TSUNAMIヴァイオリン

東日本大震災の大津波は
多くの人の命を奪い、
様々な家屋を破壊した。
倒壊した木材は流木になり、
残骸と化してしまった。
その残骸を中澤宗幸氏が
弦楽器に生まれ変わらせた。
ヴァイオリン、ヴィオラ、
チェロまでが生み出され、
象徴的なヴァイオリンは
TSUNAMIヴァイオリンと
名付けられた。

TSUNAMIヴァイオリンの
表板と裏板の響きをつなぐ
大事な「魂柱」には、
陸前高田の「奇跡の一本松」が
使われている。
大津波を耐え抜いた一本松、
やがて姿こそ絶えたけれど、
その一本松の強靱な精神は
TSUNAMIヴァイオリンの中で
脈々と息づいている。
ヴァイオリンの裏面には
在りし日の一本松が描かれている。

このTSUNAMIヴァイオリンの
生命力に溢れた音を聞いた。
千人のヴァイオリニストに
弾き継がれるべく、
「命をつなぐ小魂の会」が
プロジェクトを立ち上げている。
聴かせてもらったその音色は
71歳を迎えた中澤きみ子さんが
渾身を込めて弾いた響きだった。
力強い哀愁を帯びた音色は
ホールの空気を振るわせ、
聴く者の心も震撼させた。

地震がもたらしたもので
人の心が震撼させられる。
恐怖と悲嘆と苦痛を
歓喜と幸福と安楽に変える。
人類の希望を未来につなぐ
TSUNAMIヴァイオリンである。