田沼武能と子ども

今年6月、93歳で亡くなった
田沼武能さんの追悼写真展に行った。
田沼さんが名誉教授だった
東京工芸大学中野キャンパス
6号館で催されていた。
創立百周年のイベントでもある。

写真展のタイトルは
「日本の子ども 世界の子ども」。
ふたつの部屋にそれぞれ
田沼さんのライフワークだった
世界中の子どもたちの
モノクロ写真が展示されていた。

日本の子どもの写真は
戦後すぐの街に暮らす子たち。
靴磨きや子守をする
戦災孤児も多く写っていた。
大きなペコちゃん人形の前で
ミルキーが欲しそうな子どもも。

世界の子どもの写真は
戦争最中の子たちが多い。
戦争によって難民となった子、
たくさんの少年兵の姿もある。
栄養失調の子どもや
片腕を切り落とされた子どもも。

笑顔もあれば笑顔を失った子もいる。
生きる逞しさと希望のない悲しみ、
様々な顔の子どもたちがいた。
しかしどの写真にも田沼さんの
子どもたちへの慈しみと
深い愛情に満ちあふれている。

16歳の時、東京大空襲に遭った
田沼さんは平和を願い続けた。
「国が平和でなければ
人の幸せはありえない」
田沼さんの信条だった。
「平和とは心の中が
平和であることなのです」