ヘブンアイズと拓郎

晴れていて
テラスが気持ちいい。
コーヒー片手に本を持ち、
椅子に腰かける。
トンボが開いた本に止まる。

本はデイヴィッド・アーモンドの
『ヘヴンアイズ』。
水かきのある可愛い女の子、
どんな悲しいことも
その瞳で幸せに変えてしまう。

室内から吉田拓郎の
「落葉」が聞こえて来る。
♬土産にもらったサイコロ二つ
手の中で振ればまた振り出しに
戻る旅に陽が沈んでゆく♬

SHOZOの豆から挽いた
コーヒーを飲む。
本のページをめくると
トンボが僕の膝に移る。
じっと僕を見ている。

拓郎の曲が変わる。
「流星」が流れてくる。
♬流れる星は今が綺麗で
ただそれだけに悲しくて
流れる星は微かに消える♬

『ヘブンズアイズ』は
親のいない孤児の物語。
ママ、パパと呟きながら
親を求めて旅をする。
愛情が欲しいのだ。

あっという間にかき曇り
雷が鳴って夕立がやってきた。
椅子と本と珈琲カップを持ち、
慌てて室内に逃げ込む。
偶然にも拓郎が
「ある雨の日の情景」を
歌っていた。