靴の中の指の動きが見える

本棚を整理していたら、

古いモノクロ写真が出てきた。

九州のアマチュアゴルファー、

霍本謙一さんの還暦頃のもので

笑顔が最高の写真だった。


体格は普通なのに凄い飛ばし屋。

練習場からドライバーでは球を

打たないでくれと懇願された強者だ。

会社員をしながら数々のタイトルを

獲得、定年後ツアープロになった。


この写真を捨てるわけにはいかない。

何としても霍本さんご本人に渡したい。

とはいえ、今や居所がわからない。

最後は熊本日日新聞に問い合わせ、

ようやく本人と話をすることができた。


今や84歳、声は元気だったが、

10年ほど前に脳梗塞を患い、

ゴルフができなくなったとのこと。

懸命のリハビリを続けていて、

いつの日かプレーすると燃えている。


現役時代はその飛ばしに驚いた、

かのゲーリー・プレーヤーに誘われ、

一緒に練習やラウンドを行っている。

「いつか2人で世界旅行をしよう」

そんな約束まで交わしていたのだ。


「男の約束がまだ果たせていない」

電話口で涙ぐむ霍本さんだが、夢は

一流の弟子を育てることもある。

「足の動きを見れば才能がわかる」

それも足の指の動きが大事だという。


「私はスイングを見れば、その人の

靴の中の指の動きまで見通せます」

川を泳ぐにも逆流で行って体を鍛え、

トッププロを間近で見て技を会得するなど、

人間の体の動きを熟知したからこそだ。


実直で快活で努力家の霍本さんのこと、

リハビリで自身のプレーを可能にし、

世界に通じる一流の選手を育てあげ、

プレーヤーと世界一周をするという

すべての夢をきっと叶えるに違いない。