉好き友人Aと同じく肉好き友人Bの場合
3人で食事へ行ったときのこと。もちろん店選びは2人のゴリ押しで某焼肉店に決まった。
まずはタンという彼らの提言に従い、わたしは店員さんへ「タンを3人前ください」とお願いしようとした。しかし彼らは「5人前ください」と言い直したのだ。おまけに続けて「この列の肉から順番に5人前づつ持ってきてください」と言い出した。肉の頼み方が常軌を逸脱している。決して少なくない量の肉を前に言葉を失うわたしに向かって彼らが放った言葉は「本当の焼肉の食い方をおまえに教えてやる。肉は量と種類を食ってなんぼだ。」恐らく人生でもっとも肉を食べた夜だっただろう。はちきれんばかりの腹と寒くなった財布を抱え、帰りの電車に乗った頃、肝心な肉が好きな理由を聞きそびれたことに気がついた。
彼らと焼肉には二度と行かないと誓った夜だった。


■豚肉を愛する友人Cの場合
彼女は3食とも肉を食べているタイプの肉食人種だが、とくに豚肉とからあげを愛している。理由をきいたところ「安くて美味いから」とのこと。もちろん好物が低予算で大量に食べられたら誰だって嬉しい。もう一声欲しいというと「うーん、後調理が楽。薄いとすぐに火が通るし、スーパーでも一番、かんたんに調理できる形で売られてるから。しゃぶしゃぶとか。」との返答があった。……たしかに、そう言われれば、しゃぶしゃぶは一瞬で火が通るし、薄切り肉は鶏肉に比べてきちんと火が通っているかどうか目視で確認がしやすい。しかし、これは肉が好きな理由として、いかがなものだろうか。もっとこう、豚肉にはビタミンが豊富で…とか、そんな話を聞きたかった気がしないでもない。


■10年以上食事はほぼ肉のみの元上司の場合
彼女は野菜が嫌いで、食べざるを得ない状況以外では肉しか食べない。たしかに、元同僚の結婚披露宴以外で肉以外の食べ物を食しているところにお目にかかったことがない。
これまで話を聞いてきた3人と彼女が異なる点は、量より質を優先するタイプであることだ。高級で多すぎない量の肉を味わって食べるのだそうだ。肉だけで身体的パフォーマンスの心配はないのか?と尋ねると「歳を重ねるとね、自分に本当に必要な物がわかってくるの。」とのこと。な、なるほど。オトナすぎる返答である。それ以上突っ込むことができなかった若輩者の筆者は、ひたすらお酌をした。


4人への聞き取りを経て、わたしの肉への印象は変わらず、肉に対する情熱の納得いく理由は残念ながらわからなかった。
しかし、ひとつだけわかったことは、愛の形は様々であるということ。4人ともわたしの納得いく理由を話してはくれなかったが、肉を前に語り、味わう姿は幸福に満ちた顔をしていた。

好物を前に、好きな理由を問うことは野暮かもしれぬ。
美味しいものを好きなだけ食べられる。それだけで十分ではないか。


編集:アカ ヨシロウ 
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