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【特集企画アンケート】みんなに知ってほしい! わたしの尊敬する翻訳・ことばの先人

「ほんやくWebzine」では、2021年夏特集企画​として「みんなに知ってほしい! わたしの尊敬する翻訳の先人」アンケートを実施します。

みんなに知ってほしい! わたしの尊敬する翻訳・ことばの先人

故人となったすぐれた翻訳家の仕事をあらためて知り、翻訳やことばの原点を見つめなおしていけたらと思っています。皆さんが尊敬する翻訳・ことばの先人について教えてください。

直接指導を受けた翻訳の師匠、訳書や吹替翻訳でファンになった訳者、心の中で師と仰ぐ方、歴史上の人物、子供の頃からファンだった翻訳家−。文芸、映像、実務その他ジャンルは問いません。あの名訳を生み出した翻訳家をもっと知ってほしい、埋もれてしまってはもったいない。そんな皆さまの思いをアンケートにお書きいただければと思います。回答例として、Webzine執筆陣と編集部のコメントをご紹介します。

■尊敬する先人:大久保博 (1929-2018)

「大学時代からの恩師です。マーク・トウェインの研究に生涯を捧げ、亡くなる間際まで病気を押して翻訳していらっしゃいました。」(ノンフィクション・文芸出版翻訳者/金井真弓さん)

■尊敬する先人:倉橋由美子(1935-2005)

『星の王子さま』倉橋訳を読み、すばらしい訳文と「訳者あとがき」の作品解釈に感動した。子どもの頃読んだシルヴァスタインの絵本『ぼくを探しに』の自然で親しみやすい日本語も倉橋訳だった。作家として知られるが、すぐれた翻訳家としてもっと知られてほしい。(編集部)

■尊敬する先人:中村保男(1931-2008)

『新編 英和翻訳表現辞典』は辞書にない訳語を考えるためのヒントが満載で、語釈がたいへん勉強になる。このように実践的で役立つ辞典を編み出したのは、翻訳者として活躍した著者だからこそ。(編集部)

皆さまの尊敬する先人もぜひお聞かせください!<回答はこちらから> 翻訳家に限らず、通訳者や語学教育家、辞書編纂者など、異言語にかかわっていた先人を対象とします。ただし、すでに亡くなられた人物のみをお答えください。現役で活躍中の翻訳家は今回対象外とさせていただきます。

山岡洋一氏追悼10年に寄せて

翻訳家の山岡洋一氏が2011年8月20日に逝去して今年で10年になります。

ビジョナリー・カンパニー』『国富論』など多数の訳書を手がけたほか、翻訳教育家として後進の育成に力を注いだ山岡氏。『翻訳訳語辞典』の公開、WEBマガジン「翻訳通信」の発行など、翻訳という職業の広報、発展に内外両面に向けて献身してこられました。当マガジンの「ほんやく読書会」でも、山岡氏著作の読書会をこれまでに2回開催しています。

代表著書『翻訳とは何か』は今年で刊行20年。翻訳学の理論書、翻訳実務書はそれぞれ多数ありますが、学術的な理論や翻訳史から実践的なノウハウまで網羅した本はこれ以外に思い当たりません。時勢の変化につれ内容的に古くなった部分がありつつも大半は普遍的で、2019年には5刷目重版され今も実務翻訳者の間で読み継がれています。当Webzineでも、リレーエッセイ「言葉のプロ・この2冊」で英日翻訳者の菊地清香さんが紹介されています。

今回のアンケートでは、山岡洋一氏の著書や訳書の感想を、当Webzine読者の皆さまにお聞きしたいと思います。それに先立ち、過去に読書会に参加した翻訳者やWebzine執筆陣からのコメントをご紹介します。

■『翻訳とは何か』印象に残った箇所(抜粋)

つまり「現著者が日本語で書くとしたらこう書くだろう」と思える訳文にし、原文の表面ではなく、原文の意図に忠実であろうとするのが森鴎外のスタイルなのだ。第1章「翻訳とは何か」より
八方美人になる必要はない。一億人に支持される訳文を書く必要はない。ごく少数の強い読者を獲得できる訳文を書けばいい。もっとも、自分が訳した本がベストセラーになったとき、自分の翻訳が読者に支持されたと考えるべきではない。支持されたのは原著者であり、原著であり、書名や装丁であるのが通常だからだ。第4章「翻訳の市場」より
翻訳とは、書く仕事の全体に対して責任を負う仕事だ。だからこそ、魅力のある仕事なのだ。第6章「職業としての翻訳」より

■『翻訳とは何か』全体の感想

実務翻訳者・水谷健介さん「次の拙文をご覧ください(編集部註:下記リンクの記事)。9年ほど前の記事ですが、ご質問への答えにもなっていますし、まだ読んだことのない学習中や若手の方の参考になればと思いまして。」「WordSmyth Café」私にとって(の)『翻訳とは何か ― 職業としての翻訳』(JTFジャーナル2012年11月)

実務翻訳者・光井彰子さん「第3章『外国語を読む技術(P.125 ~)』では、外国語の読解能力が3段階に分かれるとの説が展開されています。第一が外国語を学ぶために読む段階で、第二は外国語を道具として使いこなす段階。ここまでは比較的簡単に到達できるが、翻訳者はさらに上の段階、つまり『(第一と第二を)一段と高い水準で組み合わせ』『外国語と日本語の違いをあらゆる面で再意識化』できる段階に達していなければならないと。
これから翻訳者を目指す方だけでなく、現役の翻訳者が(経験年数を問わず)折にふれて噛みしめたい教えだと思います。」

皆さまもぜひ、アンケートに『翻訳とは何か』の魅力をお寄せください。

また、生前の山岡氏を知る方はそれぞれの思いについてもお聞かせいただければ幸いです。

ノンフィクション・文芸出版翻訳者/金井真弓さん)「ノンフィクション忘年会でお手伝いを募集していた時に応募したご縁で、初めて山岡さんとお会いしたことを覚えています。今から14年くらい前でした。駆け出し翻訳者のわたしはただもう恐縮するばかりでしたが、山岡さんは労いの言葉を優しくかけてくださいました。翻訳業界のことを熱く語っていらしたのを、固くなって拝聴していたのはいい思い出です。」

回答の締め切りは2021年7月20日(火)です。皆さまの熱い声をお待ちしてます!


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