お別れ会は誕生会?!
磯辺さんは眠っていた。
静かに眠っている。
彼の62回目の誕生日。
ひっそりとした会のはずが、
たくさんの人がやってきた。
磯辺さんとのお別れ会が
誕生会になってしまった。
お祝いする会になってしまった。
そんなことってあるのだろうか。
奇想天外のお別れ会だ。
高校野球の仲間たち、
大学アメフトの仲間たち、
社会人アメフトの仲間たち、
少年野球での仲間たち、
ゴルフ好きの仲間も集まった。
「おい、磯辺、何眠ってんだ。
早く起きろ、みんな来てるぞ」
先輩や同期の声が聞こえる。
奥さんのまみかさんや子供たちは
バースデイケーキが必要だと慌てただろう。
みんな泣いている。泣いているけど
笑わなきゃいけないと思ってる。
磯辺さんに湿っぽいのは似合わない。
そのことをみんな知っている。
仲間だから、友達だから。
素晴らしいお別れ会だった。
磯辺さんは寝たままだったけど、
きっと薄目を開けて喜んでいただろう。
「お前ら、ありがとな。集まってくれて」
心の中でそう呟いていたに違いない。
「またな、磯辺、またな」
そう言った人たちばかりだった。