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映画 『夜明けまでバス停で』 をHomedoorスタッフで鑑賞———「助けて」と言えないということ

2020年11月16日、東京・幡ヶ谷のバス停でホームレス状態の女性が殺害された事件を覚えていらっしゃいますか?この事件からもうすぐ2年が経とうとしています。

この事件をモチーフとした映画『夜明けまでバス停で』が先日公開され、Homedoor内でも話題になっていました。

あらすじ
北林三知子(板谷由夏)は昼間はアトリエで自作のアクセサリーを売りながら、夜は焼き鳥屋で住み込みのパートとして働いていたが、突然のコロナ禍により仕事と家を同時に失ってしまう。新しい仕事もなく、ファミレスや漫画喫茶も閉まっている。途方に暮れる三知子の目の前には、街灯が照らし暗闇の中にそこだけ明るくポツリと佇むバス停があった・・・。一方、三知子が働いていた焼き鳥屋の店長である寺島千晴(大西礼芳)はコロナ禍で現実と従業員の板挟みになり、マネージャー・大河原聡(三浦貴大)のパワハラ・セクハラにも頭を悩まされていた。これはある日誰にでも起こりうる、日本の社会の危惧すべき現状を描いた物語である———。

出典: 渋谷プロダクション「夜明けまでバス停で」(2022年) パンフレット1頁

こちらの映画を一部スタッフが鑑賞しました。以下、鑑賞したスタッフの感想をご紹介します。

松本浩美(事務局長)
映画はバス停で寝泊りする板谷由夏演じる北林三知子という主人公が、その状況に至るまでを克明に描いている。寮付きの飲食店で働きながら、自作のアクセサリー販売で生計を立てていた。コロナウイルスの流行をきっかけに生活が一転していくというストーリーである。北林三知子は上司の伝票改ざんに目をつむらない真面目な人でありながら、同僚のことを気づかえる人である。飲みに行ける友人やアクセサリーの展示に協力的な知り合いもいた。それでも、生活に窮した際に誰かに「助けて」ということはできなかった。言えばよかったのにと思う人もいるだろうと思う。

10年以上にわたり、ホームレス状態の人と関わる中で、わたしは多くの彼女に似た人を見てきた。極限まで頑張り続ける人が、こんなにも多い世の中に幾度となくかなしみを覚えてきた。夜回りなどでお会いするたび、「早く相談に来てくれたらいいのにな」と何度も思うけれど、何度も何度も喉まで出かかった言葉を飲み込んでいる。

「相談に行く」ということは簡単でない。自分の状況が極めて不安定ななかで、どうしようもない不安を抱えて、信頼できるかどうかわからない場所に行き、自分の身の上を話す。なんてハードルが高いことなんだろう。それでも、こんなに大変なことを乗り越えて「明日を生きよう」とやってきてくれた人たちが、わたしが働く現場には年間数百人といる。これは本当にすごいことだと思う。実際に亡くなった被害者の女性や映画の北林三知子に、どんな声かけやどんな関係性があればよかったのだろうかと考えさせられた。

また主人公と関わり合う登場人物の多くは、生きづらさと隣り合わせだった。パワハラとセクハラに耐えながら自分の地位を守ろうとする人、ジャパゆきさんとして日本にやってきたフィリピン人女性、事情を抱えてホームレス状態になった人たち、親の介護で生活が苦しくなってきたと話す主人公のきょうだいなど。ホームレス問題は社会課題の集積である。だから、どの登場人物も北林三知子になる可能性があった。そのことを改めて考えるきっかけになった。

映画を見たわたしにもこのnoteを読んでいる人の身近にも、社会課題は潜んでいる。目を背けても、飲み込まれてしまう可能性は消えない。だからわたしはホームレス問題に関わり続けているのだと思う。明日を生きようとする人が、あたたかい夜明けを迎えられる社会であってほしいから。

映画などがきっかけになって、誰かの希望や明るい未来が紡ぎ出されることを願っております。

松本のnote全文はこちらから!

宇山夕子(受付担当)
寮付きの仕事は退職すると仕事と家を同時に失うということであり、その様子がよく描かれていたと思う。Homedoorの相談者と重なる部分があり、よりリアルに感じた。「社会的孤立」が社会問題となっているが、「助けて」と言えるか言えないかについて個人の問題とするのではなく、「助けて」と言えるつながりをつくることが大切だと改めて感じた。

相談者の話を聞いていても家族や友人・知人が複数いても頼れる先ではない場合が多い。今この瞬間もどこかで人知れず一人で悩んでいる方がいると思うと、Homedoorがいち早くその「助けてと言える先」になれたらと思っている。

中司年音(広報・ファンドレイジング担当)
ホームレス状態に陥った主人公 北林三知子の「わたし真面目に生きてきたはずです」という言葉が印象的だった。コロナ禍前の北村三知子は、アクセサリー作家の仕事の傍ら、焼き鳥屋で働き、自分の生活が苦しくても母の介護費30万円を振り込んだりと、誠実に生きていた。Homedoorでも、北村三知子のように、なぜホームレス状態に陥らなければならなかったのだろうかと思わずにはいられない相談者の方々にお会いしてきた。

真面目に懸命に生きていても、誰しもホームレス状態に陥る可能性があるこの不安定な社会で、Homedoorは「いざとなればあそこに助けを求めればいい」…そんな風に思ってもらえるような場所でありたいと改めて思った。

映画の中で、北村三知子は決して他人に助けを求めることはしない。バス停で項垂れ、元職場の店長からのメッセージに「元気なんてありません」と一度は返事を書きかけるが、すぐに送信せずに消してしまう…それほどに弱音を吐かない人だった。

北村三知子の姿から、「助けて」と言いやすい社会を作っていく必要性を強く感じた。弱さをオープンにしてもいい、強くなくてもいい———そんな社会づくりの一翼をHomedoorは担っていかなければならないと改めて思った。

わたしたちは、大阪・十三にある第七藝術劇場で鑑賞したのですが、多くの観客の方がいらっしゃいました。他の方はなぜこの映画を鑑賞しようと思ったのか、またどんな感想を持たれたんだろうか・・・と気になりながら帰路につきました。

Homedoorには年間1000名近くの方からのご相談があります。しかし、まだまだ「助けて」と言うことができず、Homedoorが出会えていない方々がいらっしゃるのも事実です。わたしたちは今後も路上生活者やネットカフェなどの深夜営業店舗で過ごされている生活困窮者の方にアウトリーチ活動を行なってまいります。

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