「生き急ぐ」

ぼくは、生き急いで

生きてきたのだろうか。

もう明日がないように

いつ死んでもいいと

悔いがないように

生きてきたような気がする。


母から生まれたとき

未熟児で新生児メレナという

病気にかかってしまい、

小さな容器に入れられていて

医者は長くは生きられないと

両親に告げていたそうだ。


だから子供の頃は体も小さく

丈夫なほうではなかった。

朝礼で校長の話が長いと

倒れて保健室に運ばれた。

それがいつしか健康で

普通の体格になった。


中学ではバスケット、

高校ではラグビーをやり、

すっかり体育系の人間に。

大学ではテニスやスキー

再びバスケットを愉しんだ。

社会人になってからはゴルフ。


でも、仕事はいつも何かに

追い詰められているかのように

働いていた気がする。

両親から出生したときのことを

聞かされてきたからだろうか。

「死にそうだったのよ」と。


人生の終盤になって病にかかり

本当に死にそうになった。

明日死ぬかも知れないけれど、

もう「生き急ぐ」ようなことはしない。

なるようになると覚悟できた。

もう、死ぬことなど畏れない。