円周率で世の中を知る

黒か白か、正か誤か

善か悪か、

物事は何でも

割り切れると思っている人がいる。


僕も若い頃は

そう思っていたし、

それが潔癖な生き方だと

そう思っていた。


ところがある日、

円周率を思い出すことがあった。

原口證さんが10万桁まで

空で唱えてみせたときだ。


円周率とは

円の円周の長さの円の直径に対する比率。

円周率π=円周÷直径

それは3.14から果てしなく続く数字となる。


古代ギリシアの頃から

割り切れるまでやろうとした人がいて、

決して割り切れないことを

証明しようとした人も大勢いる。


今や僕たちは円周率は決して割り切れない

数字であることを知識として知っている。

そして僕はこの円周率によって

世の中には割り切れないことがあることを知った。


割り切れないことを良しとすることを学んだ。

白と黒の間にはグレーがあり、

正が誤であり、誤が正になり、

善の中に悪があり、悪の中に善が存在する。


そうしたことを十分にわかり得て

人生を全うしていくことこそ本当なのだと。

人間がひと皮向け、ひと回り大きくなる。

そうしたことなのだと知ったのだった。