壊れたものを直さない世の中

壊れたら直す。

僕の子供時代はどんなものもそうだった。

ラジオでもテレビでも時計でも。

でも今は部品がないとか言って

新しいものと取り変えろという。

だったら、交換するのではなく、

その部品そのものを

直せばいいではないかと思う。


僕が生まれる前の日本製品は

安いけれどすぐに壊れるという

世界では信用のないものだった。

産業革命もなく、ずっと農業で

暮らしてきたのだから仕方ない。

そこで先達たちは一生懸命に

良い製品を作ろうと頑張ってきた。

それが今の素晴らしい製品たちだ。


しかし、あまりに良くなって

壊れることがなくなったために

ものが売れなくなり、敢えて

部品をなくそうとしているのだろう。

冷蔵庫でも洗濯機でもクーラーでも

すべての電化製品はそうだ。

何でも故障したなど壊れたら

丸ごと変えなければならない。


昔は電気屋さんが家にやって来て

修理して使えるようにしてくれた。

今やそんな電気屋さんはいないし

必要ないからどんどん潰れていく。

洋服なども破れたり綻んだりしても

直さずにどんどん捨ててしまう。

直すよりも新しいものを

買ったほうが安いなんていうのだ。


家でも台所や風呂、トイレまでも

壊れたら取り替えるってことになる。

誰も直そうとしない。

そんなだから大工もいなくなる。

プラモデルを組み立てるように

家を組み立てるのだから

そうなっていくのだろう。

手作りの家などなくなってしまう。


今も昔もヨーロッパでは何百年も経た

家を直し直して棲んでいることが多い。

セーター一枚でも大事に着て

破けたりほつれたりしたら直す。

聞けばおじいさんやおばあさんの着ていた

セーターだったりするのだ。

良い家を建てて何世代にもわたって棲む。

良い服をあつらえて末永く着る。


こうしたことが

物を大事にする気持ちを育てる。

職人を大事にして育てる。

先祖を大事にする。

物をいたわることで人をいたわる。

今の日本はどうだろう。

何でも新しいものに替えてしまっては

物を大事にする気持ちや職人は育たない。


そんな世の中ではいけないと思う。

物を大切にし、人を大切にする。

そんなまっとうな世の中に戻って欲しい。

先ずは古いもの大事にしよう。

捨てずに直して使っていこう。

ひとりひとりがそうした気持ちを持ち

少しずつ実践していけば

世の中は再びまっとうになっていくと思うのだ。